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望みの結末

 〈無知の国〉にはいくつかの集落がある。そのうちの1つ、特殊な集落があった。他と同じように、遊牧によって生活をしているが、特別な目を持った人によって導かれているという。そして、今の目の役割は、シルトという名の女性が行っている。


「私は、望むものが見えるだけで、それ以上でも以下でも無いのですけどね」


 そう呟くシルトであったが、彼女が集落の事を思えば、最も都合の良い場所が見える。歴代の目の役割を持った人の中でも、非常に役に立つ力であった。逆に、ステラは自分への害意を見れるだけで、目の役割としては頼りないと言わざるを得ない。


「しかし、あまり話し合いというのは得意になれません……。疲れました」


 シルトは集落の小屋の中で休憩している。先ほどまで集落で大規模な話し合いがあり、その進行役のような事をやっていたようだ。その為非常に疲れている。しかし、苦手とはいえ、集落を導く目の役割の人が話し合いに参加しない何て事が許される訳が無い。


「なぁ、アンタ。確かシルトとか言う目の力を持った人間だよな」


 唐突に声をかけられた。シルトは声の方を向くと、一人の女性が立っていた。先ほどまで誰も居ない筈ではあったが、とりあえず冷静に対応しようと考える。集落はそんなに広くない、何かあっても大声を出せば誰かに届くはず。


「はい、私はシルトと申します。貴方はどなたでしょうか」


「そうだな。アタイはレアルだ。よろしく!」


 シルトは警戒を解かず、問題の回避を望み見ようとするが、何も見えない。しかし、慌てず現状を判断する。このレアルという人物が何をするかもわからない、問題の回避を望んだが、そもそも現状目に見えるような問題は無い。つまり、情報が足りず見えない。


「レアル様ですね。何か御用ですか?」


 シルトに必要な事は、このレアルという人物が問題となるか、そして、その問題とは何なのかを知らなくてはならない。どうにかして聞き出さなくてはならないのだ。


「うーん。そうだねぇ、アンタ、なんか望みはあるかい?」


「いえ、私には望むものを見る眼があるので大丈夫です」


 シルトは賭けに出た。望みを見る眼を話に出して、その反応を見ようとしたのだ。単なる悪党であれば、それを利用しようと行動を起こす筈。冷や汗をかきながらも、レアルを睨みつける。しかし、何か動きを見せる様子はない。


「へー、そりゃ面白い。んで、なんか望みはあるかい?」


「えぇ、どうしてそんなに私の望みを聞くのですか?」


 レアルは眼の力なんてどうでも良いとばかりに、尚も望みを聞く。シルトは想定外の反応によって、少々動揺したが、冷静さを保ち疑問を投げかける。唐突に現れて、望みを聞いてくるなんて怪しい以外の何でもない。


「だって、アンタ。望みを見る眼があるのに、有効活用してないだろ? もっと自分の為に使ったらどうなんだよ。もしかしたら、欲が無いのかなとか思ったからさー」


 レアルはどうやら、シルトの望みを見る眼の事は知っていたようだ。とはいえ、そんな動機で訪ねて来た人は今まで居ない。何かを企んでいるのか、もしくはただの変わり者なのか。現状では判断のしようがないが、下手な事は言わない方が良さそうだと考える。


「私は、皆が幸せならそれでいいですよ」


 別にシルトに欲が無い訳では無い。だが、とりあえず適当にレアルをあしらうつもりのようだ。欲が無いと思い退散するならそれで良いし、無理やり何かを強要するなら大声を出して助けを呼べば良い。そう考えていた。


「へぇー、アンタの望みはそれで良いのかい?」


「えぇ、私はそれでいいですよ」


 シルトは、レアルが興味を失って去っていくことを願うが、どうやらまだ興味は薄れていないようだ。いったい何を考えているのか、寧ろ興味深々で質問を重ねてくる。


「幸せとか言うけど、具体的にどうするんだ?」


「私は望むものが見えるので、その人の幸せを望めば見えますよ」


 シルトは話し合いで疲れていたのもあり、だんだんと返答が雑になっている。警戒するのにも疲弊し始め、早くこのよくわからない人帰ってくれないかなと、疲れてぼーっとしてきた頭で思考する。


「ふーん。アンタの望みは、皆の幸せを見る事か」


「まぁ、間違ってはいないですね」


 レアルがニヤリと笑う。そして、右手を上に上げると。シルトは何者かに後ろから拘束されてしまう。慌てて助けを呼ぼうとするが、何故か声が出ない。


「アタイは望みを必ず叶えてやるよ。その、皆の幸せを見るって望みをさ! さて、サイレント。光学迷彩を間違いなく起動しておけよ。フォルの奴にばれたら厄介だからな」

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