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戦争!?

「いらっしゃいませ」


 私がそう声を掛けますと、小さなお子様が微笑みを浮かべてくださいました。

 そのお子様は僅かばかりのメルカを手に、バーガーを注文なさいます。バーガーは安いので、お子様にも十分手が届くのですよ。


「お飲み物はどうなさいますか?」


 慣れない口調で、マグさんが仰います。そうでございます。現在は彼女が店員として、接客をなさっているのですよ。


 素敵なことでございますね。


 また、ミーアさんは、


「御注文は何になさいますかっ!」


 振り切れて、かなり元気な接客となっておりますね。マグナトの新制服(この世界に合わせたデザインとなっております。フリフリです)を着こなして、見事な笑顔を浮かべておりました。


 ナルさんは転んでおります。


 それでもマグナトは大繁盛しておりました。安く、美味しい。それがマグナトバーガーの正体でございますからね。

 売れない訳がございません。


 食糧難の世界ではございますが、我が『創造せよ、至高の晩餐(メーカーオブマグナト)』は、無限に作り出すことが可能です。


 既にお店が開店してから数ヶ月経過していますが、世界の幸せ度は確実に上昇しておりますね。


 食糧供給がある程度安定し、ここに来れば最低限餓死することがなくなりました。

 餓死しないという確信は、労働力の支えとなりました。働ける者が増え、また大きな労働をすることができるようになりました。


 畑を耕す人、魔物から作物を守る人。それらの方々が我がスキルの力で能力が上昇したことも重大な要因ですね。


 そう、食糧がある程度、生産されるようになってきたのでございます。


 そもそも食糧難が発生したのも、魔物さんたちの誕生に起因していますからね。


 それに対抗する力が生まれますからね。けれども、不安ですね。

創造せよ、至高の晩餐(メーカーオブマグナト)』には付加効果が無数に存在します。それが悪用される可能性もあるのです。


 無論、そのようなことをすれば、お店の全戦力が対象者の排除に向かうと宣言しております。


 ギルド都市にて、最終的に最上級ランクとなった我々を相手取りたい者は少ないでしょうね。


 最近も、病気で余命僅かな方がバーガーを食べて元気になりました。それからというもの、この店のバーガーは秘薬としても人気となってしまいました。

 人が助かるのならば文句はございませんけれどもね。


 スキルの効果を操れるようになれれば良いのですが。


 とまれ、この世界はマグナト店の誕生によって、少しずつ安定していきました。


 ある日のことでした。聖さんが億劫そうに当店へお越しくださいました。


「やってるか?」

「ああ、聖さん。お久し振りですね」

「ああ、そうだね。実に久し振りで、愉快だ」


 彼女はバーガーのセットを注文なされました。それを手渡しますと、彼女がまた口を開きます。


「少し、外へ行こうか」


 聖さんの真剣な口調に押し負けて、私は彼女の後についていくことにしました。

 一度店を出まして、近くの公園に着きました。


「青方君次くん。きみは実に愚かしい」

「そう、でしょうか?」

「この周辺の発展は目覚しい。多くの人間が幸せになっているといえよう。魔界族たちの地位も、向上しているよ。最高の労働力だからね」


 それだけ聞きますと、良いことのようにも聞こえます。けれども、


「この場所は発展し過ぎた。周辺の都市、国に敵意を持たれているよ」

「敵意? 私は別にこの都市だけにバーガーを売っているつもりはございませんが」

「そのようなこと、向こうは知らないさ。そして、きみから教えられた情報の一つ。神の国」


 そう、私は夢で見た内容……つまりは神様との対話を話していたのでございます。


「神が率いる国が、ギルド都市を次の敵と見定めた。大方、あたしたちに気付いたのだろうな」

「それは」

「きみのお陰で沢山の人が救われた。だが、それはあくまで沢山であり、全てではない」


 彼女の仰る通りでございました。


「他国はきみの力を独占したがっているよ。まあ、欲望者にはよくあることだよね。あたしも経験したことがあるよ」

「貴女様もですか?」

「ああ、言っただろう? 兵器にされたことがある、と。まあ、気にすることはないさ。ギルド都市の戦力はこの世界でも最大なのだから、下手に戦争は仕掛けられないさ」

「戦争!?」

「ああ、あたしのときも戦争が起きたよ。だからこそ、今はギルド都市にいる訳だしね」


 彼女は悲しそうな表情を浮かべておりました。


「まあ、気を付けなよ」


 それだけ仰って、聖さんは背を向けて歩いて行ってしまいました。


 私は彼女の背へと呟きを送ります。


「沢山の人ではなく、私は全ての人を救いたいです。ですからーー」


 私は止まることはしません。

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