おや、ここは……
「おや、ここは……」
周囲を見渡してから、私は納得したように手をポンと叩きます。ここが何処だか、すぐに理解できました。
ここは神様の場所でございますね。
私は一度、ここに来た事がございます。
懐かしいですね。ここに来たことが、まるで生まれ変わった時のように思い出されます。
となると、この近くに神様がいらっしゃるのでしょうかね。
「ここじゃ。儂じゃよ」
「貴方様は!」
「儂じゃよ。神じゃよ」
そこにはマグナトのマスコットキャラクター『ドナドナ』様の恰好をした、我がライバル店のマスコットキャラ似の神様がおりました。
コスプレですかね。あまり需要を感じられませんが、まあ性癖は自由でございますからね。お好きになさるとよろしいでしょう。神様すらも魅了するマグナト、流石でございます。
「で、どうしてコスプレを?」
「喜ぶかと思ってな」
「私を舐めてらっしゃるので?」
マグさんやナルさん、ミーアさんなどの美少女さんがおやりになられれば、我が理性は崩壊一直線でございましょうけれどもね。ですが、神様がやった程度では苛立ちくらいしかございません。
髭を毟りますよ。
「す、すまん。ちょっとした悪戯心だったんじゃ」
「もうやってはいけませんからね」
ケターキーのキャラが、ドナドナ様のコスチュームを身に纏っていましたらば、まるでマグナトが買収されたように思えますので不安になりますね。
「そ、そうじゃ。今夜は話があるから呼んだんじゃった」
「ほうほう。どのようなお話で?」
「お前を転生させた理由じゃよ」
「……神殺し、でございますか」
私の問いに対して、神様は首肯を返してきました。何と。真実でございましたか。神の暗殺を命じられるとは、当店ではそのようなサービスは行われておりませんのに。
「目的を話さなかったのには理由がある。お前は殺しを目的として、強くなることはできないと踏んだのじゃよ」
それはそうですね。
私の力は他者を幸せにする為、そしてマグトナルトの繁栄の為だけに行使されます。それ以外ですと、テンションが下がらずを得ませんね。
「改めて依頼しよう。神を、もう一柱の神を殺して欲しい」
「お断りですね」
「このままでは、そちらの世界が壊れてしまうのだ」
「どうしてでございますか?」
「そもそも世界という概念は、儂と彼女が生み出した」
スケールが大き過ぎます。混乱する我が脳内を無視して、神様は言葉を続けます。
「そして、世界は複数生まれた。その半分を儂が管理し、残りの半分を彼女が管理している」
「ちなみに、この世界は何方が管理していられるので?」
「儂ではない。儂が管理していたのは、お前が最初に住んでいた世界の方じゃよ」
「そうなのですか」
どうせならば、美人の神様に管理されたかったてます。まあ、神様が美人なのかは不明ですがね。
神同士の戦い、どうなるのでしょうかね。というよりも、神様から力を頂いているだけの私が、神様に勝てるのでしょうか。
神様は神様が倒すべきなのでは?
というような表情をしていたのを見抜かれて、神様が反論を開始致しました。
「儂は動けん。仮に、儂が負けた場合、儂の管理範囲も共倒れてしまう」
「共倒れる? では、もしも今私がいる世界の神様を倒せば、世界はーー」
「不安定になるだろう。だが、このままでは消えるのは確実じゃ」
「では、どうすれば?」
「神が消えて管理が消えた瞬間、儂が制御を奪う」
このまま女性の神様に滅ぼされるのを待つか。それとも、一か八かの勝負に出て見るのか。
後者以外に、選択肢はございませんよね。しかし、やはり私は賛同できませんね。リスクが高過ぎますからね。
それに、殺しは好きではありませんから。
「やはり、お断りします」
「ま、待て。この件にはお前のお祖母様が関わっているぞ」
「お祖母様? 神様が様付けをするとは」
「あの方の話が聞きたければ……わかるな?」
「……まだ決められません。お仲間たちと相談させてくださいませ」
お祖母様のお話には興味が惹かれます。一体、何があるのでしょうか。
あの時、ジョアンさんのスキルを受けてしまった時、お祖母様が現れました。あれは私の脳内が作り出した幻影という訳ではなかったのでしょうか。
取り敢えず、私は一旦起床することに決めました。夢の世界を飛び出します。
折角マグさんとナルさんという二大美少女と寝ていたというのに。最悪の気分で、私は起床しました。




