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爆走して疾走した作品です。

短編の練習だったんですが結局うまくまとまらず………

後悔はするけど反省はしません。

気が向いたときに流し読み程度でお読みください。

第一回目の修正をいたしました。28.2.28

 

 ああ、そう言えば身だしなみを整えたのはいつだっただろうか――


 目の前に大きく映る金の瞳に手入れが行き届いていないせいで更にくすんだ亜麻色の髪。色白い肌は今では青白いと表現した方がいいだろう。


 そう言えば昔は蝶よ花よと身綺麗にされていたわね、と振り返るのは十年前の過去の事。


 私の名前は?ティエリア・パンカー。もう二十五になる行き遅れの枯れた伯爵令嬢。引きこもっていたせいで肌は白く力もあまりない。


 そんな私の唯一としか言えない自慢は白の魔法属性が強い事。この魔法属性により私は生かされ続けていると思う。


 本来なら、伯爵家で三女の私は十五の成人でどこか適当な貴族の元へ嫁がなくてはならない。家に留まる事は許されないでしょう。我が家はちゃんと嫡子もいるし、上の姉二人はしっかりといい嫁ぎ場所に貰われた。


 残されたのは末の私だけ。早くどこかに嫁がなければと思うけど私の人生で残念な事に白の魔法属性を強く持ってしまっていた事で閉ざされる。


 この世界は魔法属性と言う魔法が存在する。それぞれ赤の火、青の水、緑の風、茶の土、白の光、黒の闇を色で紅、蒼、翡翠、琥珀、金、紫と瞳の色がそれらを称し示す。


 その中で白と黒の魔法属性を持つ光と闇は稀で、その人を囲うだけで貴族のステータスが上がる。そのため我が伯爵家当主の父は白の魔法属性を持つ母を娶りパンカー家のステータスをあげ、さらに私が白の魔法属性を持つことで鼻が高くなりすぎて嫌われている。


 特に今は力が弱まってしまった母を亡くし唯一パンカー家に存在する白の私を手放すはずもない……それしか自慢のできない張りぼての肩書きを掲げて父は私を手元にずっと置いていた。


 そんな私はお飾りが嫌で――城の一室をお借りして自ら引きこもり生活を率先して徹している。


 使い捨ての魔石で動くしかない魔道具を自分の魔力で動かせる魔法具へ転換させる転換技術師。


 白の属性魔法しか自慢する事がない私は必死に勉強し、自立できる力をつけて転換技術師の称号を手に入れたのだ。


 私は白としての力しかなかったが、今では白魔女の役割を緊急時を最優先として交代制を組むことで折り合いをつけてもらい、研究室と言う肩書きの一室を提供してもらい引きこもっている。


 この城は白の属性魔法より転換技術師の方が貴重だ。昨今では使い捨ての魔石が溢れるばかりか使いすぎてここぞと言う時に魔石がなくなり新たな魔石の取り引きを大幅に変更したりと悪循環に陥り――ついには国の一部が石ころの廃棄場所となっている。


 少しでも魔石の無駄を無くすべく、魔法具を早く造ってほしいのが王宮の望み。住み込みで転換技術を最優先で出来る者のみ一室を与えてくれるのだから逃げ出したい私がそれに飛び付かない訳がない。


 父が馬鹿でよかったと思う。おかげで見せびらかすために夜会に出されていた私は王宮の仕事を最優先で断れるのですごく重宝している。断りをいれるためには上司に進言しなくてはならないものね。


 その上司が転換技術師の筆頭で変人馬鹿なのだから許可が下りるわけがない。後で気づく父なのだから馬鹿だと思う。よく貴族をやっていけるものだ。自身の噂を耳にしたことがあるだろうに……馬鹿だから気づかないのかしら?


 それでも根本的に帰る家は――パンカー家で変わらないけど……


 それでも引きこもったおかげで私の生活は一変。魔法具に関して必死に勉強をしたからこそ役に立っているし楽しい。ペットのように着飾りどこかの夜会に見せびらかすように連れていかれるより断然いい。


 その引きこもりの反感か私の身だしなみは出掛ける時に髪を手で整えてローブを被る最低限で満足している。時たま様子を見に来てくれる侍女さんに助けてもらえるからそれほど問題視はしていない。貴族としては、問題がありすぎるけど。


 たかが研究室に侍女など付かない。けど、ちゃんとした身なりを一人でだなんて整えられない私では多少は綺麗にできても部屋から出られないほど小汚ないのだ。侍女さんが言うには。王宮に住まうならそれなりには必要。作法だけでは通り抜けできない。


 一度だけ――家の面子を潰すつもりでそのまま出た事がある。しかし通りすがりの侍女に引き留められた。しかもその侍女はかなり真面目の方で私を見るなり烈火の如くお叱りに……女の外見や品位がどうとか……


 それがどう言うわけか陛下の耳に届いて宰相様が女官長に言付けをしまた盛大に叱られればもうしないと誓う。


 しかし一人では身支度ができない云々と伝えたら――部屋から出るとき限定で侍女のシュロアが付いてくれる事になったのである。


 絶対に呼ぶようにと呼び鈴まで手渡されたわ……研究室と私生活の部屋を別々にしておいてよかったと心底思う。掃除に来てくれる侍女さんはみな綺麗好きですからね。当たり前だけど。


