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それほど自分の考えに自信があったわけじゃないから、反論の言葉も浮かばなかったし、もとよりあまり深く掘り下げるつもりもなかったし、だから曖昧に答えて別の話題を降ろうと頭を捻ってみたのだけど。
でも、何も思い浮かばなくて。
そのまましばらく黙っていたら。
「わたしにも覚えがあるよ、その気持ち」
仁奈さんが、やっぱりのんびりいう。
「実は今でもちょっぴりあったりしてー」
えへへっと、細い瞳をさらに細めて恥ずかしそうに笑う。
「そうなんですか?」
「うん。でもわたしはひとりっ子だし、親戚の人もずっと年上で、誰かのお下がりってこともなかったから瑠美ちゃんとは全然違うんだけど、でも、きっと一緒だよー」
「どうして一緒ってわかるんですか?」
それには答えず、仁奈さんは代わりにこう訊いてきた。
「瑠美ちゃんって、久美ちゃんが考えたお話読んだことある?」
「ないですけど」
そういえば一度も読んだことがない。
ないといえば、お姉ぇが絵を描いている姿も見かけたことがない。
漫画を描いてることだって、最近知ったし。
「絵を描いてるのはね、わたしなの。お話は久美ちゃんが作ってて、今日来れなかった娘が、編集とか他のこといろいろしてくれてるんだよー」
今さら気づいたことを訊いてみると、そんな言葉が返ってきた。
「せっかくだし、読んでみる?」
そういって目の前に積んである山から数冊を抜き出してくる。




