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二人二声之影Ⅱ外伝 scarlet mystery   作者: LAR
5章 地球崩壊の序曲
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5-4 ベロニカの影

政府が控える個室で二人の強者達が面識していた。

しかも相手は敵同士。

対談する理由など無いはずだ。

「政府!これは一体どういうことですか?」

叶破が真っ先にミハイルに問う。

「さて、何の事かな?」

惚ける答えに叶破は遂に怒りが爆発する。

「ミハイル、貴様ーっ!」

重力波を腕に纏い、ミハイルとの距離を縮めようとする。

しかし、そこにベロニカが現れる。

バキッ!

「ぐあーッ!」

ミハイルが前に立ちふさがり、渾身の蹴りを浴びせる。

「く、くそ…」

夏樹が咄嗟に飛ばされる叶破を抱え止める。

ベロニカは初音と交戦した時とはどこか様子が違っていた。

以前は戦うという姿勢はまるで見せなかったが、今回の彼を見る限りだとミハイルを死守するかの様に立ち塞がって来ていた。

「政府、貴方はお逃げ下さい」

個室の後ろにあるテラスに向かって、ベロニカはミハイルに指示する。

「一人で大丈夫か、脱出できる手段は既に立てているぞ?」

腕を組みながら初めてミハイルがその小さな口を開いた、ベロニカに大して溜口で、それもかなり大人びた女性の声色だった。

「良いのですか、貴方には大切な予定があるのでは?」

「構わない、お前もこんなところで余計な傷は負いたくないだろう?」

腕組をやめ、その両腕を下ろす。

その左腕の甲には巨大な砲塔、右腕には軍用のサバイバルナイフが握られていた。

「お前は手を出すな、私がこの者達を引き付ける。合図したらテラスを一気に潰せ!」

「分かりました、ご無理は為さらない様に」

ベロニカの言葉に、ミハイルは妖しく微笑む。

「フッ、何を今更…元より傷つけられるつもりもない」

そう言って三人に向かって駆けていく。

その足裁きは凄まじく初音より速い。

「2分、いや1分で脱出させてやる」

殺気丸出しで向かってくるミハイルを夏樹、叶破、善之は身構える。

「来るぞ!何としても止めるんだ!」

「わかってる!」

「分かりました!」

それぞれが散開して迎え撃つ。

「俺が相手だ!」

夏樹が真っ先に対峙する。

「このっ!!」

オーラの篭った拳が向けられる。

(繰り出す拳が速い、武闘家かこの子は?)

ミハイルは咄嗟に身体を後ろに倒し、リンボーダンスのようにして夏樹の拳を避ける。

(な、攻撃がすり抜けた、なんて軟らかい身体だ!?)

そのまま夏樹の拳をすり抜け、左腕にある巨大な砲塔で逆立ちのできない身体を後ろに倒す。

右腕のナイフを地面に刺し、遠心力をかけて素早く蹴りを入れると共に体制を戻す。

「ぐあっ!!」

勢いの付けた一撃に夏樹が大きく吹き飛んでいく。

「夏樹!く、流石に手強い相手だ!」

叶破が続いて重力波を纏った腕を構える。

「グラビティコントロール!」

叶破自身の体重を調整し、身体を軽やかにする。

「そんな程度で私の猛攻を避けれるのか?」

しかしミハイルはそれを気にもとめずに向かってくる。

「さあ、どうかな?」

叶破の余裕な笑みがミハイルを苛立たせる。

「フン、見掛け倒しが…」

そう言って薙ぐ様な剛脚を浴びせる。

ブォン!と鈍器を振るう様な勢いの蹴りを叶破は軽くなった身体でスッと避ける。

(速い!?このままではよけれない!)

「くらえ!」

叶破が拳に重力波を纏い腕の部分だけを更に軽くする。

「グラビティマスカレード!!」

そしてミハイルに無数の殴打を浴びせた。

「くあっー!」

叶破の連撃を真面にくらったミハイルが吹き飛んでいく、が、しかし彼女は直様体制を戻した。

「タフだな…」

その姿を見て、相手が絶対強者であることを再認識する。

「あまり調子に乗るな…!」

叶破の攻撃を受けたことによってミハイルの怒りは爆発し、その能力を解放させていた。

そのオーラは今まで見たことがない群青色のオーラだった。

それを見て善之は、これから起こる事に見切りをつける。

「叶破さん!政府代表の能力は時間を止める力です!迂闊に近づくと危険ですよ!!」

「何!?」

善之の言葉に一瞬油断した叶破、その僅かな隙に

「遅い!!」

「な、しまった!?」

既にミハイルは叶破とはゼロ距離にまでつめていた。

咄嗟に腕を前に構えて防御するも、彼女は素早く刃物を振るうだけだった。

ザシュ!!

「ぐあああああーーーっ!!」

両腕を勢いよく切られ、吹き出す血と痛みに叶破は叫び崩れる。

その様子を哀れに思い、ミハイルは善之を見る。

「こんな隙だらけの奴にフリージングノーパスを使うまでもない、お前達はここで終わる」

ミハイルはオーラを解放しているが覚醒まではしていなかった。

たったそれだけで重力調整をした叶破より軽やかな動きを可能としていたのだった。

「遊びが過ぎたな、そろそろ脱出しようか」

一人呟いて、右足のホルスターから赤く刃渡りの長いナイフを取り出す。

カンッ!

抜き取る際、勢いをつけすぎたのか壁に刃をぶつけて投擲し夏樹達が入ってきた扉に刺さる。

その様子を見ていた夏樹はすぐにナイフとその行動が何なのかを理解し高らかに叫ぶ!

「全員物陰に隠れて伏せろ!グレネードナイフだ!!」

夏樹の叫び声に叶破、善之がその場にある障害物に身を潜める。

その約2秒後

ドッカーン!!

扉に刺さったナイフが大爆発を起こし、部屋内が吹き飛ぶ。

扉の向かい側にあった窓ガラスはその衝撃波でコナゴナになり、ミハイルとベロニカの逃げ道ができる。

「まずい、このままじゃ逃げられる!」

既にベロニカが脱出しミハイルもそれに続こうとしていた。

「待ってください!!」

その彼女を夏樹は大声で制止させた。

「なんだ?」

ミハイルは地球の人として彼の話に耳を傾けた。

「あなたはこの地球を守る為に地球政府の代表に就任したんじゃないんですか?それがどうしてこんなことになってしまったんですか?」

爆発で燃え盛る空間でミハイルはフッと小さな笑みを浮かべ言った。

「地球の人間は愚か過ぎた、嘗てこの地球という大地で最も争いの絶えない国にいたが、ここではそれが治まることはないと分かってしまったから私は根源を絶つ為にあの者に手を貸すことにしたんだよ。出来ることなら君達同目的の者達とは拳を交えたくはなかったがそれも致し方ないのだろう。結局はこうして争いの種に火をつけてしまうんだ。君達も無駄な足掻きはやめた方がいいかも知れない。」

火の粉が舞う中で彼女は悲しい瞳をしていた。

まるで今の言葉を目力だけで信じさせるような深い色を放っていた。

「私から言えるのはここまでだ、君たちも早く逃げるといい」

そう言ってミハイルが割れたガラスから脱出する。

こうして燃え盛る空間に残されたのは、夏樹、叶破、善之の三人だけとなったのだった。

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