03
人見知りというわけじゃないけど。
人づき合いは得意なほうじゃなかったから。
でも気づいたら、体育の授業中は桃花と一緒にいることが当たり前になっていて──桃花も私と同じで人づき合いが得意なほうじゃない雰囲気だったから、たぶん波長が合ったんだと思う。
それから、段々と話すようになって。
もっと話したいって思うようになって。
初めて休み時間に逢いに行った時はさすがに緊張したけど、でも桃花は、私の気のせいじゃなければ嬉しそうに迎えてくれて。
それが、なんだか心地よくて。
初めはそんな感じだったのに。
最近はなんだかちょっと心穏やかになれなくなっていた。
というも、桃花はここのところ──。
「そろそろ戻ろっか。瑠美、次移動教室でしょ?」
そんな桃花の声が耳に届いたそのすぐ後で、予鈴が遠くで鳴った。ふっと湿った風が吹き抜けて、私の思考もどこかへ飛ばされてしまった。
「ほら、行こう? 遅れちゃうよ?」
そっと私の頭に触れて、諭すようにいう。
首を戻すと、二重瞼の大きな瞳と視線が重なった。
ここでイヤだってわがままいったらどうなるかな。
なんて。
そんなことを一瞬だけ考えてから、私はしぶしぶ桃花の膝の上から頭を起こした。
それまで香っていた桃花の匂いが薄らいで、なんだか夢から覚めたような気分だった。
──その夜こと。
「最近、桃花ちゃんとはどうなの?」
リビングのソファで寝転んでいたら、お風呂から上がってきたお姉ぇが声をかけてきた。
「どうって別に普通だけど」
「また遊びに誘いなさいよ」
「誘ってるよ。前にも駅で遊んだし」
「そうじゃなくて、家にってこと」
なんでと訊くと、あたしが逢いたいからと返された。
「意味わかんないし」