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「ちょっと暑いね、今日」
「うん」
急に話題に無意味さが増す。
それに気づいたのか、桃花が思い出したように新しい話題を振ってきた。
「久美さんの同人誌って、新しいのいつ出るの?」
「お盆の頃には出したいっていってた、かな。またイベントあるんだって」
「そっか。すごいよね、お話作れるなんて。昨日もちょっと話したけど、どうやって考えるんだろうね」
同人誌の感想は昨日ひと通り聞いていた。そこでも早紀がなんだかんだといっていたから、あまり詳しくは聞けなかったけど。
「ひょっとしてさ、あれって実体験だったりするの?」
「さあ、どうかな」
そう答えて、ふと思いついたことを口にする。
「桃花は女の子同士の恋愛ってどう思う?」
いってから、それが仁奈さんにいわれた言葉だと気づく。
「別にいいと思うよ」
「自分が告白されても?」
「あー……」
そこで急に口ごもり、私も私で黙ってしまったおかげで、空気がちょっとおかしくなる。
何いってんだろ。
こういう時、気の利いた冗談のひとつでもいえたらいいのだけど、あいにく私はそんなに器用じゃないし、桃花も桃花でそういうタイプじゃないから、結局お互い何もいえなくて。
早紀がいたら空気を変えてくれたかな。
なんて一瞬でも考えてしまった自分が許せなかった。と同時に、別にいなくていいよ、あんなの──なんてそんなことをわりと本気で考えてしまって、よけいに自分のことが嫌いになった。
「ごめん、変なこと訊いた」
ようやくそれだけを口にする。
「ううん、別に」
またしても沈黙。
なんとなく目をそらしたら。
「何それ?」
鞄にぶら下がってるものに視線が止まった。




