05
「はあ? 勝手に決めないでよ」
といってはみたものの、実際ヒマだった。
お姉ぇのいうイベントとは同人誌の即売会ことで、前に一度だけ私もつき添いで参加したことがあったのだけど、あまりの人の多さに酔って以来、もう絶対に行かないと心に決めていた。
そういえば、つい前にも同じような話をした気がするけど。
そんなに何回も開催されるもんなの?
「今度のはマジなやつだから」
「マジって、なんかちょっと怖いんだけど。ってか、遊びでもなんでもないじゃん」
「当たり前でしょ。オンリーだもん、オンリー」
訊きもしないのにお姉ぇが勝手に話した内容をまとめると、今回開催される即売会はお姉ぇが作っている漫画のジャンルのみのもので、それだけに一般参加者は筋金入りの強者な上、サークル参加者もみんな神レベルだから気が抜けないのだとかなんとか。
強者だの神だの、なんのことかさっぱりわからなかったけど、早い話がもともと三人でサークル参加する予定でいたところ、ひとりが直前になって予定が合わなくなったから、その抜けた穴を私が埋めろというわけだった。
ってか、漫画描いてたんだ?
「ただ座ってるだけでいいからさ」
「でもいろいろ対応しないといけないんでしょ? イヤだ。めんどくさい」
「仁奈、おかし作ってくるって」
「じゃあお土産にそれちょうだい」
「んー、どうしても来ない?」
「行かない」
「そっか。じゃあ桃花ちゃんに頼もうかな」
身体を浮かしかけたお姉ぇの手を、とっさに握る。
「ちょっと待って。なんで連絡先知ってんの?」
「この前教えてもらっちゃった」
「今すぐ消して」
「なんでよ。いーじゃない」
「なんでも」
「えー、どうしよっかなー」
目をそらして、手が痛いなーとわざとらしくいう。しぶしぶ手を離すと、お姉ぇは勝ち誇ったような顔を私に向けた。