秩序の管理者
「汝等、それには、理解しよう。だが、要らぬ。我ら、世界を整えるもの。この件、既に調査は済んでいる。故に、必要ない」
メビウスは〈沈黙の森〉にてエンシェントにこれまでの説明をしたが、あまり協力する意思は無さそうだった。どころか、明確に拒絶される始末である。これでは何も話が進まない。因みに、エンシェントの本体は大樹であるが、人の姿を造り出して、それで会話したりできる。
「ククッ、本当に、そう明言できるのか?」
「……。汝、何を言いたい」
だが、メビウスは態度を全く崩さない。寧ろ想定内だとでも言うような態度だ。対するエンシェントも、表情、態度は崩さないものの、気にはなるようだ。
「確かに、貴様は本質を掴んだのだろう。だが、実体を見る事が出来ても、その対処方までは、見つかってはいないだろう?」
「……。汝、何か、知っているのか」
殺気立つエンシェント。普通の人であれば、圧迫感を与えるそれを受けても、メビウスは微動だにしない。それどころか、ニヤリと笑みを浮かべている。
「ククッ、貴様は本質さえ、掴むことが出来れば、対策等と、そこまで時間がかからないと思っているだろうが、その時間があると言えるのか?」
「……。何だと」
「私は、時間が無いと言っているんだ。次の世界でも同じことが起こる可能性が高いが、それは今回の世界のように、猶予があると思うのか? この世界へのダメージについては、貴様が一番理解しているのだろう?」
この世界の本質を知る管理者からしてみれば、今回の事は、どう考えても不自然。つまり、この世界がもはや正常でない事を突き付けている。
「……。何を知っている」
「少なくとも、この力を利用する方法は、推定している。上手くやれば、時間稼ぎくらいは出来るだろう。貴様は、その可能性さえも、切り捨てるか? 全てが可能性でしか無いとはいえ、最善を選ばないのは、秩序の管理者として、怠慢だろう? ククッ、よく考える事だ」
沈黙が続く、実際には、短い時間ではあったのだが、それでも、長い、長い沈黙が、その場を支配し、そして
「……。解決するまでの、期間に限り、汝らに、協力しよう」
4体の管理者が、協力する事になった。この悲劇は、管理者が団結する。そのきっかけになったのだ。