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二人二声之影Ⅱ外伝 scarlet mystery   作者: LAR
5章 地球崩壊の序曲
56/58

5-8 変異

能力界の長が助けてくれた。

それは千博には全く想像できなかった事だった。

「どうして能力界が俺の救援に?」

「今の地球は様々な敵に狙われています、覚醒生物の異常発生、魔導境界と呼ばれる異人種の出現、そして未来からの刺客地球には現在で3つの大体が存在しています」

千博の言葉に隣にいた女性、鎖爛は幻想的な雰囲気を漂わせながら更に言葉を繋げていく。

「そして貴方やその仲間の身近にいる敵、地球政府代表もそのひとつです」

鎖爛の口から衝撃的な事が走る。

「なんだと!?ミハイル:ウィスキーンが俺達の敵だと言うのか?」

突然の驚声に入れ替わって滋が説明する。

「正確には偽物が存在していたのだよ。本物のミハイル:ウィスキーンを捕らえ、本物の様になりすましていたのだよ」

「なんだと…?だとすれば今回の件は、その偽物が原因だというのか?」

「いや、恐らく全く関係ないだろう」

「は?」

滋の言葉に千博は更にわからなくなってくる。

「1時間ほど前、能力界に天界から使いが訪れた。『地球に未曽有の危機が迫っている』とな」

滋と鎖爛は、天界から使者を連れてくるほどの事態を重く見て、人間界まで足を運んできたのだった。

「先程この町の議事堂から地球軍の兵が目の前の奴に肩を貸しているのを見たんだが…」

そういって齋を強く睨みつける。

「お前には見えないだろうが、目の前の奴も同じで悪きオーラしか見えなかったのでな…」

「なに!?」

「そいつは始末しておいたのだが、それがお前を救援に向かう時間が削がれてしまったわけだ」

滋には能力者のオーラから濃度を計り、悪き色に染まっていないか、善意に満ちているのかを見分けることができる。

同時に滋が目的とする事に応じて、修正がかけれる不思議な眼を持っていた。

「とはいえお前のおかげで、アイツの能力を知ることができた、後は任せろ」

「いや、俺も手伝わせてくれ…」

滋の加勢に千博も下がるわけには行かなかった。

だが、

「下がっていろ!お前ではアイツには勝てん。未来で養われた力は対処が難しいものだと軍で習わなかったのか?」

「うっ、しかし…」

このままでは言い合いになるだけと、鎖爛がゆきひろに声をかける。

「千博さん、そいつの相手は滋様に任せて、貴方は私についてきてください」

「何もお前は何もしなくていいわけではない。最も厄介な存在がすぐに現れる。お前はそいつの相手をしろ」

その声に滋が付け加える。

「最も厄介な存在?」

言われるがままに千博は鎖爛についていくことにした。

そのワードをずっと気にかけながら。

「さて、長話になってしまったな、選手交代だ」

滋が構えることなく言葉を流す。

「能力界に恨みはないが、相手になるというなら手加減はしない!」

齋からすればこの地球に住む者全てが憎いからだった。

「一瞬で決めてやる…全オーラを集中する」

滋の眼に底知れぬ悪に染まったオーラが齋に集まってくるのが見えた。

「いくら能力界の長といえども、この圧縮量では耐えれまい」

齋の前に現れたのは、今までとは比較にならない圧縮された重力球。

オーラの膜も今までよりも更に薄く、肉眼では確認できないほどの薄さになっていた。

「フッ、これでおわりだぁーーっ!!」

そういって、最後の力を振り絞って重力球を飛ばす。

その時、既に決着はついていた。

ブシャッ!と血の塊が齋から溢れ出し、その身体が倒れる。

「悪いな…今は俺の能力を知られるわけにはいかないんだ。非情な手段だが敵対する以上容赦はできない」

何が起こったのか全く理解できない状況で、目撃者は誰一人としてこの場にいなかったのだった。

