表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/116

私が勝てば

わたしも早く、勇者様の元に帰りたいので丁度良いですよ」


 言うのは、勇者様のハーレムメンバーさんであるジョアンさんでございました。

 彼女は実に軽い足取りで、一気に駆け出しました。その速度は圧倒の一言。


 わたくしは唖然としてしまい、遅れてしまいます。

 そのような情けない私を叱咤激励してくださるのは、マグさんでございました。


「今、青方を止めれば独り占めできる。けど、それはつまんない」

「おや」


 ぽん、っと私はマグさんの頭に手を置きます。ナデナデでと手を動かします。


「成長なされましたね」


 彼女が頑張っているのです。私が何もしない訳には参りませんね。


「さあ、来てください。『創造せよ、至高の晩餐(メーカーオブマグナト)』」


 私、バーガー、丸齧り。


 肉体に漲るバーガーパワーに背中を押されながら、私はマグさんを抱き上げて地を蹴りつけました。


 一息で、ジョアンさんに並びます。


「速いですね」

「ええ」

「ドラゴンを倒したと、戯言を仰るだけの実力はおありなんですね」


 言葉を無視して、私はただ駆け続けます。今の私で、果たして勇者様に勝利できるのでしょうか。

 一度、あそこまで惨めに敗北していると言いますのに。


 いいえ。

 何を恐れる必要がございましょうか。

 ナルさんは私の為に、勇者様の所へ行ってしまったのですから。


 責任。

 などと言いますと、少々冷酷に聞こえるかもしれませんね。


 ですから言い換えましょう。

 私はナルさんが好きです。もちろん、女性としてではございませんよ。

 友人として、大好きなのでございます。


 好きな人を助けたい、そう思うのは当然でしょう。そこに恐れなど、一欠片もございません。

 ただ、あるのは彼女を助けたい一心のみ。


 怖いなんて思いません。

 彼女を助けたい。私はただそれだけのことの為に、どこまでも強くなれます。


 お客様の、友人の笑顔を守るのはマグナト店員には必須スキルでございますからね。


 勇んで走ります。


「ここは何処ですか?」

「ミリアム湖、周辺ですね」


 ミリアム湖、でございますか。当然、耳にしたことはございませんね。

 湖。


 何がいるのかは不明ですが、どうして勇者様たちはこちらにいらしているのでございましょうか。


「着きました」


 ジョアンさんが指差す方向に、勇者様たちはいらっしゃいました。


 我々を見て、にやりと笑みを浮かべております。その表情は、あまり好きになれないものでした。


 ミリアム湖。

 美しい青の空に、湖の水が反射して輝いておりました。きらきら光る飛沫を上げるのは、小さなお魚様たち。


 そのような爽やかな湖を背後にして、勇者様ミーア・クローバーさんは両腕を大きく広げておりました。

 まるで、自慢の玩具を見せつけるかのように。


「よく来たね。来る……とは、何となく思っていたけれどもね。さあ、そこの魔界族ちゃんを賭けて、し合おうか。今度こそ」

「ええ。受けて立ちます。今回は私が勝った場合の条件も提示しましょうか」


 私が望むことはただ一つ。


「私が勝てば今後一切ーー人の嫌がることをしてはいけませんよ!」


 さあ、それでは決闘を開始しましょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