08
極めつけはあの日屋上へ行く時、その早紀本人がわけ知り顔で私たちを見送ったことだった。
いってらっしゃーい、なんて手を振って。
桃花も桃花で、いってきまーす、なんて楽しげに手を振り返して。
そのやりとりを見た瞬間、妙に心がざわついた。
あの日私の機嫌が悪かったのは、つまりそういうことで。
私なりになんとか我慢していたのだけど、その時は生理だったこともあってイライラしてて。でも、それを桃花にぶつけるは違うと思ったし、したくなかったし、膝の上に寝転んだらどうでもよくなったから、そこでもやっぱり気持ちが優先して、もういいかなってそう思ってたんだけど。
当の本人には気づかれてしまっていたみたいで。
なんだかよくわからない感情がぐるぐる渦を巻いた。
気を抜くと呑み込まれてしまいそうなくらいに、それは大きくて、激しくて。
でも、なんでそんなに?
って考えた結果、結論として出てきたのがお姉ぇの存在だった。
私だけのものがほしいっていう、アレ。
精神科医がなんていうかはわかんないけど、きっと潜在的にお姉ぇに対してコンプレックスみたいなものを持っているんだと思う。
桃花への独占欲はその表れで。
だから、それほど深い意味はない──と思う。
浅い意味があるかはわかんないけど。