始末が終わり滋は齋の飛ばした重力球が消えていることに気づく。

「やはり本体が死ねば能力も消えるか…地球軍と協力するなど、これっきりにしたいものだ・・・」

後始末の必要がなくなり滋はこの場を後にしたのだった。


風香町/国会議事堂前

「………」

その頃、影融と黒羽の戦闘は終着しようとしていた。

「降伏してみるか?」

無慈悲な光景は華楼美母を除いて天界の使者を金縛りにするほどの迫力だった。

黒羽が堕天使とされたのもこの惨状が原因なのだろう。

5枚もあった影融の羽は全てなくなり、次に攻撃を受ければ確実に死ぬことになる。

恐れおののくどころか、声さえも全く発せなくなり黒羽の方が悪者に見える光景だった。

「丁重に扱われている事に感謝するんだな。大人しく捕まればこうまですることもなかったんだが…全ては自業自得ということだ」

取り押さえる腕と、いつでも繰り出せる大刃を影融の首に向け、最後の忠告をする。

「さあ決めろ、ここで大人しく捕まるか?それともこの刃の錆となるか?どちらだ?」

判断を任せその言葉を待っている中、急速に接近してくる気配を黒羽は感じていた。

背後から迫る者、その速さは並の者ではないことが分かった。

(接触する?自意幻覚!)

正体のわからないものに対して発した幻覚を展開し、直撃に備える。

ドシューッ!

ところがソレは黒羽ではなく影融の腹部を容易に貫き、そのまま制止する。

「お、お前はっ!?」

その者の姿を見た途端、黒羽の背筋は凍りつく。

「ベロニカ:ルーツ!!」

変わり果てた姿に、素顔を目の当たりにするまで誰なのか分からなかった。

窶れ切った身体には闘神化したときのような金色の傷痕はなく、赤黒い傷痕があり、そのくすんだ皮膚からは邪気を帯びたオーラが溢れ出ていた。

肩で息を繰り返す所を見ると疲労困憊な様子だ。

(なんだ?闘神化とは違うようだが…先程と様子がまるで違う?)

ベロニカの姿に黒羽は先の出来事を思い出す。

ミハイルと共に議事堂から離れていたベロニカはその時、突然様子がおかしくなっていた。

準人の奇襲にも対応できず複数のナイフを浴び、意識を失っていたのを思い出す。

「まさか、それが影響で…はッ!?」

現実を見た黒羽の目には跳躍し襲い来るベロニカの姿があった。

(この前の戦闘時より動きが早い!)

回避は間に合わないと、再び自意幻覚を発動させる。

だが、黒羽は予感していた。

前回の戦闘時、黒羽の発動した自意幻覚はベロニカには当たらなかった。

おそらく今回も…

しかし、その結果は黒羽の想像を超えた出来事を起こした。

「うあぁーっ!」

黒羽がその被害を受けていたのだった。

(くっ!自意幻覚が解かれた!?バカな…!)

吹き飛ぶ黒羽に更に追い討ちをかけるようにベロニカは攻めてくる。

「まだくるのか?」

空中で受身を取り、右腕から針金の1本を伸ばし地面に突き刺す。

突き刺さった所から針金を引き戻し、その反動で地面に着地する。

そしてすぐさま左腕から5本の針金を伸ばして一度後ろに引く。

ベロニカが向かってくるのを、針金が全て当たる位置にうまく計算していた。

(もう少し・・・3・・・2・・・1!)

タイミングを合わせ一気に左腕を薙ぐ!

同時に針金も勢いをつけて伸び、ベロニカに向かってその細い刃を近づける。

「くらえ!針刀鋏線しんとうきょうせん!」

既にスピリトュスを通した強靭な針金はレーザーの様に一瞬にしてその身を斬る凶器となっている。

しかしベロニカは我を忘れて正面にしか眼を向けておらず、針金の存在に全く気付いていなかった。

シュパ!!

だから呆気ないものと黒羽が思えたのは、その斬れた肉片をはっきりと自らの眼で目撃したからなのだった。

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