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その思いに駆られて桃花に視線を移すと。
髪に埋もれた小さな顔が、すっと表に出て。
二重瞼の大きな瞳が私を捉えた。
でもその視線はどこか不安げで。
我慢するように、迷ったように。
桃花は少しだけ、下唇を噛んで。
その瞬間、私は直感した。
途端に嬉しさが込み上げてくる。
気を抜くと頬が緩んでしまいそうだけど、もう手遅れかもしれない。
まあそれならそれで隠してしまえばいいだけのこと。
そんないいわけ、というか口実を自分にいい聞かせながら、私は座ったままそっと桃花の脚に寄りかかった。
額を膝に当てるように、そっと。
一瞬跳ねるように脚が動いたけど、でも拒むことなく桃花の両膝は私の頭を受け入れてくれて。
やがて小さくて柔らかいものが私の後頭部を包み込んだ。
それはなんども髪の上を滑っては包み込んで、包み込んでは滑ってをくり返した。
まるで大事なものでも扱うかのように。
「本当はね、ちょっとわかってたんだ」
雨音の間を縫って、桃花の声が降ってくる。
「瑠美が嫉妬してること。ごめんね。でも、なんかすごくかわいくて」
私は何も答えなかった。
代わりに、ぐっと頭を押しつける。
くすぐったい、と桃花がくすくす笑う。
「ねえ、いつもみたいにしてよ。こんなんじゃなくてさ」
甘えるように指が髪に絡んできたけど、私はそのままでいた。
瑠美、瑠美、と桃花がなんども私を呼ぶ。
直接心に触れるような優しい声に、私は少しだけ頭をもたげて。
ぎゅっと両脚を抱きしめた。




