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「いいんですか?」
「あ、シリーズになってるから、ちゃんと順番に読んでねー」
「いや、そうじゃなくて」
という突っ込みはまったく届かないみたいで。
仁奈さんがほんの少しだけ口調を早めて──それでも全然ゆっくりだったけど、こう続ける。
「あ、でも最初のほうはすごく絵がヘタだから……ううん、今も別に上手ってわけじゃないけど……とにかく絵のほうは目を瞑って、お話に注目して読んでくれると嬉しいなーって」
と、そこで私たちのスペースに女の子がふたり、仲良く覗きにやってきた。
彼女らの相手をする仁奈さんに代わって、私はその同人誌をまるごと受け取った。
ちょうどそのタイミングでお姉ぇも戻ってきて、
「身内に読まれるのはさすがにちょっと恥ずかしいけど……まあいいか、今さらだし。会場出てすぐのところに座れるところがあるから、休憩も兼ねて行ってきたら?」
と、そう促されて。
特に断る理由もなかったから、その言葉に私は素直に甘えることにした。
お姉ぇが考えたお話は、平たくいえば恋愛ものだった。
いや、立体的にいっても同じなのだけど。
ただちょっと違うのは男女の恋愛じゃなくて、女の子同士のそれだった。
いわゆる百合と呼ばれるもので、今回開催されていたジャンルもその百合だった。もちろん百合がどういうものかも、今日がそれオンリーの即売会だということも理解していたけど、でも、それとお姉ぇの手伝いとが私の中でつながっていなくて。
なんていえばいいかよくわかんないけど、ようやく自分が何をしているのかわかったような、そんな気分だった。




