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二人二声之影Ⅱ外伝 scarlet mystery   作者: LAR
4章 霊法町(フロンティアファースト)奪還の策
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4-5 オーラを絶つ部位

ドスッ!

淡い燐光を発する指先がルシアの心臓を貫いた。

両胸の間に刺された部分からの出血と共にルシアは一瞬にして倒された。

度重なる地球軍の諜報員の死に千博は、怒りを抑えきれなくなってしまっていた。

「貴様ーっ!!」

我を忘れ肥大化したオーラを纏いイルミーズに突攻する。

今の千博に戦略などを考えている冷静さは見られない。

「千刻手!」

右腕を尖らせオーラを集中させる。

纏うオーラを剣状に変化させると、収束して硬化させ断罪の手刀となる。

しかしイルミーズはというと、

「近接戦闘に持ち込むか…」

魔女は物理的な攻撃が弱いのはバーチャルでは確かなことだが

「どちらが強いのかハッキリさせてやる!」

イルミーズの指に再び学が籠る。

今の彼女は攻防一体の学を巧みに操れる能力者だ。

千博に遅れをとる事など有り得ないのだが…

「なんだこれは!?」

能力を繰り出す直後、彼女に変化が現れた。

それは千博が発していながらも本人を含め、この場の誰一人として信じられない事だった。

「イルミーズから学が消えた…?」

先ほどまでの強大な学がまやかしの様に消え、イルミーズは学を放出できなくなってしまった。

「くぅ、なんだこれは…?」

右腕を固く握り締めるが学は全く伝わってこない。

その事にイルミーズは苛立つしかできなかった。

「一体、なんなんだこれはーーっ!!?」

コントロールの効かない学を無理矢理腕に集めつつ千博に突貫していく。

学が放出できなくてもアドレナリンとして体内で利用することはできるようで千博の目には直進してくる彼女のスピードにはついていけなかった。

「うおおおーーーっ!!!」

不安定な学コントロールで千博の心臓部を目掛けて指先を突き刺す!

ドシュ!

ルシアに続いて千博にまで一撃必殺の攻撃が命中する。

僅かな出血の中に死という感触も味わわされた。

無言のままで千博は倒れた。

千博を仕留めた事は小さな功として次なるターゲットを定めようとしたが、

「う、腕が…うまく動かない!!ぐあぁっ!!」

コントロールすることは愚か、次第に学の放出できない腕は長い時間締め付けられたことで血液を循環させることができなくなり少しずつ腐り始めていた。

徐々に進行する腐食に痛みと痒みが伝う。

「どうやら…うまく効いているようね」

その時、初音がスッと起き上がる。

「何故生きている!?」

腕の痛みにイルミーズは大きく端折って初音に問いかけた。

「あなたの魔術は一発たりとも当たっていないわ。その腕に起こした状態であなたの魔法は制御がきかず不安定になるまで弱くしたから、あの雷はただ降るだけになったのよ」

初音の言葉にイルミーズは目を見開いた。

驚愕しているのが一目でわかる。

「妾の…」

初音が一瞬、イルミーズを睨む。

「わらわのうでに、なにをしたあぁーーーーーーっ!!?」

あまりの腕の痛みに我を忘れ、怪物の様に叫ぶ。

声帯ですら濁った声質でもはや女性とは思えないほどに低い声だった。

しかしそんな彼女であっても初音は驚き一つ見せずにそれに答える。

「あなたの身体の中にある学を流す血管…動脈を閉塞したのよ」

爽やかに答えてみせたが実際それはどういうものかというと動脈とは、動物の血管系において心臓から押し出される血液の流れる血管のことで、この血管からオーラや学は流れている。

しかしイルミーズは腕の中の動脈を一時的に閉塞していることにより血液と学の循環を停止させられたのである。

それによって循環できなくなった腕は腐食してしまい、イルミーズに激痛を与えている。

「もう降参しなさい!あなたにはもう勝ち目はないわ…」

冷たく見据える瞳で初音は言葉を放つ。

が、イルミーズは諦めることはなかった。

「うおぉぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!!」

激痛を今もなお生む腕は既に神経さえも壊死しており能力者から伝わる電気信号ですら受け付けず、プランとただ胴体に引っ付く肉塊となってしまっていた。

しかしイルミーズは学を腕の動脈に集中させる。

「無駄よ!動脈を開いたところであなたは戦えないわ、あなたの腕は既に壊死してしまっている。そんな状態で動脈を無理矢理こじ開ければ一気に血液が溢れ出て腕が千切れ落ちるわよ!?」

「フッ、フフフ…お前さえ仕留めれば十分だよ。妾はフロンティアを守る王妃であるぞ!貴様ら如きの為に…!!」

最後の力を振り絞るようにして腕を上げようとしたとき、

ビチッ!

腐りきった腕は遂にイルミーズから千切落ちた。

「ぐっ、ぎゃあぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」

この上ない痛みが襲いかかり、その場にバタリッ!と崩れ落ち千切れる部位から血が溢れ出る。

もう立つことはできないだろう…。

そう見切った初音は千博とルシアに近づく。

そして彼らの心臓がやはり止まってはいないことを確認し揺すり起こす。

「ルシア、千博」

心臓が止まってはいないとはいえ腕力だけで貫かれているため出血は想像以上に酷く粗末に扱わないよ様丁寧に揺する。

そうして目覚めた彼らは驚き、初音はそれまでの経緯を話した。

「そうか、これで俺達は最初の拠点を確保できたんだな」

「そうね、ようやく第一歩を踏み出せた」

千博は善之に、ルシアは初音に肩を貸して一行が勝利を確信しようとしたとき。

「果たして貴公等は本当に勝利を手に入れたのか…?」

突如一行を囲むように周りに落雷が降り注ぎ、行く手を遮られた。

「な、何!?」

そして初音が気配に気付いた時その者はいた。

「イルミーズ様が倒れたとしても、私や魔導境界の兵達が貴公等を始末をする。さあガインヅィ:レガードに申してみるがいい。貴公等の運命それは生か死か!?」

魔導境界の突然の奇襲に初音は覚悟を決めかけたが、

「なら、君達の王たる彼女はどうなってもいいのかな?」

いきなり現れた声に、その場にいた全員が声に振り向いた。

「黒葉!」

初音はその姿にチャンスを想像した。

「さあ、僕に言ってみてよ?君達の運命、それは戦って巻き添えに王を死なすか、撤退をやむなくして彼らを見逃すか?」

先程のレガードの口癖を真似て返した。

「くっ!ここは一度引くぞ!」

悔しそうに、魔導境界の兵士達が後退していく。

「だが、覚えておくといい、イルミーズ様の身に取り返しの付かない事が起これば、貴公等は愚かこの世界全体が危ういことを…」

捨て台詞を残して、魔導境界の軍勢の気配は跡形もなく消えた。

安心感に緊張が解け初音は膝崩れた。

「遅くなってごめんね、色々と調べている内に遅くなってしまったよ」

緊張をほぐすように微笑む黒葉、初音はとりあえず千博に肩を貸し最寄りの店へと立ち寄ることにした。

初音に肩を貸してもらっている隣で千博は黒葉とのすれ違いざまに、

「この気分屋め…」

と、罵ったのだった。

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