表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/116

 ナルさんが物理的に食べられてしまいました。いくら魔王といえども、水の中で魚には敵いません。


 ナルさん、呆気ない最期でございましたね……などと言っている場合ではございません。


「来てください。『創造せよ、至高の晩餐(メーカーオブマグナト)』」


 召喚せしは大量の揚げ芋でございます。私の能力の前では、マグナト商品は無敵の力を有します。

 食べる以外のあらゆる干渉から外れた存在を創造できるのです。


 今回、私は必死に揚げ芋を結んでいきます。一つ一つは短くとも、繋げれば立派なロープとなります。

 それに食べるときに、一気に食べられて中々爽快そうです。これは助けた後の実食が楽しみですね。


「青方、多分それ無理」

「ど、どうしてでございますか?」

「できる前に、消化」


 失念しておりました。

 存外、私は動揺しているのかもしれませんね。認めましょう。


 ですが、言い訳をさせてください。川の主さんが想定外な程に巨大だったのです。

 私、ゲームなどでは水ステージが苦手なのです。言い知れぬ恐怖感があります。


 水中にて巨大生物さんを発見した暁には、もう心内阿鼻叫喚でございましょう。


「で、ではどうしましょうか!」

「メルセルカよ。取引をしよう」


 主さんの声でした。彼は私の動揺を知ってか知らずか、とても重厚感ある声を放ちました。怖いです。


「我が娘を無事に渡すなら、この今食べた女は助けてやる」

「あ、この方は娘さんだったのですね」

「美人だろう。やらんぞ」


 美人、ではないですよね。美魚でございましょう。まあ、その美魚らしいお顔は白目を剥いて、口をパクパクさせておりますけれど。


「了承致しました。では、先に娘さんをお渡ししましょう。マグさん」

「了」


 マグさんが主さんの娘さんを掴みますと、そのまま投げました。盛大な音を立てて、主さんの娘さんは沈んでいきます。


「娘を大切に扱え!」

「ささ、ナルさんを返して頂きましょうか」

「ふ、甘いな。すでに胃の中だ! 消化してくれるわ」

「話が違うではありませんか!」


 私の憤りも無視して、主さんはガハガハと下品に笑います。酷い方ですね。


「この鬼! 悪魔! 魔王! 魚!」

「誰が魚だと!?」

「やーい、やーい、貴方様のお母様エラ呼吸!」

「くっそ! 何の反論もできない」


 我々が高度な舌戦とそれに伴う心理戦を繰り広げていますと、隣でマグさんが欠伸を漏らしました。


「ナルがこの程度で死ぬ訳ない」

「そうですけれど。不運からお助けする約束でございますから」


 もういっそ、私も川に飛び込みましょうか。少々荒々しい解決策とはなりますが、バーガーパンチを食らわせれば吐くでしょう。


 私の拳はバーガーのように美味しくはありませんよ。


「覚悟なさいませ、主さん!」

「来てみーーっ!?」


 主さんが目をぎょろりと見開きます。主さんは焦燥に駆られた様子で、自らのお腹を見やります。

 何があったのでしょうか。


 凝視しておりますと、突然閃光が瞬きました。それはナルさんが使用した魔法でした。


(イービルゲート)』でございました。それは上空ではなく、土の中に現れました。


 土の中にいる。


 ナルさんが下半身を土に埋めながら現れました。彼女の髪には胃液でしょうか。謎のネバネバが付着しております。

 ただでさえ整えていなかった髪が、更にぼさぼさになってしまいますね。


 ですが、格好だけは楽しそうです。海に行ったら、こういう方いらっしゃいますものね。


 ナルさんが人生を謳歌しているようで幸いでございます。


「主さん、魔界族さんたちが魚が獲れないと嘆いておりましたよ?」

「知ったことか。この川の生態系に、魔界族は関係ない」

「確かに」


 魔界族さんたちに都合がありますように、お魚さんにも都合があるのでございますね。私は何と考えなしだったのでしょうか。


「むむむー」

「青方、全部を救うのは無理、と思う」

「無理かもしれませんけれど、諦めたくはありませんね」


 マグナト店員ですからね。

 幸せをーー届けに来たぜ。というところでしょうか。


 ですが、魔界族さんも主さんも救う方法などあるのでしょうか。両者ともにお魚さんを食べているようですが。


「そうです! 養殖しましょうよ!」

「養殖? どうやって?」

「私の力を使うのですよ」


 私は現代知識でチートはできません。けれども、我が『創造せよ、至高の晩餐(メーカーオブマグナト)』はすでに何よりものチートでございました。


 知識?

 そのようなものは不要なのでございます。


 この世のことは大抵、マグナトバーガーでどうにかなるのですよ。


 さあ、私の力をお見せしましょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