04
本人の希望もあって、これまでなんどか桃花は私の家に遊びに来ていた。
でもそのたびにお姉ぇは桃花に話しかけていて、なんだかそれがちょっと気に食わない──というか、すごくイヤで。
だからここ最近は私からは誘わなかったし、桃花が行きたいといってもなんだかんだといって断っていたのだけど。
「じゃあ今度三人で遊びに行こっか」
「は? なんでよ」
思わず睨んでしまう。
でもお姉ぇは涼しい顔で、斜向かいのソファに腰かけた。下着からすらりと伸びた足は、悔しいけどすごくきれいだった。
「いいじゃない。ダメ?」
「ダメっていうか」
口ごもった私に、お姉ぇは釣り気味の目を細めてくすくす笑った。
「安心して。半分は冗談だから」
「残りは本気なわけ?」
「まあね。でも三人目は桃花ちゃんじゃなくて、仁奈なんだけど」
「仁奈さん?」
仁奈さんはお姉ぇの中学からの友達で、ふたりとも高校はもちろん、大学も同じところに通っていた。学部だか学科だかは違うらしいけど、詳しいことはよく知らないし、あまり興味もない。それはでも、大学生活に関してってことだけで、仁奈さんに含むところはひとつもなかった。
かわいらしい人だし、時々持ってくる手作りのお菓子もおいしいし。
それに、すごくいい人だから。
でも、なんで仁奈さんと?
「今度またイベントあってさ」
「まさかとは思うけど」
そのひと言ですぐにピンときて、私はお姉ぇの言葉を遮った。
「手伝えってわけじゃないよね?」
「……まあ、平たくいえばそんな感じ」
「立体的にいっても同じでしょ。パスパス。仁奈さんによろしくいっといて」
「まあまあ瑠美ちゃん、そんなこといわずにさ」
お姉ぇはそこで急に優しい声になって、手すり部分に身体を預けるようにしながら私に顔を近づけてきた。短い髪から漂うシャンプーの匂いが、鼻先をしっとりなでる。