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これが勇者の世界だよ!

青方あおかた君次きみつぐくん。これが勇者の世界だよ!」

「なるほど。中々にハードでございますねえ」


 現在、我々は何と家屋の壁の上を駆け抜けております。


 これはミーアさんの提案でございますね。『創造せよ、至高の晩餐(メーカーオブマグナト)』によって強化された身体能力で、私は壁を駆け上がります。


 靴を脱ぎ、足の指の筋肉で壁を掴み、上へ行くのです。正直、意味がわかりません。

 どうして、私はこのようなことができているのか。不思議で堪りませんね。


 最近は『創造せよ、至高の晩餐(メーカーオブマグナト)』の能力が強まっている気がしますね。


 壁を駆け上りながらも、周囲への警戒は怠りません。何処にタマちゃんさんがいらっしゃるかわかりませんからね。


「いましたか、ミーアさん!」

「待ちなよ。今、滅茶苦茶可愛い女の子いたんだけど! 青方くん、一緒に口説きに行かないかい?」

「大変魅力的なお誘いですが、後にしてくださいませ。後、ミーアさんもお美しいですよ!」

「俺、男に興味ないんだよね。ごめんね。マグさんとナルさんくれるなら、少しくらいは妥協するよ?」

「ミーアさん、人は誰かに上げたり貸したりするものではございませんよ」

「おっと、これは失礼!」


 互いが軽口とわかっていますので、深刻になることもなく、お仕事は続けられます。

 ミーアさんとも少しだけ打ち解けてきましたね。


 最初こそは敵でしたが、彼女の気持ちは僅かながらに理解できます。ミーアさんはもうお友達も同然ですから。

 これからも仲良くしていきたいものですね。


 後、ナンパの技術などを教えて頂ければこちらから申し上げることはございませんね。楽しみでございます。


 青方さん、モテてしまいますよ。


「あ、ミーアさん。猫さんの群れがいらっしゃいます」

「青方くんは猫アレルギーだったよね? よし、俺が行こう」


 さっと壁を蹴り上げ、猫さんの群れのど真ん中に着地致しました。


 ……猫さんたちが逃げてしまわれました。


「ちょっと! 貴女様は何をしていらっしゃるので?」

「だって。勇者だから……登場に凝りたくて」

「まあ、お気持ちはわかりますよ?」


 逃げていく猫を見やるミーアさんの背中には哀愁が漂っておりました。

 もしや、この結果こそがナルさんが懸念していらした不運なのでしょうか。


 念の為に、マグナトバーガーを処方しておきます。


「いつも思っていたけれども、この食べ物は本当に美味しいよね」

「でしょうでしょう」

「出すのがきみじゃなくて、美少女だったらもっと美味しかっただろうなぁー」

「むむ」


 正論でございますね。言い返す方法もございません。悲しきかな、性別の壁。


「べ、別に構いませんもん。私、男ですけどもイケメンですから!」

「青方くん」


 ぽん、と肩に手を置かれます。ミーアさんが悲しそうな、哀れなものを見る目で私をご覧になられます。


「イケメンっていうのは俺みたいな奴のことを言うんだよ」

「このナルシストさんが!」

「きみだってナルシストだからね!」


 私はトートさんを構え、ミーアさんは剣を構えました。両者、真剣な目付きで睨み合います。


「トートの為に争うのはやめてー」


 トートさんは相変わらず、意味のわからないことを仰っています。私は普段意識をシャットアウトして、トートさんのいうことの十分の一しか聞いていません。

 仕方がありませんよね。本当に、トートさんは二秒と黙ることがございませんので。


 カキン、と金属同士のぶつかる鋭い音が、響き合いました。一合、二合と攻撃を重ねていきます。


「ふ、腕を上げたね、青方くん!」

「そちらこそ!」


 トートさんを振り上げてからの鋭い蹴りを放ちます。それは見事に剣の鞘で受け止められてしまいました。


 前回戦ったときよりも、奇策に対応できるようになられていますね。


 と、そうこうして喧嘩をしていますと、遠くの方で悲鳴が聞こえました。

 慌てて、我々はそちらへと駆け始めます。


「まったく、重ね月の日くらい静かにして欲しいものだね」

「重ね月とは?」

「そうか。きみは異世界人だったね。重ね月っていうのは、満月が二つ重なり合う日のことだよ」


 満月が二つ、という時点で私にとってはチンプンカンプンでございます。

 それに、私の記憶が正しければ昨日も満月だったように思います。

 まあ、異世界のことですから、よくわかりませんがね。基本的なルールが違いますし。


「重ね月の日は恋人と過ごしたいよね。ロマンチックだ」

「でしょうね。私も今から楽しみでございます」

「十分に楽しむ為にはーー」

「ーー仕事を終えねば、ですね!」


 同時に角を曲がり、悲鳴の元へと到着致しました。そこにいましたのは、ナルさんとマグさん。


 そして、女性が一人と巨大な狼の頭をした男性が一人。


「わお」


 驚いてしまいますね。

 あの方はマグさんと同じ魔界族の方でしょうか。それにしては、動物っぽさが前面に押し出され過ぎな気も致しますが。


 どちらかと言いますと、


「狼男さん?」

青方とミーアの関係は今の所は恋愛ではなく、悪友という感じでございます。

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