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妾は君次の味方だよ

データが消えます。どうしてなのでしょうか。何方か、解決策を!

「妾が逃がしてやるとでも思ったか、ジョアン」


 その声は私の背後で響きました。そう、それは正しく、ナルさんのものでございました。


「すまない、君次。迷惑をかけた」

「それはこちらの台詞でございますよ。さ、では、共に参りましょうか」


 ナルさんが飛び出しました。

 その勢いで、彼女はジョアンさんにタッチなさいました。


 小さい頃の戯れを思い出しますね。子供というのは中々に残酷なものでございまして。


『タッチ』

『うわあああ、何々菌が付いたぁ! タッチ返し!』

『バリア!』

『何々菌にはバリア利きませーん』


 などという残酷な会話が頻繁に繰り広げられておりましたね。

 あの頃の私はまだ幼く、ついつい激怒していたものでございますよ。

 懐かしいですね。


 まるでさっきのことのように思い起こせます。

 まあ、ジョアンさんのスキルによって、実質さっきのようなものでございますけれどもね。


「ふ、下位の魔王のスキル何かにかかる訳ないじゃん!」


 直後、彼女の背後から巨大な腕が現れました。腕の出処はミリアム湖。


 湖の中から突如、巨大な腕が現れたのでございます。鱗に覆われた青色の腕。

 それが一切の躊躇なく、ナルさんとジョアンさんを握り締めました。


 両者は同時に、唇から血液を吐き出しました。


 不運が既に始まっておりました。


 大方、ミリアム湖の主様とかでございましょう。

 どうせ攻めるか迷っていると、次は勇者様の方から悲鳴が聞こえました。


「嫌だ嫌だ! 俺は勇者の娘じゃない! 俺は俺なんだ。見てくれよ! 俺を見てくれよ!」


 勇者様がそこで発狂なさっておりました。

 おそらく、勇者様もジョアンさんに洗脳されていたのでございましょうね。

 突然、支配者が消えたことによって、己の感情を制御できていないのでございましょう。


 剣を一心不乱に振るい、何かを切り裂こうとしております。


「っく」


 一方で、マグさんはナルさんを救い出すという目的を果たし、それでもなお勇者様のハーレムメンバーと交戦しておりました。


 正しく、混戦でございます。


 私が何をすべきかは、わかりません。

 けれども、取り敢えずは目の前の勇者様をお助け致しましょうか。


「勇者様!」

「俺は。俺は英雄の娘じゃないんだ。それだけじゃ。ないんだ」

「貴女様は貴女様でございます」

「そんなこと知ってる!」


 スキルに頼った速度で、真正面から攻めかけてきます。そのような単調な攻撃には、晒されることもございません。


 トートさんで穴を生み出し、彼女を罠に仕掛けました。

 地面に背中を打ち付けた勇者様は、それでも叫び続けました。


 声が枯れる程。

 彼女は叫んでおりました。余程のコンプレックスなのでございましょう。


「わかりました。説得したいのですが、それは後回しに致します。一度、意識を失って頂きますよ」


 勇者様が穴を駆け上がってきました。

 それを待ち構え、トートさんで頭に鉄槌を下しました。一気に、彼女は奈落に叩き戻されます。


「耐えて下さいね?」


 土を操り、埋めました。


「五分くらいは保ってくださいね。私、ナルさんの援軍に行きますから」


 マグさんは抑えに徹していますし、どうにかなるでしょう。

 けれども、ナルさんは勝手が違います。魔王同士のバトルですからね。


 勇者様を放置して、私はナルさんの元へ向かいます。


「どうして邪魔をする! 元はと言えば、仲間じゃんか」

「妾は君次の味方だよ」


 拳と拳のぶつかり合い。

 魔法と魔法の撃ち合い。

 周囲の空間を歪めながらも、両者は一歩も譲らずに交戦を繰り広げておりました。


「私も助太刀致します」

「助かる」


 私とナルさんは同時に切り込みました。

 脳内に、声が響きます。これはジョアンさんの声でございました。


『どうせ、お前は何も救えないじゃんか。もう諦めろよ』

「煩いですね」


 一言で切り捨てて、私はバーガーを口にします。これで洗脳のスキルは無効化できます。


「相性が悪過ぎるじゃんか」


 トートさんがジョアンさんの顔面を強かに打ちつけました。


 彼女は地面を無様に転がっていきました。

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