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悪魔の物語

「今日もきたよー。あれ、今日は誰かいるの?」


 ステラは今日もフォルフルゴートの所に来ていた。だが、珍しいことに先客が居たようだ。金髪で長身で細身の男性。それだけならば、気にすることは無いのだが、その男には尻尾と翼と角があり、まさに悪魔という感じであった。


「おや、可愛らしいレディですね。どうですか、お嬢さん。ここでティーパーティでも如何かな?」


「黙れ、ギレーア」


 フォルフルゴートにギレーアと呼ばれた男はやれやれとでも言うように肩を竦めた。邪悪の管理者の従者、管理者の存在を分離して誕生した存在であり、悪魔と呼ばれる存在だ。簡単に言えば、管理者と共に転生し、その補佐をする存在と言う訳だ。秩序の従者は精霊と呼ばれ、神聖の従者は天使と呼ばれる。混沌には真なる意味での従者は居ない。が、この辺の説明はややこしい事になってしまう。


「私はステラだよ! おにーちゃんよろしくね!」


 ギレーアの姿にも全く動じないステラ。確かに、悪魔の尻尾と、翼と、角を無視すれば。普通の人間にしか見えない。フォルフルゴートの姿に動じないのだから、この程度でどうにかなる精神でもないようだ。


「おーう。その純真無垢な心に私のハートは撃ち抜かれました。お嬢さん、良ければ帝国に見学でも如何かな? 私がエスコート致しましょう」


 大げさな仕草をした後に、ステラを誘うギレーア。そして、それを白い目で見るフォルフルゴート。今〈要塞の帝国〉に関して良くない動きがあるのに、行かせるわけないだろう。竜の1体、ギアが帝国の中でかなり上の立場になっていたようだが、フォルフルゴートは他の竜の視界を見ることが出来る為。帝国が武装を進めている事を知っている。


「ギレーア。帝国で武器の開発が急速に進められているらしいが、どうなんだ」


 フォルフルゴートは言外に、そんなところにステラを連れて行かせる訳がないだろというのと、今度は何を企んでいるんだという事を含ませている。一瞬困った表情をするギレーアだが、すぐに取り繕う。


「流石に貴方と言えども、情報を流す訳にいきませんね。ですが、もし、帝国が気になるのでしたら、私がエスコートしますよ。しっかりとプランを立てますので、心配は無用です」


「要らん! 何故僕がお前にエスコートされなければならない!」


 明確な拒絶を受けたギレーアは崩れ落ちるが、すぐに立ち上がる。フォルフルゴートしてはこんな奴に案内してもらうならば、自分で行動した方が良いと思っている。悪いやつでは無いのだが、ずっと一緒にいるとなんかウザいのだ。


「それは私が美しいものを愛しているからだ! フォルフルゴート、貴方はとても美しい。もちろん、お嬢さんのような可愛らしさも愛していますよ」


 そして、ステラにウインクするギレーア。ウインクされても、きょとんとするだけだが、なんか褒められたのだと理解すると、笑顔になる。


「おにーちゃんはかっこいいね!」


「ステラ。こいつは顔だけだ、やめておけ」


 フォルフルゴートの容赦のない攻撃によって、ギレーアは地面に崩れ落ちた。だが、それでも立ち上がる。意外とメンタルは強靭なようだ。前髪を払い、ポーズを決める。


「私は純愛主義だ! 確かに美しいものや可愛らしいものを愛でたい気持ちはあるが。私の心を埋めるただ一人の存在を探しているのだ!」


「黙れ」


 簡潔な一撃がギレーアを撃ち抜く。まるでどこぞの演技のように、ゆっくりと崩れ落ちていった。それをフォルフルゴートは白い目で見つめ、ステラは面白いものを見ているようにじーっと見つめている。


「おーう。私のハートはボロボロですよー。まぁ、しつこい男は嫌われると相場が決まってますので、この辺で帰りますね。アデュー」


 立ち上がったギレーアはなにも無かったかのように、マントを翻し、帝国の方へのんびりと帰って行った。ようやく面倒なのが帰ったなと、フォルフルゴートはため息を吐く。最近ため息吐いてばっかりだなと思いながら。


「ギレーアおにーちゃんと、フォル君は仲良しなんだね!」


 ステラが壮大な勘違いをしている。確かにギレーアは悪いやつではないし、フォルフルゴートも完全に嫌っている訳では無い。ただ、ウザいのだ。正直言って、あまり仲良くしたくないと考えている。弁解しようか迷ったが、意味は無さそうだなと考え、話題を逸らすことにした。


「ステラ、昨日の雨で花でも咲いてるかもしれん。探してみたらどうだ?」


「それじゃー、フォル君にお花の冠作るね!」


「僕に作っても仕方ないだろう」


「その方が可愛いもん」


 そんな適当な話をしながら。もうギレーア来るなと考えるフォルフルゴートであった。しかし、それ以降、時々やってきては頭を痛くさせるのであった。

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