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思い出せ

 土礫の嵐の中を私は無傷で駆け抜けました。まあ、発生源が私ですから当然の結果でございますよね。


 しかし、私にとっての当然も、相手にとっては十分な程の未知。

 驚く勇者様のハーレムのお一人へと、追加でバーガーを放ちます。生み出したバーガーをトートさんで打ち出すのです。


 これだけバーガーをばら撒いたのです。戦後の食事が楽しみになりますね。

 辺りは、バーガーの素晴らしい匂いで満ちつつあります。

 素晴らしいことですから、どんどんと追加注文致します。


「この匂いは……」


 虚ろな目に少しばかりの光を灯して、ナルさんが反応なさいます。なるほど、匂いにも、効果量は落ちますが回復能力があるのですね。


「召し上がれ!」


 トートさんが瞬く度、バーガーが飛来する度、悲鳴が上がりました。

 失礼な方々でございますね。


「ちっ! キリがないね。俺が魔法を詠唱するから、時間を稼いでおくれよ!」


 ハーレムの方々へと指示を出して、勇者様は詠唱を開始なさります。

 お口がガラ空きでございますよ。と、私はトートさんを使わずに、己の手でバーガーを投げつけます。


 一つはハーレムの方に防がれましたが、もう一つは袋から飛び出した剥き身の状況で勇者様のお口に侵入しました。


「むが!」


創造せよ、至高の晩餐(メーカーオブマグナト)』は食べること以外のあらゆる干渉を無効化致します。

 ガッチリとバーガーを銜え込んでしまった勇者様は、もうバーガーを召し上がるしか道はございません。


 勇者様は慌てたご様子で、バーガーを吐こうとしておりますが、口内にバーガーがぎっしりと詰まっており、それができずにおりました。

 勇者様の小さなお口には、あの「グランデマグナト」は少々大き過ぎましたかね。


「ミーア様!」


 ハーレムの方々が勇者様へと駆け寄り、背中をさすり始めます。戦闘中の動きとは思えませんね。


 私はどちらかといえば、近接パワータイプ。


 油断をしていますと、


「さようなら」


 背後からハーレムの方へ。

 トートさんにて薙ぎ払いを行います。痛いでしょうけれども、まあ、我慢してくださいませ。

 仕掛けてきたのは、元はと言えばそちらでございますからね。


 嘘のように吹き飛ぶハーレムの方の姿は見ずに、今度は勇者様へとトートさんを振るいます。


 それは剣で弾かれますが、勇者様は私の蹴りを警戒するあまり、本気で剣を振るえていなかったようでございますね。


 強化されたトートさんの威力は、数倍となっておりました。


 剣に、亀裂が走ります。


 その状態で踏み込みますと、剣が豆腐のように切断されました。


「ーー」


 勇者様は絶叫をお上げになりますが、バーガーによって面白芸能人のリアクションのような声しか発せません。

 また、バーガーで口を防がれることによって、詠唱も行えませんね。


「どうして召し上がらないので? まさか、毒でも入っていると?」


 勇者様は吐き出そうとしこそすれ、飲み込もうとは致しません。疑われるのは不本意ですね。


「御安心下さい。毒は入っておりませんよ。それにどうせ飲み込まなければ、勝ち目もございませんよ?」


 このままではジリ貧でしょうからね。


 意を決したように、勇者様はバーガーを一飲みしました。あれでは味がわからないでしょうに。

 実に勿体無い。


創造せよ、至高の晩餐(メーカーオブマグナト)』によりダメージを回復した勇者様が、私へと新たな剣を向かわせます。

 その数は一本ではなく、二本。


 二刀流。


「はっ! 二本の刃、対処できるかい!」

「トートさん!」


 対処する?

 御冗談を。


 私は勇者様の足元に大穴を開けて、彼女を奈落へと突き落とします。無論、攻撃はハズレました。


「対処するのは貴女様の方でございますよ?」


 穴に落ちながらも、勇者様は諦めた御様子はございません。寧ろ、好戦的に牙を剥き出して、


「行くよ。『轟け、雷霆の跫音よ(アクセル・エピック)


 呟きと共に、勇者様が宙を駆け出しました。


「何と!」


 目にも留まらぬ速さで地上に現れますと、光速で言葉を紡ぎます。

 それは詠唱。


 炎の魔弾が放たれました。


 私は転がるようにして、その火球を避けました。が、その回避先には、既に勇者様が待ち受けていたのでございます。


「俺はミーア・クローバーだ!」

「存じ上げておりますよ」


 辛くも、バーガーの盾で剣撃を防ぎました。衝撃で、身体が吹き飛ばされます。


「俺はミーア・クローバー。英雄の娘じゃない! ミーア・クローバーだ!」


 勇者様は錯乱されているようですね。まさか、スキルの反動でしょうか。

 目にも留まらぬ速度を実現しておりますが、あのスキルはあまりにも速すぎます。人体では耐えられないのではないでしょうか。


 血飛沫を上げながら、勇者様はこちらへと突っ込んできます。速過ぎて見えないので、トートさんによって周囲に土の壁を作り出します。


「後手に回っておりますね」


 私が感想を漏らしたのと、新たな攻撃が放たれたのはほぼ同時でございました。


「思い出せ。『可愛い私のお人形(ナイトメア)


 壁の外側。

 勇者様のハーレムのメンバーさんの声が聴こえました。これは女性の声。

 ジョアンさんのモノでございました。


 直後、私の意識は闇に飲まれました。

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