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話題の中心は昨日のイベントでの一件だった。
あの時はあいさつくらいしかしてないのに、早紀はまるで大事件のように語って、桃花も桃花でおもしろそうに聞き入っていた。
私はといえば、訊かれたら適当に答えるということ以外は、ただもくもくとごはんを口へ運んでいた。もちろん、それは早紀に対してってだけで。
「久美さん、漫画描いてたんだ。全然知らなかった」
「描いてんのはお姉ぇの友だちで、お姉ぇはお話のほうを考えてんだって。私も最近知ったんだけど」
「そうなんだ。わたしも読みたいな、それ」
「じゃあ貸してあげよっか?」
なんて言葉を口にしたのは、私じゃなくて。
「なんなら今日家にくる? あ、るみるみもどう?」
ふたりの顔がこちらに向く。
「遠慮しておく」
とっさにそう答えてから悔やんでももう遅く。
「そっか。ももちー、直接家にくる?」
「なんかあるの?」
「んー、コンビニとかで一緒にお菓子買うのもありかなって思って。ってか、めっちゃひさしぶりじゃない? 小学生ん時はよくきてたよね、あたしんち」
「だったかも。なんかたまり場みたくなってたもんね」
「そーそー、女子会? みたいな感じでさ。いや、少女会かな? あ、コンビニじゃなくて駄菓子屋ってのもありかも」
「あそこ潰れたんじゃなかったっけ?」
「再開したっぽいよ。この前フツーに営業してたし」
そんな風にして、ふたりにしかわからない話で盛り上がって。
時々桃花は私に視線をくれたけど、気を遣っている様子がうかがえる分、かえって目を合わせたくなくて。
私はおいしくもないごはんを、やっぱりせっせと口に運んでいた。
なんだか外の雨が妙に響いて聞こえた気がした。




