ミドーリンの悲鳴
洞窟を脱出した俺たちは話し合いの結果、北に2日の距離のシェアトの町に行くことにした。
2日目、あと半日くらいの距離で後ろから蹄の音が聞こえてくる。
こちらは徒歩なので道を譲る。
2頭立て鉄格子の馬車1台、その他に4頭の馬が一斉に止まる。
鉄格子の馬車には口を塞がれ手足を縛られた男女数名が乗っているのが見えたがよく観察する前に一気に間合いを詰められる。馬に乗った1人がミドーリンをつかむとあっという間に持って行かれた。
「わ、いやぁ!離して!」
「動くんじゃねぇ!」
「ヒロー!助け……」
残りの3頭も一気に間合いを詰めてくる時点でようやく自分たちが襲われたことに気がつく。
クロスボウを構えると乗っている奴に向けて発射。
ヘッドショットが決まり1人落馬
残りの2頭もアトスとヘカトンが仕留める。
ミドーリンはすでにだいぶ離れているがロングレンジ射程内だ。
離れていく野盗向けて発射。
ヘッドショットでは無いが命中しミドーリンと共に落馬。
ミドーリンの悲鳴が聞こえるが落馬程度では死なないだろう。
向こうの馬車から慌てたように2人武器を構えて降りてくるが、すでにアトス、ヘカトンから発射された矢によって倒される。
急いで3人ともミドーリンに駆け寄ると
「ふぇぇ…痛いよぅ」
「怖かったよぅ……」
連れ去られた恐怖と、落馬の痛さで半べそのミドーリンが
泥まみれで転がっていた。
「大丈夫だべ?」
アトスが土を払ってる間にヘカトンと俺は周囲を警戒する。
どうやら今の奴らで最後だったらしい。
ミドーリンはまだ泣いているのでアトスに任せ、俺とヘカトンは馬を集め馬車につなぐ。そのあと鉄格子の馬車に乗っている人々をどうするか話してるとミドーリンも落ち着いたらしく合流してきた。
「同じように拉致されたんじゃないんですかね?」
俺の意見にとりあえず塞がれてる口だけ外してやる。
馬車には男2人、女2人が乗っており
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
「助かったわ、ありがとう!」
確認後に拘束も外してあげる。
馬車の中には彼らの所持品があったので返してあげ、町まで送ってあげることにした。
「本当に一瞬でしたね」
ヘカトンが盗賊の死体から装備品を剥ぎ取りながら、俺に話しかける。
「そうだなぁ、次は注意しないとな」
装備品を馬車に積み町へ移動を再開する。
台車はさすがに邪魔になるので荷物を馬車に移し替え置いていくことにした。
ミドーリンは先ほどの半泣きは嘘のように馬の上でキャッキャしてるw
どうやら初めての乗馬でテンションあがってるようだ。
その後半日ほど進むと無事シェアトの町へ到着する。
また、お礼を言われた後4人と別れ、馬車と馬と装備品をどうするか話し合う。
「ミドリ号は売らないわよ!」
ひしっと馬に抱きつくミドーリン…
いつ名前つけたんどよ……いいけどよ
翌朝いつの間にか、自分の馬にミドリのスカーフが巻いてあったのにはさすがに驚いたけどね。
赤いきつね亭という宿屋を見つけてとりあえず一泊を確保。
無性に、おあげが食べたくなったが我慢w
まずは野盗の装備品を武器、防具、その他に分けて売ってくる。
これらが総額銀貨5枚、銅貨35枚
馬は2頭と馬車を馬屋に売却。こちらは金貨6枚と銀貨15枚にもなった。
どうやら馬は高級品のようで親父によると軍馬になると金貨10枚以上でも買えないらしい。
一般の馬と軍馬は品種が違い、軍馬は明らかにひとまわりでかいそうだ。
ばんえい競馬みたいな馬かね?
売ったお金は全員のものとして管理することを提案する。
条件として仲間が新たに増える場合は一旦清算することを条件に言うと、みんな同意してくれたのでヘカトンに全部持ってもらう。
「なんで俺なんだ」
不思議に首をひねるヘカトンへ、
「回復魔法使えるあんたが一番生き残りやすいから」
と伝えるとこちらもみんな納得してくれた。
宿屋に戻り夕食が出てくる間にミドーリンがヘカトンへ
「金貨見せてよー」
ニコニコしながら金貨を手に取り裏表見ている。
みんなも同じように金貨を見ながらふと、金貨の呼び方がわからないので聞いてみると
「1万アデル金貨よ」
「100アデル銀貨と1アデル銅貨だべ」
アトスも教えてくれた。
6万2035アデルが現在の共同資金になる。
赤いきつね亭にだいぶ食事目当ての客が増えてくる。
そんな中ふと、ステータスを確認するとレベルが上がっていた。
ミドーリンはいつの間にか夕食の肉の塊に素手でがぶりつき、引きちぎろうと格闘している。
ミドーリンてなんかさ、ワイルドだろぅ
いやこっちの人達にはこれが当たり前なのかな。
日本だとナイフとフォークで食べるのにね。
次回へ続く。