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グーとバーガー

 お花を摘みに行く為に、わたくしとマグさん、そしてレイアくんは山道を歩きました。


 そろそろナルさんが気になって来ましたが、まあ彼女は強いですから滅多なことはないでしょう。


 ということで、足を動かし続けます。

 そのお花が咲いている場所はかなり近場であり、私が足を痛めずに済みました。


 そこは洞窟でありました。


 丸い岩の中央に穴が開いていて、どうやらそこから中に侵入せねばならぬようなのでございます。


 丸く、中央に穴のあるモノといえば、あれを思い出します。我がマグナトのライバル店の一つ。


 ミセスドーナッツでございますよ。あそこのマスコットキャラであるポンポンタヌキには多数の苦渋を舐めさせられてきました。


 ケターキーレベルの脅威でございましたね。


 さて、この奇妙な洞窟でございますけれども、魔界族の方々曰く、『勇気の洞穴』らしいですね。


 中々に素敵なお名前でございます。


「ここはどうして『勇気の洞窟』と?」

「知らねえ」

「当たり、強くありませんか?」


 レイアくんは酷い方ですねえ。まあ、彼はまだマグナト商品を召し上がっておりませんので、私をお舐めになっている節がおありでございます。


 私たちが取りに行くお花は本来、レイアくんたちの御両親が自ら採取しに行く予定だったようなのです。


 しかし、この花を採りに来る前に殺害されてしまったのです。彼らの御両親は狩人だったようですけれども、そこまで危険な場所ではないでしょう。


 私もマグさんもいらっしゃいますしね。

 と言うわけで、我々は勇んで『勇気の洞穴』に足を踏み入れました。


 じゃり、という耳に残る不快な音が鳴ります。下は砂利なのでしょうか。

 確認することもままなりません。


 何故ならば、真っ暗だからです。

 私が困っていますと、マグさんとレイアくんが悲鳴を上げました。


「どうしたのですか?」


 確認の為に、私は『創造せよ、至高の晩餐(メーカーオブマグナト)』を発動しました。

 そして、スキルの効果によってバーガーを包む紙を光らせました。


 そうして発見致しました。

 じゃりじゃりという音の正体。


 それはーー小さなビー玉のようなものでした。目を凝らして見ますと、その中には何かうにょうにょと蠢く影がございます。


「マグ、帰りたい」

「これは何ですか?」

「ウグーの卵だと思う」


 ウグーとはなんなのでございましょうか。まあ、宜しいでしょう。

 ウグーの正体はともかくとしまして、あまりにも危険ならば逃げることも必要でしょうからね。


「レイアくん、ウグーは危険ですか?」

「あいつらは危険じゃない。だけど、俺は嫌いだ。だって、こいつら」

「お花を採れないくらいですか?」

「……行こう」


 レイアくんは決意して、前進を開始しました。御両親の為に嫌いなものに立ち向かえるとは、良い子でございますね。これでももう少しマグナトが好きなら完璧なのですけれども。


 更に奥に進みますと、大きな広間に出ました。天井や地面には、水晶が生えております。普通でしたら、綺麗だと感動するのですけれども、やはり水晶の中には何かが蠢いております。


 嫌悪感が湧きますね。


「お花はどちらに?」

「……」


 無視されます。むー、じゃあよろしいですよーだ。私はマグさんがいますからね。

 貴方様が私を無視なされるのならば、私はマグさんとの仲を深めておくまででございますよ。


「マグさん、昨日の夕ご飯は何を食べましたか?」

「グーとバーガー」

「昼ご飯は?」

「グーとバーガー」

「……朝は?」

「グーとバーガー」


 これはこれは……私ならば無問題ですけれども、マグさんにはキツイのではないのでしょうか。


 まあ、バーガーはたくさんの種類がありますから、そうそう飽きはきませんがね!

 私なんて、十三歳の時に初めてマグナト商品を食べてから、毎日マグナトでございますよ。申し訳ありません、見栄はりました。嘘でございます。


 しかし、私にとってマグナトとは、それくらい食べていても不自然ではない程に、命の源なのでございます。


「マグさんは他に何か食べたいものはございますか?」

「……青方」

「まさかのカニバリズム!」


 私、もしかして嫌われています?


「マグは青方がくれるなら、何でもいい」

「信頼が凄まじいですね」


 ここまで信頼されますと、申し訳なくなってまいりますね。

 マグさんはお客様でございます。ですから私は命に代えても、彼女の信頼を裏切る訳にはいきません。


 また、新たなお客様であるレイアくんのお姉様の期待も裏切れませんね。必ずやお花は手に入れて見せましょう。


 マグナト店員に掛かれば児戯にも等しいことなのですよ。

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