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第二話 山賊

 歩いて十キロ、時間にして三時間程で街にはつく予定......だった。歩き出して十分ほど私たちは足を止めざるをえない状況に陥っていた。別に道に迷ったりしたわけではない。しかしある意味それよりも大分質が悪い状況ではあった。



「そこで止まりな」



 森の中の開けた部分の真ん中あたりを歩いていると突如どこからともなく声がした。そして私たちが止ままるとそれを囲むように周囲の木々の中から合計十人ほどの男たちが現れた。



「何かようか?」



 リーネを私の陰に隠すようにしながら尋ねる。我ながらわかりきったことを聞く。



「なに別にややこしい話じゃねぇ。この森を無事通りたかったら俺たちに通行料を払わなきゃなんねぇ。そういう決まりなんでな」



 男たちの中からリーダー格らしき男が出てきて予想通りの返答をする。それでも一応聞き返す。



「ここはお前らの私有地なのか?」

「ああ。この森は俺らウェルプスの縄張りだ。分かったらさっさと有り金とガキを置いてきな。ガキはまだ小せぇが......なにそういう趣味の奴になら高値で売れるだろう」



 その男の台詞に呼応するように男たちの中から下卑た笑い声がする。どうやらあの中には私と違って幼女愛好者や幼女趣味者がいるようだ。絶対にリーネを守らねばならないな。



「悪いが山賊に通行料を払うわけにはいかない。黙って通してくれないか?」

「そうかい、それなら通行料を値上げするぜ。追加料金は......お前の命だ!!」



 リーダーの男がそう叫ぶと同時に私たちを囲んでいた男たちが手に武器をもち襲いかかってきた。



「あまり私のそばを離れるなよリーネ」



 斜め下から僅かに頷いた気配がしたのを確認してから腰の剣を抜く。



「ヒャッハッー!!」



 奇声をあげながら一人の男が斧を振り下ろしてきた。私は降り下ろされる斧をサイドステップで避ける。そして斧を振り切った瞬間を狙って手首の腱を切る。



「う、腕がぁ!?」

「こいつ!」



 私が斧男を切りつけた瞬間に今度はダガーを持った男が懐に飛び込んできた。私の隙を狙っていたのだろう。その薄い気配と武器のダガーから見て元暗殺者か何かかもしれない。



「もらったっ!?」



 ダガー使いが私の胸にダガーを刺す直前、私とダガー使いの間にジャンプでリーネが割り込んできた。私の胸を地面に見立てて立ったリーネは、手に持つナイフでダガー使いのダガーを止めて鍔迫り合いをする。



「舐めるなよガキが!!」



 リーネの小さな体を無理矢理吹き飛ばそうと力を込めるダガー使い。もし

リーネが立っていたのが地面や空中だったらあっさり吹き飛ばされていただろうがリーネは私の胸に垂直に立っていた。

 当然私にはもろにダガー使いが加えた力がかかる。しかしその程度の力では私は小揺るぎもしない。



「グハッ!」



ダガー使いの力が弱まった瞬間右手のナイフでダガーを受け流し左手のナイフで相手の首を切り裂くリーネ。結構な血が首から流れているが死ぬことはないだろう。



「てめぇら囲め!!」



 瞬く間に二人の仲間がやられたことに、危機感を抱いたリーダーが大声で指示を出す。リーダーの指示に従い二人減った八人で私たちを囲もうとする山賊たち。その包囲網が完成する前に私は正面にいた三人の山賊に向かって走り出した。


 包囲網が多対一で有利なのは一人と戦っている間に後ろから攻撃できるからだ。なら飛び道具がない現状背中に敵の攻撃が届く前に正面の敵を倒せれば包囲網の有利はなくなる。まあ言うは易し行うは難しという言葉もあるが少なくとも私には、



「言うは易し行うも易しだ!」



 有言実行一人一振、合計三振りで敵を切り捨てる。勿論殺してはない。これで後五人。


 正面の三人を倒した私は反転しつつ元の位置に戻る。私の向きが百八十度変わった時、謀ったように目の前に二人の山賊が。事実謀ったのだが。


 私は先程と同じように剣を振る。しかし今回は一人一振とはいかず片方の男が粘る。その間にリーネが少し離れたところにいた山賊と戦い始める。


 私と今斬りあっている相手は片手剣に木製の盾とオーソドックスながら隙が少ない。あくまで少ない、だが。私の剣での攻撃を片手剣つか使いは落ち着いて盾で防いでいく。このままやっても倒せるがまだ山賊が残っているので素早く倒すことにする。


 先程と同じように剣で攻撃をしてそれをまた同じように片手剣使いが盾で防ぐ。そしてまた剣で攻撃――はせずに左手で相手の盾を殴り付ける。片手剣使いは訝しげな顔をしつつも反撃のチャンスと見て盾と一緒に剣を構えた。


 しかしその剣が本来の役目を果たすことはなかった。なぜなら私が左手で殴った盾は片手剣使いの予想に反して私の拳によってぶち抜かれたからだ。



「そんなっ!?」



 相手の動きが余りに予想外の事態に止まる。そしてそれはこの上ない隙となった。


 私が片手剣使いを倒したのとリーネが山賊を倒したのはほぼ同時だった。残っている山賊は二人。リーダーとその手下だ。リーダーは左、手下は右にいる。私よりも先にリーネが動く。仕方なく私はリーネとは反対側、つまり右の手下と戦う。見たところリーダーならリーネが負ける心配はないだろう。



 私が相手を倒し振り向くと丁度リーダーがリーネに腕を切り裂かれた瞬間だった。それは奇しくも私が一番最初に倒した斧男の再現のようだった。腕を切られ武器を持てなくなったリーダーは両手を上げて命乞いを始めた。まあ元々殺す気はないのだが。しかしリーネにはそんな気はないようで手に持つナイフでリーダーの首を切り裂く......直前ナイフの刃を手で握りしめ止める。リーネが顔を上げて私を見た。何も映していないその目で。



「君が殺すべき存在は他にいるだろう」


 

 数秒間私と彼女は目をあわせ続けた。先に逸らしたのは彼女のほうだった。

 ナイフに入れられていた力が消える。私は一度ナイフを取り上げたあと血を一滴残らず消し彼女に返した。リーネは下を向いたままナイフを受け取った。私にはその表情をうかがい知ることは出来ない。


 そこまで行ったあとリーダーがまるで動かないことに疑問と危惧を持ち足下を見る。






 結論から言うとリーダーは恐怖のあまりか泡を吹いて気絶していただけだった。私は山賊たちの武器を取り上げ死なない程度に傷を治療して木に縛り付けておいた。彼らが助かるかどうかは自身の運次第だ。

 

 その後は特にトラブルもなく無事街に辿り着くことができた。

ルビはその話で一番最初に出た時だけ振ります。


評価と感想待ってます。



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