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犠牲の物語

「邪魔をするのでしたら、仕方ないですね。あまり気乗りはしませんが、動きを封じて……!?」


 ギレーアはケミカルチェンジャーを無力化するべく、動こうとする。ステラを抱えている為、片腕しか使えないが、それでも、十分だ。それほどに、高い戦闘力をもっている。そうなのだが、まるで身体が麻痺したかのように動かなくなっている。


「相変わらず単純だねぇ。悪魔と正面から戦っても勝てるわけが無いだろう? だからさぁ、予め痺れ薬を散布しといたんだよねぇ!」


 ケミカルチェンジャーは緑色の液体が入った試験管を取り出し、地面に叩き付ける。割れると、緑色の霧となって広がっていく。


「メンドクセェコト、スンジャネェヨ!」


 グネデアは黒棒を出願させると、伸ばしてケミカルチェンジャーへと攻撃を仕掛ける。スレスレで回避するが、伸ばした棒でそのまま薙ぎ払い、一撃を加える。


「手加減しておくれよぉー。私は戦闘が苦手なんだ」


「ダリィ。するわけねぇダロウガ。テメェは脱力しとけ」


 ケミカルチェンジャーはどうにか棒を腕で防いだようで、ダメージは軽減させているが、その腕に黒い靄のようなものがまとわりついていく。グネデアの堕落の靄だ。この靄は攻撃を加えた箇所にまとわりつき、その力を奪い、脱力させてしまう。


「意味が無いと理解しておくれよぉー。私の撒いた薬剤はねぇ、影響を無効化するんだよねぇ!」


 だが、その靄はケミカルチェンジャーのばらまいた薬剤によって打ち消され消えてしまう。ギレーアは痺れ薬によって身体が麻痺し、座り込んでしまっている。そうなると、相手をするのはグネデアしか居ない。


「グネデアさーん。ちょっと私は動けなさそうなんで、後はお願いします」


「チッ。メンドクセェナァ!」


 こんな状態でありながら、気楽なギレーアに苛立つグネデア。近付けばどんな薬を撒かれるかわからないが、幸いにも棒を伸ばして遠距離から攻撃する事が出来る。そして、ケミカルチェンジャーはそこまで戦い慣れしているようには見えない。


「まぁ、私は戦闘用に創られていないが。だけど、すこーし不注意が過ぎるんだと思うんだがねぇ?」


「あぁ? 何いってやが……」


「ステラは、返してもらう!」


 地面の崩落から這い上がって来たフォルフルゴートが、グネデアに腕を振るう。咄嗟に気付いて棒で直撃を防ぐが、それでもその衝撃をころしきる事は出来ない。


「グッ!」


 その力が拮抗したのは一瞬。グネデアの表情が苦痛に歪み、そのまま弾き飛ばされる。そして、一目散にフォルフルゴートは、ステラとギレーアの方に向かっていく。


「おーう……。マジですか」


「邪魔をするな。消えろ!」


 痺れ薬で動けないギレーアは、フォルフルゴートの拒絶の言葉に抵抗することも出来ず、そのまま、まるで初めから誰も居なかったかのように、その姿を消滅させることとなった。存在そのものさえも消し去る、究極ともいえる力〈拒絶〉によって。だが、そんな光景を見ても、ケミカルチェンジャーは動じる事無く、寧ろ笑みを深めている。


「流石、フォルフルゴートだ。私としては、非常に興味深くもあるのだがねぇ、今はそれ所では無いんだよねぇ?」


「……。ステラ、起きろ」


 ステラへのギレーアの影響力はその一言で打ち消され、まるで今まで眠っていたかのように眼を覚ます。そして、何がなんだかわからないとでも言いたげな表情をする。思考の封じ込めを受けていた間の記憶は無いのだし、現に今起きた状態なのだから仕方が無い。


「いったい、何が起きたの……」


「アッハッハ! それを教える利点が無いと思うんだがねぇ?」


 問いに答えるのは、ケミカルチェンジャー。その声を聞いた瞬間、ステラは一気に覚醒したかのように飛び起き、睨みつけるように警戒しながら、少しずつ後ずさる。


「……。ステラ、何も問題ない」


「何が問題無いのかねぇ? まぁ、いいさ。さぁ! お前等の絶望を見せておくれよ! ここから始まるのは世紀の大実験! この世界を犠牲にして、次の世界を完成させるんだ! なぁ? レアル・グリード!」


 その瞬間、グネデアの空けた大穴から、不敵に笑みを浮かべるレアル・グリードが、全身をフードとコートで覆い隠した謎の人物を抱えて、何故か飛び出てきた、背中に何かジェット噴射でもする装置でもくっつけて、空を飛んでいる。フォルフルゴートもステラも、訳が解らない。2人揃って唖然とするしかなかった。


「アタイの秘密基地に大穴空けてくれちゃって、困るんだけど。反応機、ちゃんと仕事してくれない? それと、なにナチュラルに呼び捨てにしてくれてるの? 流石のアタイもちょっとだけ困惑なんだけど」


「私としては最低限の事はしたと思うのだがねぇ? それに、戦闘力が殆ど無い私に出来た事があったかねぇ? まぁ、次は善処しようとはしてみるよ。 後さぁ、私がレアル様とか言っちゃったら、なんか気もち悪いと思うんだがねぇ?」


「確かに、マジキモイ」


 そんな二人を全く気にせず、雑談をしている混沌の管理者とその従者。マイペースなのはいつもの事なのだが、それを容認できるような状況でもないし、フォルフルゴートがそれを許すわけも無い。


「混沌の管理者、レアル・グリード……。忠告はしたはずだ。何を企もうと、意味は無い」


「アハハハ! これを見ても同じ事が言えるかい! フォルフルゴート!」


 レアルは、自身が抱きかかえていた人物を地面に降ろし、コートを剥ぎ取った。その人物はステラととても似ていて、明らかに違うのは、身体の至る所にレンズのようなものが埋め込まれていた。


「私は、ホロスコープ。沢山の、望みを、見つけます」

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