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二人二声之影Ⅱ外伝 scarlet mystery   作者: LAR
1章 学園に潜む悪霊
9/58

1-8 1VS1の裏

黄泉校屋上前/風魔空間

千博と大男は、風が吹き荒れる空間にいた。

地面と呼べるものがなければ床もない。

しかし、地に着く足は確かに何かを踏んでいる感触はあるようで。

千博も大男も、ちゃんと平行に向き合えていた。

「さあ、純粋な殺し合いの始まりだ…が、自己紹介がまだだったな、エルミス=シャフナ=ハルトィウムだ、ハルトと呼びな!」

今の時であっても、腕を組んでいる。

ガタイの良さと、その身長の高さは、一般的に考えれば並外れている。

どこかのオリンピックの選手でもやっていたのだろうか?と聞きたいところだ。

「神月千博だ、神の月に千の博を持つ意味だ」

千博の自己紹介は哲学的な言い方を含めたものだった。

当然ながら、この言葉に意味はない。

「フン、いい答えだ。だが手加減はしないぞ。ここは風魔空間、風に上手く同調しないと、俺は倒せやしないぞ!」

そう言うと、突如としてハルトの姿が遠ざかっていく。

「風の力、聞いたことがあるな…と、すればお前は元忍びか?」

姿が見えなくなったハルト、だが千博はまるで戸惑うことはなかった。

「風に乗らずとも、お前の位置はなんとなくわかる…そこだ!」

何もない空間にただ吹き荒れる風の中から、千博が定めた場所にハルトはいた。

ちょうど70°といったところだ。

位置の分かっている千博は、迷いのない拳を振るう。

ボゴーッ!

「ぐおおっ!」

拳はハルトの右頬に直撃した。

千博の力に負け、そのまま吹き飛んでいく。

吹き荒れる風がハルトを流す。

効いているのかイマイチわからない。

姿が見えないハルトの声がどこからか聞こえて来る。

「やるじゃないか、位置がわかるとは」

声が終わると、千博の目の前にその大男が現れる。

「楽しめそうだなぁ!」

ハルトは術を唱える構えに入っていた。

それを見た千博に嫌な予感が走る。

「少し本気を出すぞ!」

威勢の篭った言葉だが、次の瞬間絶句するような現象が起きる。

「風魔忍法・砂尉駆乱波動サイクロンウェーブ!」

ハルトの提唱が終わった途端、そこかしこの地面から、巨大な竜巻が上がる。

それは空間の天井に着くように上がり、一度竜巻の中に入ってしまえば被害は免れないものになっている。

「チィ!」

千博は巧みに向かってくる渦をギリギリでよけ、軌道を上手く逸らしていく。

しかし見えているのは前方の渦だけだった。

全方位無差別に迫り来る竜巻の渦に千博は背後から触れてしまう。

「しまっ…ぐあああっ!!」

叫び上げる声も虚しく、竜巻は空間の壁のような部分に遮られるところまでしか出来ていない。

千博はそこまで打ち上げられるが、なんとか渦の中から身を脱する。

しかし、渦から脱出した千博の前に、ハルトが迫っていた。

慌てて後退しようと、バックステップをする千博の背後から、鋭利なる刃が…

ズシゥーーッ!


黄泉校屋上前/星夢空間

善之は星の降る空間に飛ばされた。

色取り取りな星々に魅了されそうだが、この星は全て手裏剣だ。

五刃手裏剣という、珍しいタイプの物だ。

おまけに空間自体に発してある光を反射することによって、まるで流れ星のように降っている。

辺りを見ましている善之から前方約4mほど離れた先にその者は現れた。

「俺の空間へようこそ、冬木善之君」

突然フルネームを言われたことに善之は動じる。

「あれ?僕を覚えていないのかい?」

青年は、不思議がるかのように善之に挑発してみせる。

今こうして見ると、善之とこの青年は殆ど年が同じのようにも見える。

「覚えていないのも無理はないかな、俺はキサラ=カーティン=テクロス、旧名は冬木善久。善之君、俺は君のお兄さんだよ」

「兄さんだって!?」

目の前の青年が確かにそう言った。

この身長が善之と同じくらいの者が兄?