 そして今日は必要最低限の身だしなみを整えて(シュロアを呼び、毎日欠かさずお風呂に入ったが朝にもう一度丸洗いされ体の全体を整えて私の好きな匂いで香りを誤魔化し、真新しい簡素なワンピースドレスを着てローブを被れば完成)出来上がった魔法具と申請書を上司に提出するため顔を出そうとした時だ。


 ひゅん、と言う音が聞こえたと思えば聞いたこともない轟音が一瞬だけ鳴る。


 そしてなぜか目の前に自分の顔が写し出され……それを認識した頃には両腕が痛いと思った辺りで意識を手放した。なぜか腕が軽かった気がする。


 そして目覚めて……真っ白な天井を見つめ過去を振り返ったのでした。ああ、ここは医療棟の白さとよく似ている気がするわ。



「目が醒めたかね、ティエリアの白魔女殿」


「……ガロン白魔法師殿?」


「はい。医療棟の長を賜っておる、ガロンですぞ」


 胸まで蓄えた白い髭と髪を揺らしながら金の瞳を覗かせて少しだけ屈んだ年老いた彼が訪ねてくる。腰が曲がってしまった彼だから少し近いように感じるのは寝転んでいるからでしょう。


 彼は私と同じ白魔法師殿だ。魔法師が男を表し、魔女が女を表す。そして頭にその人を映す魔法属性をつけて存在を確かめる固有名詞。


 告げた通りガロン白魔法師は医療棟の長で最高責任者。そして私はその補佐だ。滅多に顔を出さないので存在は忘れられていると思う。


「ティエリア白魔女がなぜ寝ていたか、覚えておいでかな?」


「ええと………何かズシャズガン?と言葉では伝えられそうにない、聞いたことのない轟音を聞いて腕が痛くなりそれが激痛に変わってすぐ気を失ったようです」


「ふむ。意識を失ってよかったかもしれませんな」


「どういう、事でしょう?」


 小さな瞳を閉じてうんうんと一人頷くガロン白魔法師。私にはさっぱりわからない。


 そう言えばあの両腕の痛みはなんだったのだろうか。持ち上げてみると変わら…………いや、何かおかしい。


 私は確かに長袖のワンピースドレスを着たはずである。手首がきゅっと締まっているものを確認している。


 だがどうだろうか―――袖が肘より少し手前まででなくなっている。しかも縁が何やら赤黒い?縁の部分であるそれ以外は今日選んだえんじ色だとわかる。


 それとなく両腕を動かしてみると重怠くて指が動かしにくいような違和感が拭えない。なんでしょうね、これ。


「落ち着いて、聞いてほしい」


「え?……な、何かありました?」


「落ち着いて聞いてくれ。君はわしが見た時にはすでに両腕がなかった」


 両腕がない……?今、ありますよ?


「ある方の勘違いで君を不審人物と思い、剣を投げつけその両腕を切り落としてしまわれた」


 え…………投げつけて、切り落としてしまわれた?しまわれた?腕……


「腕は、ありますよ?」


「わしがくっつけた。違和感があるなら自分で治した方がよかろう」


 ――何となく違和感があるので治す。少し長い呪文を唱えればすぐに淡い光がまとわりついて違和感をなくしていく……が。


 体全体がとても怠くなった。なぜ?上空へ伸ばしていた腕がすぐにベッドへぽすんと音を立てて落ちてしまう。寝ているのに目眩を感じる……


「両腕を一度切り落とした時にだいぶ流血したようだ。なにか食べた方がいい。起き上がれるか?」


「…………ゆっくりならば」


 魔法を使ったせいで残っていた精神がずいぶんと削られたらしい。体内の血液が少ない状況から意識を保つ精神まで削れば、そりゃあ目眩もするし気怠くなるだろう。


 ガロン白魔法師の手助けにより背中にいくつかクッションを入れてもらいながらなんとか起き上がる。まさか自分が介護してもらう側になろうとは……


 いつもなら私がぐったりとしている人々に手を貸しながら治しにいくのに。初めての経験でどことなく気恥ずかしいものだ。


 ああ、もっと初めから身綺麗にしておくべきだったかしら……


「とりあえずスープからか?」


「とりあえず。ここの薬草スープは美味しいですよね」


 独特な感じが美味しいのよ。騎士の方々にはかなり不評だけど……


「それで――私は切られたんですよね?切った本人はどうなさっているのですか?」


「あー……もう少し落ち着いたら、呼んでこよう」


「なんですか。お相手はそんなに落ち着きのない方なのですか?」


「いや、そうではない。ないのだがだいぶ落ち込んでおってな……思い悩んでおる」


「思い悩む?」


 ああ、勘違いで切り落としたんですものね?思い悩むほど後悔をしている、と言うことかしら?


