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本日より開店でございます

 資金を得ることができました。元々、我々で用意していた資金もある程度あるので、向こうにはそこまでの負担にはならないでしょう。


 どころか、利益の方が大きいと断言できます。


 私は今まで様々な方にバーガーなどを振舞ってきましたが、好評でございました。それはつまり、そこまで味覚についての差異がないということでございますよ。


 大繁盛間違いなし、ということですね。


「ここに我らの店が建つのでございますよ!」


 所変わって、ギルド都市ラピーセルの街中。私たちはマグナト異世界店のできる場所に来ておりました。


 意外とあっさりとしたものでございましたね。お金さえ揃えば、後は手続きを済ませるだけでございます。


 読み書きはもうある程度、ナルさんから学んでおりましたから、どうにか手続きも独力でこなせました。


 これも全て皆様のお陰でございますね。


「あと必要なモノは制服くらいですかねえ?」

「制服?」

「私が最初に着ていた服ですね。ああ、マグさんは見ていませんでしたか」


 盗まれましたからね。

 気絶していたところを盗まれ、それがナルさんに渡りました。


 今はもうボロボロに破れてしまいましたがね。


「このお店で働いているのだと証明する、まあシンボルのようなものでございます。更に簡単に申しますと、お揃いの服ですね」

「お揃い!」


 マグさんとナルさんが同時に反応なさいました。この、仲良しさん!


 私が彼女らの仲良し振りを眺めてのほほんと幸せを感じていますと、ミーアさんが私の服の袖をちょいちょいと引っ張りました。

 マグさんの癖が移ったのでしょうかね。


「青方くん。店を建てるのは良いんだけれどもね。本当に俺に店員をやらせるつもりかい?」

「ええ。そのつもりですよ」

「俺は勇者だぞ!」

「マグナト店員も勇者のようなものでございますよ」

「……なら良いか」


 ミーアさんも納得してくださいました。これでもう心配はございませんね。


 もうここにお店が建つことは決定しました。今は何も建っていないこの空き地には、無限の可能性が潜んでいます。


 良い可能性も、悪い可能性もございます。それを良いモノにできるのかは、私の手腕次第ですね。


 まあ、幸いなことに、私には頼りになる仲間がいます。マグさんも、ナルさんも、ミーアさんも、頼りになるお方です。あと、トートさんもね。


 彼女たちがいる限り、私の未来は明るいでしょう。


「今できることは制服の準備と接客の練習くらいでしょうか。ああ、宣伝手段も考えないとですね!」

「君次、そなた随分はしゃいでるな」

「ええ、ええ! 当然でございますよ。とうとう、この世界にもマグナトができるのですよ? もう寂しさで枕を濡らす日々は終わりです」

「そんなに寂しいなら、妾に言えば良かったのに。一緒に寝てやったのにさ!」


 ナルさんと共にお布団に入ると、色々と問題がございますからね。遠慮願いたいものです。


 私も男ですし、それより何より、寝ているときにナルさんの不運が発動したら困りますからね。

 この前、ナルさんと一緒に寝たマグさんが酷い目に遭ったのです。何故か雨漏りが起こり、その水がピンポイントでパジャマを濡らしたのです。


 朝、お漏らしをしたと勘違いしたマグさんは、私に見られたショックなどで号泣していました。


 あれは悲しい事件でしたね。


 私がジッとマグさんを見ていますと、彼女も思い出したのか顔を赤くして、手で肉体を隠してしまわれました。


「青方のえっち」

「そ、それは……まあ、認めるにやぶさかではございませんが! 今のは言いがかりですよ」

「マグのこと見てた」

「そりゃ見ますよ」


 可愛いですからね。

 頭の上の猫耳ちゃんなど、そうそうお目にかかれるものではございませんからね。見てしまうのは、もう仕方がないことであると許して欲しいものです。


「さ、さて!」


 話を逸らす為に、できるだけ大きな声を心掛けます。


「では、今日からお店が始まるまで。ビシバシとマグナト店員の心得を教えていきますよ」


 一流のマグナト店員になる為には、莫大な時が必要になりますからね。

 今からでも遅いくらいでございますよ。


 まあ、私はマグナト店員青方(あおかた)君次きみつぐです。当然のように、新人教育も得意なのですがね。


「手取り足取りお願いします」


 珍しく畏まった様子で、ナルさんが頭を下げました。つられて、マグさんも下げていました。



 そうして刻はあっという間に過ぎて行きました。

 我々はギルドで依頼を受けつつも、様々な準備をしました。その甲斐あって、無事今日という記念すべき日を迎えられました。


「よろしいですね、皆さん」


 こくり、と皆さんが頷きを返してくださいました。我々が身に纏うのは、同一のお洋服でございます。


 久し振りに腕を通したマグナト店員の制服は、我が肉体にしっくりと馴染みました。


 外には人が沢山おります。


 ごくり、と何方かが喉を鳴らしました。私は皆さんに一度向き直り、笑顔を向けます。


 大丈夫。我々ならばやれます。


 意を決して、ドアを勢い良く開きました。


「ようこそ、いらっしゃいませ! マグトナルト異世界店、本日より開店でございます!」


 眩しい光が、私の目に入ってきました。

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