混沌の管理者
「クソが! アタイの邪魔しやがって! 手段を選んでる場合じゃねぇのが解らねぇのかよ! アタイの計画を止めた挙句、このザマじゃ、とんだ道化だよなぁ!」
〈無知の国〉の地下に作っていた、沢山の基地の内の一つで、レアル・グリードは、荒れていた。沢山のモニターが外の光景を映しているが、その全てに人の姿が無い。そして、そんな基地の中にレアルと同じ姿をした存在が入り込んできた。
「レアルさん! 外の様子がおかしいよ!」
「試作機! うるさい! そんなのとっくに解ってんだよ!」
「えぇ!? なんで私怒鳴られないといけないの!?」
愕然とした表情になる、レアルと同じ姿の存在。試作機オリジンスフィア。レアルが一番最初に造り出した従者であり、なんの権限も得る事が出来なかった失敗作。その失敗をふまえ、ケミカルチェンジャー、ディレイプレッシャー、マシンデストロイアと、造られたために、全くの無駄だった訳では無いのだが。
「はぁ、どうしたものかな。この謎のエネルギーも解析出来ないなんて、流石のアタイも自信を無くすよ。アタイに解析できないものなんて、ある筈が無かったのに……。そういえば、人間が得た特殊な力も解析できなかったし、似たようなものなのか? なんにしても、今更どうにか出来ないし、サンプルに何か残ってたら良かったんだけど、人間は全滅したしなー」
「えーと、レアルさん? 人間が全滅したの? ほんとに?」
レアルは今更何を言ってるんだこいつとでも言いたげに、オリジンスフィアを睨みつける。何しろ複数の身体を持つ存在、その辺の情報収集も抜かりはない。なのに、どうしてそんなに疑問を持つのだろうか。
「なんだよ、人間の生きのこりでも居たのか?」
「その、〈救済の島〉に、人が居たのを、見たようなー?」
それを聞いて考え込むレアル。確かに、監視範囲に〈救済の島〉は入っていない。そして、そこを仕切っているメビウスは、この状況になっても外に出てこない。人が居たとか、居なかったとか、それ以前にとても怪しいと言える。
「もしかして、メビウスが黒幕じゃないのか?」
「えぇー、メビウスさんはそんなことしないと思うけど、でも、あの人、なんか怪しいし、うーん」
オリジンスフィアも悩みこんでしまう。何も情報が無いからこそ、寧ろ怪しいというものだ。レアルは考えながらモニターを見る、映し出された光景には、世界の崩壊が始まろうとしていた。
「考え込んでても仕方ないし、乗り込むか」
レアルは、それだけ言って、外に飛び出していった。そして、ポツンとオリジンスフィアだけがその場に残された。
「あ、えーと、レアルさん、気を付けて?」