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嫌な予感がする

 ロズマリオの花はあっさりと発見できました。真っ赤な鮮血のような色を持つこの花は、鮮血花とも呼ばれている。と、この植物図鑑には記載されております。


 この本、表紙こそ最悪ですが、内容はかなりしっかりしております。

 名前の由来や生息地、効能や最低価格などなど。挙げればキリがないほど、この図鑑は植物について詳しく書かれておりました。


 ですから、当然かなりの分厚さを保有しております。だというのに、値段はお手頃。価格崩壊ここにあり、でございますね。


 表紙さえなければ、最高の本の一つでございましょう。そう、この表紙の所為で、内容がどれだけ素晴しかろうと苛つきの原因となりますね。


 現に、ナルさんは自らの唇を強く噛んでおりました。血が唇から滴り落ちる、その高貴な雰囲気からまるで食後の女吸血鬼のようでございました。


「何だよ、この本。妾は悔しいぞ」

「同感ですね」


 私たちは同意しあっておりましたが、マグさんだけは便利だからそれで良いというスタンスでございました。

 大人。

 おっとなー、でございますね。人として負けた気分ですが、マグさんに負けるのならば許せますね。


「で、この花はどれくらい持っていく?」

「そうですね。できるだけ沢山ですけれども、あまり欲張ると帰りが大変ですしねぇ」


 困りましたね。


 それに、今回の御目当てはこれだけではございません。キャビの花も持っていかねばなりません。

 というよりも、そちらの方を多く持っていかないといけませんね。


 許して頂く対価ですから、収入だけを優先すれば、当然これからの人間関係は上手くいかないでしょう。


 私はギルド都市ラピーセルにお店を開くつもりなので、近い将来には隣人となるお方でございます。仲良くしておきましょう。


 ということで、キャビの花を探します。図鑑によれば、毒々しい見た目のお花さんでした。


 目立つ筈なのですけれども、何処にも見当たりません。鋭い視覚と嗅覚をマグさんでも見つけることができずにいました。


「図鑑には何と?」


 何かを見落としているのかもしれませんので、私はナルさんに図鑑を確かめて貰うことにしました。

 彼女はパラパラと本を弄びます。


 キャビの花の説明だけで、ページを跨ぐようです。執念すら感じさせますね。怖いです。


「ふむふむ。気になるのはここくらいかな」

「何処ですか?」


 ナルさんは私にページを見せてくださいますが、文字が読めないので返答のしようがございませんね。


 私が朗らかに笑みを返しますと、ナルさんは察したようで謝罪してくださいました。そこまではしなくても良いのですが。


「君次、店を作るなら文字も覚えた方がいいんじゃないか? 妾が手取り足取り教えてやるぞ」

「それは助かりますね。マグさんも御一緒でよろしいでしょうか?」


 マグさんも字を覚えると効率的でございます。文字は大いなる発明ですからね。


「まあ、除け者にするつもりはないけど。わかった。マグにも文字を教えよう」

「それは助かりますね。で、そこには何と?」

「ああ、キャビの花はドラゴンが好んで食すらしいぞ。量は少ないが、ドラゴン共の味覚的には最高のおやつらしい」


 ドラゴン、ですか。

 そういえば、ラピーセルはドラゴンに襲われてかなり町並みを破壊されたらしいですね。


 本当にドラゴンが実在するのならば、興味深いことでございます。是非とも、目にしてみたいものですね。


 私、男の子ですから。

 ドラゴンなどには強い憧れを心のうちに秘めておりました。


「……青方」

「どうしたのですか、マグさん」

「嫌な予感がする」

「奇遇でございますね。実は私もなのですよ」


 もしや、我々結構危険な依頼を受けてしまったのではないのでしょうか。

 というよりも、どうしてドラゴンの好物を道具屋さんが求めるのでございましょうか。


 そのようなものをお店に置いておくから、ドラゴンさんがいらっしゃったのではないでしょうか。


 ドラゴンの好物ということは、でございますよ? ここにはよくドラゴンが現れるということなのではないでしょうか。


 前言撤回します。

 私、ドラゴンを一目見たくありません。


「すまん、君次。妾がいるということは……」


 嫌な予感は的中するものでございます。


 我々の足元を覆うように、無数の巨大な影が出現したのです。


 そうーードラゴンの登場でございました。

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