 手ずから器を受け取って気怠さを振り払うように一掬い。薬草とハーブ、それに隠し味として果物を入れてあるこのスープはかなり複雑な味。苦味に草っぽい風味と後からこっそり追いかけてくる甘味……


 苦手な人は薬草の独特な草の味しかわからないらしい。美味しいのに。


「それでお相手の名は?この事、あの見栄っ張りの我がパンカー家は黙っていないでしょう。死にかけたのだから」


「それがな、本当に落ち着いて聞いてほしい。落ち着いたか?」


「先ほどから落ち着けとばかり。言い聞かせるほど凄い方ですか。伯爵を上回る上流貴族、アルカンタ侯爵様の派閥かしら?それともカデミダナ辺境伯爵様が手広く広げている派閥かしら?」


 横目に窺ってみるがその表情は険しい。つまり、もっと厄介な相手。


「ダーナルカーデ公爵様?」


 まだ頷かない。険しいまま。もっと厄介となると王族関係が深い公爵家となる。まさか、ね。


「カルドラルク公爵様?」


 眉が動いた。けど違う。となると……親族関係……でもその親族たちはとても温厚な方たちで剣を振るう方々ではなかったはず。


「落ち着いて、聞いてくれ」


「これ以上考えても答えが出ません。どうぞ」


「ティエリア白魔女の腕を勘違いで切り落としたのは――」


「俺だ」


 個室の部屋にいつの間に入ってきたのだろうか。ブーツの踵を鳴らして入ってきた男は……レイドムス・テレア・ダルトロード第四王子。


 ピンクの柔らかい髪を短く鋭くつり上がった真っ赤な目が合えば卒倒するほどの眼光を持ち、その眼力のおかげで強面にされご令嬢方から遠巻きにされている巨漢。ムキムキとまでにはいかないが鍛えられ引き締まった体は冷酷に敵を切り捨てる。『冷徹の君』と呼ばれている、自国ダルトロードの第四王子。軍の総大将様。


 その顔だけで怖がられ逃げられ少しでもその冷たさを和らげるために通称、残念王子とも聞いている。あまり意味ないようだけど……


 ガロン白魔法師と並ぶように立ち、長身を使って鋭い眼光で見下ろす殿下。私が下から見上げているおかげで鋭すぎる眼力はとても冷たく見下されているように見えた。


 これが、後悔をしている表情?間違っている。絶対に間違っている!思い悩んでいる?それもないわ!


「カルドラルク公爵家から嫁がれた側妃マリアンナ様からお産まれになったレイドムス殿下……で、いらっしゃいますか」


 最後は声がしぼんでしまったが仕方ないでしょう!怖いのよ!倒れなかっただけよかったと思ってほしい!!本当に怖いっ!!


 目を反らすタイミングを失ってしまい代わりに目を反らさないように色々と訴えるがどうも頬がひきつる。もしかしてこういう意味で落ち着けと言われていたのだろうか。これなら確かに落ち着かなければ絶叫しそうである。


 落ち着いても絶叫をしそうですけどね!むしろ落ち着いていたら倒れていたかもしれない。倒れればよかったわ……むしろ素足で逃げたい。


 ――その殿下が勘違いで私の両腕を切り落とした人なのである。



「すまなかった」


「い、いいえ、マントを被っていたので私も怪しかったでしょう……殿下だけが悪いわけではありません」


「――あの場所はあまり人が通らないところで、あの場所を使うと言うことは卑しい事がある者でありよく捕まえる場所でもある。マントで頭から外見を誤魔化し何かを抱え込むように小走りで駆けていたのでそう言う人物だと思わず剣を投げたんだ」


「……言われると怪しいですね」


「両腕を切り落としてそのまま崩れ……確認をしに行けば女性が真っ赤に染まって倒れている。抱えていた魔法具と申請書、身分証明の首飾りのおかげで身元が白の魔女殿と分かり人払いを済ませて急いでガロンを担いで治療をさせた」



 抱えられたんですか、ガロン白魔法師殿……思わず見てしまったら頭が痛いと言わんばかりに首を振られた。本当なのでしょう。


 その後は腕をなんとかくっつけここに運び、レイドムス殿下の奇行が瞬く間に広がりはしたが昨日で沈静化させたらしい。今更ながら私は丸々一日も気を失っていたそう。


 もう何をどう考えればいいのか……いくつか質問をしていくしかないのでしょうね。


 気になった衣服は袖を見れば昨日と変わっていないことがわかる。何となくシーツを捲って見たらベッドごと赤黒い事に気づいた。これは処分行きだとすぐにわかる。


 血の気が引いたが見てしまったものはしょうがない。軽く頭を振って忘れようとしましょう。ああ、まだ血が足りなくてふらりと目眩が。


 それと魔法具はどうなったかと聞くと――あの『冷徹の君』から簡素でそっけない言葉が返ってくる。


「両腕と共に真っ二つだ」


 ふふふふふふふふふふ。私の人生、終わったわね。あれ、期日は明日――じゃなくて今日よ。そして依頼を出したのは王妃陛下。


 経過報告を細かく行ってようやく作れたのに……ああ、その眼光でいっそ私を殺してほしい。




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