13
わたしはマイの笑顔が大好きだった。
本当本当に、大好きだった。
だからこそ、今はその笑顔を見るのがすごく怖かった。
だって、わたしじゃない誰かに向けたマイの笑顔が。
すごく嫌いだったから。
そのうちマイのことまで嫌いになってしまいそうで。
だから、本当に怖かった────…………。
ミクのその気持ちが、私はなんとなく他人事には思えなくて。
怖い──とは違うかもしれないけど、でも不安みたいなものは私も感じていたから、そういう意味でミクの気持ちに通じるものがあって。
桃花のことが嫌いになるわけじゃないけど、なんていうか、このままだと自分の気持ちが湾曲しちゃいそうでちょっと心配、みたいな。
普通だったことが普通じゃなくなっていくような予感、みたいな。
そんな感じ、かな。
もう自分でも何いってるかわかんない──わけでもないんだけど。
「ってどっちだよ」
と思わず突っ込みが口から出てしまう。
「どうだった?」
そう声をかけられたのは、まさにそんなタイミングで。
危うく出そうになった悲鳴をなんとか呑み込んで顔を上げると、仁奈さんが立っていた。
「となり座っていい?」
「ど、どうぞ。あ、これ、ありがとうございました」
「いいよー、返さなくて。持っててあげて。久美ちゃんががんばって考えたお話だから」
同人誌を渡そうとすると、そんな言葉と一緒にやんわりと押し返されてしまった。




