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「そういえば瑠美の部屋に来るの、ひさしぶりかも」
「そう、かもね……クーラー、つける?」
「ううん、大丈夫」
そういって桃花はベッドに腰かけた。
私もとなりに座ろうかと考えて、でも結局は床に座った。
あの後、鞄を置いて帰ろうとした桃花を、私はなぜか引きとめてしまった。桃花も桃花で特に断らなかったから、なんとなく部屋へと案内してみたけど。
何したらいいのかな。
ラグを指先でなでながら、話題を探してみる。
でも、出てくる話題はひとつしかなくて。
勢いを増した雨の音が、急かすように鼓膜をつつく。
ちょっとだけ深く息を吸い込んでから、私は口を開いた。
「あのさ」
「うん?」
「……カラオケはどうしたの?」
そんなこといいたいわけじゃないのに。
自分から早紀の話題振ってどうすんの。
バカ?
声にならない突っ込みが私の中に飛び交う。
「なんか、部活抜けられないみたいで。終わった後だと遅くなるからって。また今度行こうって」
「そう、なんだ」
「うん。だから瑠美と一緒に帰ろうかなって思って教室覗いてみたんだけど」
鞄はあっても、私はいなくて。
「下駄箱見たら靴がなかったから、ひょっとして帰ったのかなって。ごめんね、勝手に覗いちゃって」
「それは別にいいけど……お姉ぇとはどこで逢ったの?」
「学校出てすぐ。たまたまばったり逢って」
「そっか。鞄なんてお姉ぇに渡してくれてもよかったのに」
「そうだけど……来るの、イヤだった?」
「そんなこといってないじゃん」
つい口調が荒くなってはっとする。




