09
そういったことをつらつらと話してみたら。
「わたしはちょっと違うと思うなー」
相変わらず牛があくびでもするような口調で、仁奈さんはそういった。
即売会当日、お姉ぇのいっていた強者や神の話は伊達じゃなかった。
何しろまだ開場前の設営段階からみんな殺気立っていて、ただでさえ蒸し暑いのによけいに息苦しくて、なんども外へ出ては生温い空気を吸って気を落ち着かせなくちゃいけないくらいに、会場は朝から異様な空気で充ち満ちていた。そうこうしているうちに一般参加の強者たちが、こういったら申しわけないけど引くほど集まってきて、長蛇の列を作って──女の子もけっこういたけど、でも事前に聞いていた通りやっぱり男のほうが多くて。
もうこの際だから吐いてしまうけど。
それこそ本当に吐きたくなるくらいに気持ち悪かった。
でもそれも開場から一時間もすればみんな壁や会場の外へと集まって、強者同士話し合ったり買ったばかりの漫画を読んだりして、私たちのサークルを覗きに来る人もほとんどいなくなってしまった。
その頃合を見計らってか、お姉ぇはあいさつ回りに行くといって出かけていき、ヒマを持てあました私は仁奈さんと世間話をしていた。
初めは高校や大学の話をしていたのに、いつの間にか話題は私の近況になって、気づけばそんなことまですっかり話してしまっていた。
「違うって、どう違うんですか?」
「んー、どうって……どうなんだろう?」
粉でも振りまくようにふわふわの長い髪を揺らしながら、仁奈さんが小首をかしげる。しばらくそのままでいた後で、ぽつりとこう続けた。
「久美ちゃんは関係ないんじゃないかなー」
私のほうに顔を戻してもう一度いう。
「関係ない、と思うよー」
「そう、ですかね」