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それも冒険者のお仕事なのさぁ

 血液が滴り、差し出されたカードを濡らしました。我が血液に呼応して、カードが光り輝き始めます。


 その光景に見惚れているうちに、その儀式的なものは終了してしまいました。

 光が払拭された後、そこに残ったのは紅蓮に染まったカードのみでございました。


「これがギルドカードでございますね?」

「あぁ」

「我々もギルドのお仕事を合法的に回して貰えるわけです」


 お金さんもどんどん私の懐を温めてくださることでございましょう。楽しみでございますね。


「善は急げ、と申します。一攫千金を狙いましょう!」

「それは無理なのさぁ」


 私の目標を耳にしたと同時に、クオッタルさんは口出しをしてくださいました。

 面倒見のよろしい方でございます。流石は我がライバル。


「どうしてでしょうか?」


 ランクが足りてねぇなぁ、とクオッタルさん。


 ランクとはなんなのでございましょうか。


「ランクっていうのは、まぁ冒険者としての格付けみたいなもんよぉ。六級から始まって、一級まであるのさぁ」

「格が足りていませんと、依頼が受けられないのでございますか?」

「当然。一々、冒険者を減らしても意味がねぇからなぁ」


 中々良心的な場所なのですね、ギルドとは。


「登録したての奴は、第六級からスタート。六級の仕事はほぼ素人でもできるやつさぁ」


 そう言いながら、彼は懐から質のよくない紙を取り出しました。そこに書かれているのは、何でしょうか。私、字が読めませんので。


 ナルさんが代わりに読んでくださいます。


「魔物ゴブリンの討伐。数は五体につき、千メルカ」

「それは高いのですか?」

「微妙だな。安い宿なら三人で一日過ごせる」


 過ごせる、というレベルなのですね。あまり惹かれませんね。

 宿代にはなるようですけれども。


 食費を気にしなくても良いのが大きいですね。


「他のお仕事はどうでしょうか?」

「薬草探しだな。これは中々。ロズマリオの花、一本あたり三百メルカだ」


 ナルさんのお言葉に、マグさんが反応しました。首をこてん、と傾げて口を少しだけ開きます。


「街の中で育ててないの?」


 確かに、そうでございますね。

 街の中で育てれば、早いお話でしょう。一々、専門家でもない我々が探しに行くよりも効率的でございます。


 そう思い、クオッタルさんへと視線を向けます。


「その薬草は精霊がいねぇと育たねぇのさぁ。この街には精霊が少ねぇからなぁ」

「なるほど」

「それに、だぁ。そのうち、もっとヤバい花だったり薬草だったりを集めて貰う。その予行演習。冒険者を育てる意味もあんのさぁ」

「以外とホワイトな企業なのですね」

「ホワイト? 意味はわかんねぇが、まあそんな感じだよ。良い場所じゃなきゃ、良い働き手は生まれねぇ」


 仰る通りでございます。私もマグナトに勤めていましたから、よくわかります。

 確かに、大変でした。


 タマゴなんて、もう面倒で面倒で仕方がない、と愚痴を言いながら働く方もいらっしゃいました。


 けれども、どのような手間も、お客様の笑顔が一つ見られれば手間にすらなりませんでした。


 よい環境でございましたね。


「わかりました。では、その薬草のお仕事を引き受けましょうかね」


 四本見つけてくれば、ゴブリンさんを五体倒すよりも収入が得られます。

 ゴブリンさんがどのような方々なのかは定かではありませんが、あまり積極的に生き物を殺したくもありませんしね。


 いや、ですが、もしもゴブリンさんが悪逆非道な方々でしたらば、マグナト店員として退治せねばなりませんね。



 世知辛い世の中でございます。私は皆で平和に笑い合い、マグナトを頬張り合いたいだけですのに。


「で、そのロズマリオの花はどちらにあるのでしょうか?」

「自分で調べなよ? それも冒険者のお仕事なのさぁ」

「そうでございますね。情報収集は自らの手でやらなければ、意味がございませんものね」


 もう依頼は始まっているのでしょう。

 情報収集も冒険者のお仕事の一つ。ただ人に頼るだけでは、いつか何もできなくなってしまいますからね。


「ありがとうございました。薬草はどちらに持っていけば?」

「ギルドの隣にある道具屋で買い取ってくれるさぁ。その依頼書の番号を見なよ」


 ナルさんが読み取ります。


「一二番だな」

「そう。その番号を道具屋に言って、その薬草を渡せば良い。紙は貴重だからなぁ。それ、返してくれ」


 システムは理解しました。依頼元へ直接届ければ良いのですね。


「その辺りのことは、その依頼書毎に書いているよ」


 ナルさんが依頼書を返却しました。

 クオッタルさんはこれからその依頼書をボードという場所に貼りに行くところらしいです。


 そのボードには、多種多様な依頼書が貼られているそうでございます。


 討伐系の依頼は、ギルドに参加届けを出すそうなので、被ることはございません。


 それにしても、中々複雑で大変ですね。覚えられないかもしれません。


 やはり、お金を得るのは大変です。私、少々辛くなってまいりました。

 お金。


 うわあ。

 嫌なことはマグナト商品を食べて忘れてしまいましょう。


 ギルドから出て、私は早速バーガーを口にしました。

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