貴女様たちが幸せでいてくださるならば
朝食を終えた我々は自由時間を謳歌しております。とはいえ、特にすることはございませんがね。
ミーアさんはマグさんとナルさんに言い寄って、あっさり振られてしまったので外へと出かけてしまわれました。
おそらく、またナンパにでも行くのでしょう。ミーアさんの場合は女の子とデートするというよりも、女の子を喜ばせることが目的のようでございます。
やはりマグナト店員向けの性格をしていますね、彼女。
一方、私とマグさんたちは部屋でゆっくりしておりました。
毎日依頼を受けるのは危険です。最善の仕事を成す為には、適度な休みが不可欠でございます。ですから、今日は休みなのですよ。
その休みを、我々は本当に休みに使用しております。
和室でダラリと時が過ぎていくことを楽しんでおります。現代日本ではあまり体験のできない時間でございますね。
クッションに座り、ぼうっとします。両脇にはマグさんとナルさんがいます。
マグさんは私の肩を枕にして眠り、ナルさんは私の肩に頬を擦り付けていました。
先程、ナルさんが興奮のあまり擦り付けの威力を上げ、我が肩を脱臼へ導いたということを除けば、実に静やかな時が流れておりますね。
今はナルさんにはグーを飲んで貰っています。これで少しは不運がマシになることでございましょう。
「ナルさん。明日は何をしたいですか?」
「依頼を受けるんだろう? 店を建てる為に」
「それはそうでございますが。ナルさんは何かしたいことはないのですか?」
「ある。けれども、それはもう叶いつつある。妾はそなたらと共にいられれば、それで満足だ」
可愛らしいことを仰った後に、ナルさんは顔を真っ赤に染めてしまいました。恥ずかしさからか、瞳を閉じてしまいました。
肩へと頭を置いて、そのまま動かなくなりました。眠ろうとしているのでしょうか。
ならば、それでも良いでしょう。
私も、私を包む優しさに身を任せて、微睡みの海の中へと潜っていきました。
「来たか」
「おはようございます、神様」
夢の中の世界で、私は再び神様と出会っていました。
「で、どうするつもりじゃ。戦うのか、戦わないのか」
「戦いたくはありません。しかし、戦わざるを得ませんね。戦えば、危険が生まれます。しかし、戦わなければ襲われた時、どうしようもなくなってしまいます」
そう、向こうの神様はこの世界を滅ぼそうとしているらしいのです。ということは、ですよ。
いつか、あちらの方から攻撃を開始されてしまうかもしれません。
もしも、戦わないつもりで何も用意していなければ、襲われた時一たまりもございません。
それだけはいけません。
私は全員に幸せになって頂きたいのです。できれば、誰にも死んで欲しくはありません。それが無理だと言うのならば、一人でも多く生き残って欲しいのです。
「戦うつもりはありません。けれども、応戦する覚悟はそろそろ必要になるでしょうね」
「ああ、それで良い。情報をやる。もう一柱の神はとある王国で王をやっている」
「人の世界に紛れてらっしゃるので?」
「そうじゃ。儂も、管理下の世界ではそうしておる」
ほうほう、神様は人の生活に紛れてらっしゃるのですか。
「青方君次よ。お前のお祖母様の話はもう少し後に語ろう。とにかく、お前はお前の欲望を満たし、力を付けるんじゃ」
「そうですか。わかりました」
「どうか、もう一柱の神を救ってやってくれ」
神様の言葉を耳にしてから、私はすぐに神様の空間から帰ってきました。
それはつまり、起床したということでございます。
まだお二人は眠っております。
「貴女様たちが幸せでいてくださるならば」
できる限り優しく、傷付けないように、私は彼女たちの頭を撫でました。




