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年季が違いますね!

 依頼を終えたことをギルド本部に報告してから、私たちはマグさんたちと取り決めていた集合場所に向かいました。


 ギルドの方の言葉が真実でありましたら、マグさんたちは先に帰宅していることでございましょうね。

 彼女たちは我々よりも早く依頼を終えていたようでございます。驚きの早さでございますね。


 まあ、お買い物に行った時間を除けば、一番早く終わったのは私たちでしょうけれどもね。


 実に素敵な依頼でございました。

 欲望者やスキルについて、少しだけですが情報が得られましたし。

 お金も沢山頂きましたからね。これでまた、マグナト異世界店への夢に一歩前進でございます。


 るんるん気分で集合場所に到着致しました。

 そこには沢山の女性を連れたミーアさんと隅っこの方でムスーッとなさっているマグさんがおりました。


 今のミーアさんには話しかけ辛いので、先にマグさんに近寄ります。


「早かったですね、マグさん。依頼はどうでしたか?」

「簡単だった」

「まあ、マグさんはお強いですからね」


 私が素直にマグさんを褒めますと、彼女はふふんっと胸を張りました。そして、私へと一歩近づきますと、頭を差し出してきます。

 撫でて欲しいのでしょうかね。


 猫耳さんがぴょこぴょこと動いております。かわいい。


「かわいいですねー」

「……えへ」


 小さく縮こまるようにして、マグさんが微笑みした。幸せそうに、にへらと顔を緩ませます。

 幸せそうで何よりでございますね。


「しかし、それならばどうして不機嫌そうだったので?」

「聞いた。青方がナルとデートしてたって」

「デート? 確かに買い物はしましたけれども」

「ずるい。マグも」

「ええ、もちろん。次は全員で行きましょうか」

「違う。マグだけ」

「一人でお買い物でございますか? 止めはしませんが」

「訂正。青方とマグだけ」


 時間があればそれもよろしいかもしれませんね。店ができれば、私も中々時間が取れなくなりますしね。

 今のうちに、遊んでおくべきでしょうね。


 ナルさんたちを除外する理由は思い当たりませんが、きっとそういう気分の日もあるのでしょう。

 私は朗らかに頷いて、マグさんを撫でるのを止めました。


 どこか名残惜しそうな形相を浮かべたマグさんでしたが、すぐに普段通りの凜とした表情を浮かべます。


「さて、では今日は何処で休みましょうか」


 そうです。

 集合場所こそ決めておりましたが、結局宿は見つかっておりません。


 メルカはありますので、宿に泊まることはできますね。できれば、お風呂に入りたいものでございますよ。

 野宿の場合は、ナルさんが即興で魔法により作り出した擬似お風呂にしか入れません。


 また、いつ敵襲が来ても良いように、常に気を張っていなければなりません。


 偶にはきっちりと休む。

 これまた、マグナト店員の必須スキルにございますよ。自身のパフォーマンスを最大限活かす為には、どうしても休むことが必要です。


 その為には、今日くらいは奮発しても良いのかもしれませんね。

 けれども、あまり散財しないように気を付けないといけませんね。


「うーん。何処にしましょうかねえ。悩みます」


 私もマグさんもナルさんも、この辺りの立地は存じ上げておりません。ですからオススメの宿一つわからないのでございますよ。


 うーんうーんと悩んでいますと、その姿を哀れに思ってくださったのでございましょう。

 トートさんが口を開きました。


 特殊な力を持ったスコップであるトートさんは、自身の意志を持ち、また自由にお話ができる力をお持ちです。


 もしや、この街を案内してくださるのでしょうか。魅力的なアイデアでございます。

 トートさんはこの街に、我々よりも早くきていらっしゃいましたから。

 この辺りの地理など、最早庭同然に把握していても不自然ではございませんよ。


「うーんうーんって煩いよー。トート眠たいのにー」


 おや、意外な御指摘が飛んできましたね。


「そうなんですか。トートさんも眠くなるのですね。意外です」

「うんー。トートも眠くなるよー。退屈なご主人様のお話聞いてるときとかー」


 歯に絹着せぬ物言いでございますね。

 トートさんには歯がないのですけれどもね。


「ならば余計に早く決めねばなりませんね。トートさん。どこかおすすめの宿はございませんか?」

「あるよー」


 トートさんの案内でやって来たのは、ボロボロの屋敷でございました。

 その屋敷は今にも倒壊しそうでした。


「ここが宿ですか?」

「うんー。二百年前はそうだったー」

「年季が違いますね!」


 仕方がございませんね。今宵はここで我慢致しましょうか。

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