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繁栄の物語

「大丈夫か。ステラ」


「うん……。大丈夫」


 レアルが去り、意識を取り戻したステラ、大丈夫とは言うが、顔色はかなり悪い。少し震えているようにも見えるし、強がっているだけなのは明らかだ。今までこのような態度を見せたことは無いので、フォルフルゴートは疑問に思う。


「どうしたんだ。レアルに何かされたか?」


「違うけど。私見えたの。恐ろしいものを見たの。悪い人は、怖く見えてたけど、それよりも恐ろしかったの」


 フォルフルゴートは姉であるシルトに、望むものを見る力があるという事を思い出す。ステラにはそれに準じた力。いや、反応を見るにそれとは逆の力を持っている可能性があると考えた。望まないものを見る力、もしくは自身への害意を見るのか。少なくとも、レアルは良いものを持ってこないだろう。


「ギヒャヒャ! あーあー。レアルの奴に先越されたなぁー。これは参っちまったなぁ!」


 唐突に聞こえた大声、まるでわざと聞かせたかったかのようだが、フォルフルゴートとステラはそちらの方に目を向ける。フード付きローブに全身を隠し、三日月のように笑みを受かベる口元だけが見える。そんな怪しい人物が歩いてきていた。


「グリアか、何の用だ」


「ギヒャヒャ! なんでもねぇよ! ただ、レアルの方が一枚上手だっただけって訳だ」


 繁栄の精霊グリア。他の精霊が明確な肉体を持たず、依存しないのに比べ。こいつは明確に肉体を持っている。それは依存となり、肉体の破壊が死となる為、精霊の中で最弱と言われている。ただ、その胡散臭い雰囲気が、無用に警戒させる気がする。


「えぇと、グリア?」


 ステラがなんか迷いながら、グリアに問いかける。どうやら、レアルのように怖いものは無いが、風貌が怪しすぎる為に躊躇ったらしい。フォルフルゴートにはそんなに躊躇っている様子は無かったが、それは人型とはかけ離れた姿だっただからだろうか。寧ろ、人型というのは警戒心を抱かせるのかもしれない。


「そうだ、グリアだ。お前には特別な目があるみたいだな。フロウに反応しなかったところを見ると、単純に脅威を見てるわけじゃ無さそうだ。多分だけどな、お前に何か害を与えようとしている相手を怖く見えるんだろ。レアルの望みを叶えるとか、害す為の理由を掘り出そうとする時の常用手段だからなぁ!」


 フロウには現状で害そうという意思は無かった。それは異常との関連性がまだ解らないからだ。それが証明させれば、明確に害そうとするだろうが、証明できていないので、言葉にしたとしても、意識はしていない。ただ、そういう立場だという事を言いたいだけなのだろう。しかし、レアルは人の望みを歪曲させて解釈し、人を害する。その時に、決まって望みを聞き出そうとしていた。それを考えると、何らかの方法でステラを害そうとしていた可能性は高い。


「……フロウが来ていた時点で既に監視していたのか?」


「さぁ? でもさ、今それは大した問題じゃないだろ?」


 フロウが来ていた事はともかく、それに対するステラの反応を知るには、監視していた以外に方法が無いだろう。そんなことを流す必要も、意味も無いのだから。何にしても、グリアはこのことについて語るつもりは無いようだ。


「はぁ、まぁいい。話を戻すと、その可能性は高いだろう。レアルは人が持っていない筈の力について研究していると言っていた。それを考えると、ステラを害する理由もある。好きに使えるサンプルは奴が欲しがりそうだ」


 あの性格のレアルが無理やりな行動しない理由は簡単。出来ないんだ。レアルは人間の望みを叶えるという理由が無い限り、人間の望まない行動をすることが出来ない。そして、実験のモルモットになりたいなんて酔狂な人間は居ないだろう。だからこそ、望みを問うという行動に出る。


「まぁ、正直この辺の話はどうでも良いぜ。現状の確認以上の意味は無いからな。ただ、問題とするのはレアルが何か隠してるってことだ。いや、隠してたって事なんだよな」


「確かに、隠してはいたな」


「そうだ。隠してるじゃなくて、隠してた事になったのが、俺には都合が悪いんだよな。参ったぜ」


 グリアは頭を抱える仕草をするが、フォルフルゴートとしては知った事ではない。ステラが反応しないという事は、今までの予測を考えるには害をもたらそうとは考えていない。ただ、それはステラに対してであって、明らかにその対象は別の者だ。つまりは、悪い事を考えていないという証明にはならないし、何かを利用としているのは、口ぶりから明らかだ。


「そうか。帰れ」


 結果として。フォルフルゴートはグリアを突き放す。当たり前の話であるが、利用としている相手、しかもその目的が謎とあっては、あまり関わりたくないというものだ。


「わかったよ。最後に、レアルの奴はこの草原に妨害用の機械を各地に設置しているらしいが、この草原には明確に何にも無いぜ。ただの草原だ」


「うん? そうだろうな」


「ギヒャヒャ! そうじゃねぇんだよなぁー。本来なら、隠すものが無いのに隠す事に疑問を持つべきだったんだ。その辺はレアルの勝ちって事で、今回は引くとするぜ」


 〈沈黙の森〉の方へ、グリアは去っていった。おそらくレアルの研究について警戒しているのだろう。そして、この反応だからこそ妨害していると言える。どちらが正しいか解らないフォルフルゴートには、経過を見守る事しか出来ない。


「ねぇ、フォル君。あの人、怖くなかったけど、変だったね」


「ステラ。あのような変な存在を気にしてはいけない。意味が無いからな」


「うん。だけど、何が言いたかったのかな?」


「気にするな」

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