そんなはずはない。

「おかしいですよ。僕の兄さんは、数百年前に死んで…それで僕が、はっ!」

そこまで言って善之は分かってしまった。

元は善之には重荷だった、神月家に使える使命。

それは本来、兄の善久が受ける予定だったものだと、

だとすれば、今この場にいるのは確かに兄さんと言える。

何故なら善之が仕えるようになったのは、ちょうど兄、善久が死んでそれほど間もない時。

いや、もしかするとすぐだったのかも知れない。

「俺はね、冬木家が神月家に使える理由を知ってしまったんだ。まさか、敵を欺かせるが故に自らが使役され全体を調査する。そんな使命感俺には重すぎたよ」

善久が一歩前に出る。

「善之お前は知らなかったからこれまで苦しまないですんだ。だからもういいだろ?さあ俺の元へお出で、たとえ死んでも、ここの呪縛が俺達を生かしてくれる」

そう言って、両手を広げた。

しかし善之には気付いていた。

その両手に黒光りするものがあるのを、

「小細工はやめにしませんか?貴方が本当の兄さんであったとして、どうして僕の邪魔をするのですか?」

善之は真剣な表情をしていた。

目の前の兄と名乗る者を信じてもいたし、敵としても見ていた。

「貴方が兄さんだというのなら信じます。ですがそれなら弟である僕のお願いを聞いてください」

善之の言葉に今度は善久が動じる。

こんなあっさり信用してしまう。

その善之に少し驚いていた。

「この空間から僕を出してください兄さん。兄さんが本当の兄さんなら、弟の言うことに従ってくれてもいいんじゃないんですか?」

しかし、善久は顔を俯かせ肩で笑い始める。

「結局、お前は人を味方するんだな。ならお前の頼みは聞けないな、ここで殺す!」

俯かせた状態から突如として善之の視界から消え気付いた時には、短刀を振りかざさんとしていた。

「所詮人に付くお前を兄弟だと思ったつもりはない。死ね!」

善久の腕が、不規則に伸びる。

「…!」

バックステップで避けるも、伸びてきた腕が善之を追い続ける。

心臓部を狙ってくる腕を、バック転をした足の蹴りで弾き返す。

「兄さん、どうして人を恨むんですか!?」

善之にオーラが漂い始める。

「俺に力を向けるのか、兄である俺に?」

善久の目にもオーラが篭る。

悪き力を放つところはやはり怨霊と化している今は本領発輝と言えるのだろうか?

「善人なお兄さんの演出は止めだ!いいよ、本当の兄を見せてあげよう」

善久のオーラが黒色に変化する。

邪気となり、それはこの空間にも影響を与え始める。

「怨霊は命ある者に厄を与える存在として知られる。だが、こういうのも悪くはないものだよ怨念の力を見せてやる」

善久の邪気が空間に幾つとある星々に執着して行く。

その星は善之に平たい方向を向ける。

「とても避けれる数ではないだろうけど、俺を兄と認めたせめてもの詞だよ」

一斉に星は先端を回転させ、善之に向かってくる。

それを見た善久は言う

「どうか安らかに…死ね」

星々が速度を上げて地に降り注ぐ。

軌跡までも残して地に突き刺さっていく。

「星采・砕葬撃!」

煌びやかに輝き、散る星は爆発を起こし無数の星々はガラスが砕けるように破片が散らばる。

「フッ、怨念の力を開放した俺に勝てはしないさ」

高笑いを繰り返す中、背後に気配を感じた善久は唖然とする。

勢いよく振り返ると、至る所に僅かな傷を負った善之が強く睨み迫っていた。

振りかざそうと上げている腕には降り注いだ中で上手く、手に取った一つの星の手裏剣。

「勝つ術がない能力なんてありません。兄さん貴方は甘い!」

ズシッ!

善之の渾身の一撃が今決まった。

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