とりあえずハッピーエンド
翌朝、ミドーリンが針と糸で縫いものをしていた。
女の子らしい一面もあるものだど関心……
ポケットを拡張してやがった。
いつものミドーリンで安心したよ。
「あ、ヒロおはよー」
「今日は早起きだな。何かあったのか?」
「いやぁ、お腹減っちゃって。ねぇパン焼いてよ〜クリームパンを最初に」
「はいはい。で次は何を焼く?」
「マヨコーンで」
すでに仕込みが終わってるので後は焼くだけだ。
パーティメンバーと新人達も合流して次々にパンを焼く。
ミドーリンもお腹を満たして猫に餌をあげたりしてる。
そろそろ開店時間なのでみんなに合図してオープンすると、店の外に10名程度の行列ができていた。
おー早速カフェの利用者が広めてくれたのかな?
ジャグラさん用に焼いたパンを届けに行き、店に帰ってくると行列が15人くらいに増えていた。
店内もすでに結構なお客さんがいて、厨房もすでに戦場のごとき忙しさになっている。
パン屋の経験者であるエリシャのもとに、翌日の仕込み、焼き、搬送、会計とあちこちに指示を出している。
壁を挟んで猫カフェの方はミドーリンが担当しているのだが、こっちは何というかまったりしている。
というかミドーリンも一緒になって猫を可愛がってるがいいのだろうか?店員だろ?w
数時間後……
パン屋の方がえらいことになってきた。
そう。お客の数が20人以上並んでいる……
まだオープンして3日目だぞ?しかも実質営業日は2日。
材料の増加、焼き釜の増産、新人の追加採用と次々に処理していく。
数日後……
オープン前なのにすでに50人以上
たかがパン屋なのに何この行列。
順調なのだが、新人をどんどん採用して投入してるのに忙しさは変わらない。いやむしろ、酷くなってる。
数週間後……
オープンですでに100人以上(もう数えれない)
整理券、予約などが必要なレベルに。
パンの金額も少し値上げしたのだが、お客さんは増える一方で従業員はすでに60名を突破して8時間3交代で
深夜にも仕込んでいる状況だ。
ここでようやくこの街の人口1万人のキャパシティに達したのだろう、パン屋の従業員として募集したメンバーだけでお店が営業できるようになった。
どんだけパン好きなんだよ。
人口の3割にあたる3000人が毎日買いにくるパン屋て。
そして数年後……
ドワーフの首都で偉そうな人達の会話。
「おい、ギムの街の人口増加をどうにかできないのか!」
「ドワーフだけでなく人間やエルフなども流入してるということだが」
「馬鹿な!1万人程度の街がなんで数年で100万人にも増えるんだ!」
「何!パン屋が美味しいからだと?ふざけてるのか!」
「ヌルフフフ。確かにうまい……もっと買って来てください!」
一方ギムの街では
パンの街とも呼ばれ、それを目当てに旅行や移住などで賑わっていた。
ヒロ達に雇われた新人達が弟子として新しいパン屋を開業。
開業したパン屋からさらに弟子がというように次々にオープン。
雪だるま式に増え、現在では100軒以上になっている。
美味しいパンの噂はあちこちに駆け回り、国境を越えて海を渡り広がっていく。
観光のつもりでパンを食べた人達はあまりの美味しさにそのまま永住。
また、他の街を拠点に活動していた商人は拠点をギムの街に。
ある冒険者はパン屋に弟子入り。
そう、本来なら他の街に移動していく人達が移動しないのだ。
人口増加に伴い、建築が盛んになり、その為の資材が大量に集まる。
そしてそれらの人達が今日もパン屋に並ぶ。
「あなた〜食パンがもう売り切れそうよ〜」
「ああ、もうすぐ焼きあがるぞ」
初夏の風に揺れるパン屋の看板には、とんがり帽子とクロスボウが寄り添うように描かれていた。
おしまい
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ここまでお付き合い頂いた読者の皆様、誠にありがとうございました。
最初は知り合いに読ませて(2ー3話のつもり)すぐに消す予定でしたが、なぜか?(本当になんでだろ?)続きを読みたいという読者様がいたおかげでこんなとこまで書いてしまいました。
リアルの都合上、これ以上書く暇もなくすいません。
それではまた何処かでお逢いできる日を。




