東京崩壊
欧米には、核シェルターコンドミニアム(集合住宅)なんて物がある。
地下15階の分譲式マンションで、70人が5年間過ごせる食料が蓄えられており、日本の建築会社も同様の核シェルター集合住宅を作成して…………
今タカシさんは、一ヶ月のテストモニターとしてここにいるわけ。
タカシさん37歳は、会社との折り合いが悪く退職してしまい、友人にこのバイトを紹介されて、モニター生活をしているのだが暇である。
「一ヶ月って長いな、あと9日もあるじゃない」
友人からこのバイトを紹介された当初は、ゴロゴロしているだけで日給3万は非常に魅力的な話だったのだが。
暇すぎる、ネット環境もあるしTVやゲームもあるが常に監視カメラでモニタリングされていると、オナニーもできない。
シェルター内は、住居者がストレスを感じないように広大な広さの作りになっており、広さは問題ないんだ。
ただね、空が見たい地上の新鮮な空気が吸いたい。牛丼屋に行きたいって、自然な感情だと思うわけ。
20年以上の保存が効くレトルト食品もウマイのだが、ジャンクな食事もいいんだよな。
さてテストモニターのお仕事である、日報をPCで書き上げバイト先に送信したら、定時の電話連絡で軽い状況報告をすませば本日も終了なのだが。
電話が繋がらない? 固定回線の電話が使用不能なのだ、試しにタカシさん個人の携帯で連絡をとるが、通話不能。
固定回線と携帯回線が、同時に通信障害なんてありえないと思う。
地震でもあったのか? 地揺れは感じていないんだがと考えながらTVを見ると、どのチャンネルも砂嵐だ。
ネットでニュースを確認しようと、PCに向きあい確認すると先程まで使用できていたネットも使えない。
「サーバーダウンか?」
何か災害でも起こっているのではと? そんな考えが脳裏をよぎるが、現状では確認しようがない。
◇◆◇
何の進展もないままバイト先との契約もあり、タカシさんはその後3日程シェルター内で悶々と過ごしていたが。
「我慢できん外に出るぞ!」
ついに痺れを切らしてシェルターを出ると、今までタカシさんが知っている街並みとは世界が変わっていた。
いつもと変わらない日常を想像して外に出てみれば、東京は崩壊していた。
あちこちのビルが半壊しており、まともな建物を探す方が難しい。
確かこの辺りは東京都の北西部だったはずだが、砂埃が舞い上がり人の姿もない?
「核戦争でも起こったのか…………?」
今のタカシさんは、選択肢が二つある無事な人をが集まっているコミュニティを探すか、シェルターに戻るかである。
もっとも、無事な人々がいるという前提の話なんだが
もし核爆発なら、爆心地から放射状に建物が崩壊するはずだが街並みを見ると均等に建物が崩壊している。
たった数日で何が起こったのだ?
このまま都心部へと向かわず埼玉方面へと移動が、正しい選択肢にも思えるがシェルターにある食料や物資が残っているため、この街を拠点に活動するのが安全なのだろう。
シェルターから持ち出した、個人の携帯を見ると電源が入らなくなっていた。
核かは確証は持てないが、EMP(電磁パルス攻撃)に準ずる何かが起きて、電化製品が使用できない可能性が高いように思える。
タカシさんは路肩に乗り捨ててある自家用車のドアを開けて、エンジンを回してみるが、エンジンがスタートしない。
仮にEMP(電磁パルス攻撃)だったら、バッテリーは死に配線も焼けてプラグ点火しないので、エンジンは掛からない。
世紀末なアニメのように、モヒカンでバイクは無理なのが事実だ。
「まずは、人に会って事情が聴きたいよな」
何も情報が無いのは不安すぎる、都心部を散策する前にまずは近所で生き残りを探そう…………
結論から言えば、何人かの人には会えた、ただ死んでいる人にだが。
どの死体も損壊が激しく気が滅入る、少し気になったのがどの死体にも、喰いつかれたような傷跡が多いように感じる。
野犬の類ではなく、大型獣にでも喰いつかれたように見えるが、動物園から猛獣でも逃げたとしたら物騒な話である。
10分程住宅地を巡り、生存者がいないのを確認して、近隣の学校なら避難所指定である可能性が高いので、向かおうとしたら。
数人の人影が自転車に乗り、こちらに向かって来るのが見える。
タカシさんは、人に会えた嬉しさのあまり大声で叫ぶ!
「おーーい! ここだ、タカシさんはココだーー!」
人影は、どんどんと大きくなり、タカシさんの目の前に自転車に乗った集団が止まった。
「おっおい! 何が………… 何があったんだよ」
「食料と水をよこせ! 殺すぞ!!」
タカシさんの質問を無視して、自転車の集団は食料と水を要求している。
マジで世紀末かよ…………