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第一話 朝食

全十二話で予約投稿済みです。午前九時から始めて一時間に一話投稿。午後八時最終話投稿です。

 ガサッ


 テントの中に僅かな音が響く。それは常人なら気付かないようなホンの僅かな音だ。例え気付いたとしても特に気にしないような音。しかしテントの主はその僅かな音に気付き素早く起き上がった。

 飛び起きた男の腰の上には音の発生源である七歳程の白髪赤瞳の美少女が跨がっていた。



◇◇◇



 私が気配に気付き起きると予想通りの光景があった。私の腰の上に乗っている少女の名前はリーネ。とある事情から私と二人で諸国を旅している。断じて言っておくと私は幼女趣味者でも幼女愛好者でも絶対にない。



「おはよう。重いから退いてくれるか? 」



 一応こうは言ったものの、こういった時にリーネが私の言うことを聞いたことはない。なので話しかけるとほぼ同時に腕をリーネの脇の下に持っていきまだまだ軽い彼女の体を持ち上げる。


 あっさりと持ち上げられたリーネは無表情の中にどこか不満そうな色を浮かべているように見える。......いや、おそらくそれは私の願望が見せている幻覚なのだろう。リーネは今日も無表情無感情だった


 外に出るとまだ日は出ていないようで薄暗い。しかし私は夜目がかなり効くので特に不自由なく見ることが出来る。



「朝食を捕りに行ってくる」



 まだテントの中にいるリーネに一声かけて朝食を捕りに行く。当然ながら返事はない。


 私たちが野営をしていたところから少し離れた所に一羽のフクロウが倒れていた。私はなんの苦もなくそれを捕まえる。このフクロウは当然だが偶然ここに倒れていたわけではない。私が昨晩のうちに仕掛けておいた罠に引っ掛かったのだ。


 フクロウを捕まえた私は早足でテントに戻る。私がいない間に彼女になにかあったら事だ。


 しかしその考えは杞憂だったようで、テントに戻るとリーネは既に外に出てナイフを振っていた。彼女の毎朝の日課である訓練だ。


 ナイフの軌道は少しだけ、だが確実に昨日よりも速く、そして鋭くなっていた。私が追い付かれる日も近いかもしれない。最もそれは私が強くならなければの話だが。


 リーネは私が戻って来たのに気付いただろうが、ナイフを振るう動作を止めようとはしない。勿論私もそれを咎めようとはしない。


 捕ってきたフクロウの血を抜くために首を切り木に逆さにして吊るしておく。その気になれば一瞬で血を抜くことも出来るが今回はやらない。血が抜けるのを待つ間に他にも料理を作るからだ。


 量だけで言ったらフクロウ一匹でリーネは勿論私の腹も膨らむだろう。それだけ立派なフクロウだ。しかしそれだけでは栄養が足りない。私は平気だが育ち盛りのリーネはしっかりとバランスよく栄養を摂らねばならない。


 バックの中からいくつか薬草を出す。これらの薬草は傷薬としても使うことが出来るが料理にいれても栄養満点なのだ。これをシチューなどの具材にして食べれば風邪などに掛かりにくくなる。私が尊敬して止まない人類の知恵の一つだ。


 リーネの訓練が終わるまでに作り終えておきたいので手早く準備する。薬草が入っていたのとは別のバックの中から白い液体が入った大きな瓶を取り出す。瓶の中身は昨晩の夕食の残りであるシチューだ。先に火に掛けておいた鍋の中にそれを入れる。続いて細かく刻んだ薬草を投入。よくかき混ぜる。


 シチューを温めている間に血抜きが終わったフクロウを捌く。内臓、特にレバーは栄養があるので傷つけないように切り取る。そして血抜きでは落ちきらなかった血を綺麗に消す。


 その後も段取りよく料理を作っていきなんとかリーネの訓練が終わる直前に出来上がる。皿に取り分けようとバックの中に手を入れた瞬間さっきまでリーネが振っていたナイフが私目掛けて飛んできた。一本は顔、もう一本は腹に向かって。


 私は飛んできたナイフに落ち着いて対処する。腹に飛んできたナイフはバックに入れているのとは反対の手で取る。顔に向かって飛んできたのは歯で挟んで止める。歯で止めたナイフを手で取るとき心のなかで思う。


――一ミリ――


 ナイフの持ち手は彼女の汗で濡れておりベトベトだ。非常に滑りやすい。私は皿と一緒にバックから出した布をリーネに渡す。二本のナイフと一枚の布を受け取った彼女は私の正面に座ると黙ってナイフの持ち手を拭き始めた。私も黙って彼女と私、二人分の料理を皿に取り分ける。いつもと変わらない光景だ。


 食事は二人とも一言も話さないという一種異様な光景だった。しかしコミュニケーションがまるでないわけではなくリーネはお代わりが欲しいときは私に皿を差し出し、私はそれに答えて、彼女が頷くまで料理を盛る。私にはそれで充分なのだ。



 食後今日の予定を話し合う。話し合うと言ってもリーネが喋ることはなく一本的に私が話しそれにリーネが頷くといったものだ。



「ここから歩いて十キロ程の場所にある街に今夜から暫く泊まる。リーネは初めてかもしれないが私は何回も来たことがある街だ」



 最も私は殆どの街を一度は訪れたことがあるのだが。今からいく街では私にとって生命線とも言うべき物を補充する。それを作れるのは極少数でその内の一人がこれから行く街にいるのだ。ここから街まで三時間ほどだ。すぐに着くだろう。


果たして何が一ミリなのか。


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