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二人二声之影Ⅱ外伝 scarlet mystery   作者: LAR
4章 霊法町(フロンティアファースト)奪還の策
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4-2 信ずる者と応じない者

「どうしてだ?現在の状況から見ればこの作戦が最もだろう?」

黒葉の言葉に千博が意見を聞こうとする。

「彼女達をそんなに安易に信用して、君達は今の状況がわかっているのかい?」

黒葉が放った言葉にルシアやルナ・ルアが黙り込む

それに対し初音が反発する。

「ベロニカを退ける時にもこの子達がいなければ、失敗に終わっていたのかもしれないのよ」

「フッ、知ったことじゃないよ!魔導境界が敵とするのなら、同じ世界に住んでいるものは全員敵と考えるのが妥当だろう?」

「なんでそんな酷いこと言うのよ!?」

「酷くなんてないよ単純に信用できない、それだけだよ」

二人の言い合いが続く中、それを止めたのは突然ドアが壊れそうなほど強く大きく開かれたからだった。

「あんたらちょっと五月蝿いわよ!少しは静かにしてくれなくて!?」

現れたのは梨雪だ。

トレイを抱えてドアを蹴破るような勢いで引いていた。

わざわざ全員分の食事を持ってきてくれたようだが、今の一件で彼女はそれを忘れ仲介という立場でもなく喝を入れたのだった。

そんな中でも黒葉は己の意志を崩すことなく、

「とにかく僕は君達にこれ以上協力することはできない。これは君達能力者の問題だ、僕には関係のないことだからね…」

そういって部屋を出ていってしまった。

その様子を見ていた双子エレメンツは泣き出してしまう。

同様にルシアも酷く落ち込んでしまっていた。

「気にすることはないわ、黒葉は必ず私たちを助けてくれる。なんてたって今までがそうだったんだから、さ」

今までの助けてもらった内容を思い出しつつフォローする初音だったが、よくよく考えてみれば助けてもらっているというよりは呆れられているような様子でもあったのを思い出し、フォローのしようがないことに気づく。

「とはいえ、これで悩みの一つは解けたな」

千博の言葉に一同が見向く

それに初音が応じた。

「どういうこと?」

「あいつ、黒葉がいなくなったことによってスリーマンセルが組めるようになったということだ。夏樹は目覚めるまでにはまだ時間がかかるだろうしな…」

確かに言われてみれば夏樹が目覚めるのをまだ先だと考えると、この案には少々難があった。

どうしても一人欠けてしまうのだ。

もしかすると黒葉はそれを見越し、敢えてあんな言葉を述べて立ち去ったのかもしれない。

しかし今となってはそれはわからない。

過ぎた事は気にせず一行は人数を分け、魔導境界に支配された霊法町を奪還すべく作戦を練ることにした。

初音と千博をリーダーとし、初音の方にはルシアとルナ、千博の方には善之とルアを連れて行くことに決めた。

そして作戦は先の通り、まずは拠点を確保することを優先することにした。

簡単に述べると手薄な陣地を一気に襲撃し領地を確保、同時にそこの兵を捕らえる事にも重視する。

この作戦に関しては、スリーマンセルではなく全員が共同で行うこととなる。

それに相手は初音達よりも身体は弱いが魔法という攻撃手段を用いる超間接系攻撃を主体とした相手。

本来能力者は近接戦闘を主体としている為に、圧倒的に不利な状況だ。

「相手にとって不足はない、隙を上手く見つけるか?RPGにでてくる魔法使いは遅いのが多いはずだが…」

バーチャルの魔法使いは大抵行動順が遅いといった傾向がある。

しかし魔導境界もその条件を持っているのかは謎だ。

それどころかこちらの人数は8人、一方で魔導境界は兵隊も含めれば数え切れない人数だ。

勝機など無いに等しいだろう。

しかしそれでも彼等は戦わなければならない。

嘗ての賑わっていた霊法町を取り戻す為に。


ファーストフロンティア/駅構内

霊法町、そこは活気と賑わいが多い交易都市。

人々は何にも恐れず唯々、掘り出し物をめぐって売買を行うだけの平凡な街のはずだった。

ところが駅構内からでも聞こえていた賑わいの声は今となっては全く聞こえない。

魔導境界の者達が最初の拠点として築いた都市だからだ。

初音達が撤退してから僅か数日も経たない内に完全に掌握し、外部との連絡は途絶え市民は奴隷の様な存在と化していた。

その様子を初音と千博が見ていた。

「酷いものね…たった数日で街の人達が扱き使われているわ」

「地球の人間は全員能力者でありながらもこの状況、魔導境界の勢力は市民では束になろうと歯が立たないということだろう」

「わかってるわよね?」

「ああ…一刻も早く彼等を解放してやる!」

二人の思いが今、戦いの場へと向けられる時だった。

「解放とは、何の事だ?」

突如目の前に見覚えのある髪型が見えた。

「オヴリバス:イルミーズ!?」

後ろにいたルシアが驚愕したかと思うと、この場にいた誰よりも早く構える。

「ルーシアン:ローズ。裏切り者の干渉調停師、そんなお前が何故フロンティアの愚民にその力を貸し妾に仇なす?」

「干渉調停師?それはどういう意味だ」

千博がオヴリバスの言葉に疑問を覚える。

「まさか!まだ教えていなかったの!?アハハハ、まあそりゃそうでしょうねー!」

ルシアの行動がわかっていたように高笑と嘲笑をする。

しかしその笑い声ではなく、その次に発するであろう言葉にルシアは両耳を塞いで懇願した。

「オヴリバス、やめて…」

「教えてあげるわ、そのルーシアン:ローズという女はこのフロンティアを掌握するための手段を練る為に自らの魔力を消費し尽くしても不可能と言われた境界線を突破することに成功した。そして、たどり着いたのがこのファーストフロンティア、この女は妾達に最初の拠点を築かせる為の偵察と協会を突破する鍵を開いたのだよ!」

その言葉を聞いた初音達に動揺が走る。

言われてみれば、ルシアは突然この街に現れ、風のようにその学を消しては再び出現しと繰り返していた。

これがオヴリバスの言う様に、魔導境界に合図を示しているものだとすれば、それにいち早く気付いたベロニカも彼女を消そうと必死になるはずだ。

何より、ベロニカにとっても情報不足だったルシアの学の解明に成功し、漸くして彼女を抹殺する為に追い詰めたのも束の間。

千博が邪魔をしてしまったわけだ。

初音達は今回の事件は自分達の手で冒してしまったことになる。

と、なれば話は変わってくる。

いま両耳をふさいで蹲っているルシアを始末すればこの事件は一気にカタが付くことになる。

しかし、もうひとつ疑問がある。

「干渉調停師とはなんなんだ?」

千博がオヴリバスに問う。

「難しい言葉を述べただけだよ、説明するとすれば必然的に接触・干渉することができる力」

その言葉を聞いた途端、千博の表情が険しくなる。

「つまりあんた達に接触しようと思えば簡単に接触できたわけ。フロンティアの情報を収集するために有効関係を築くフリをして、ね」

「やめてぇー!」

ルシアが遂に悲鳴を上げるように声を黄色くした。

「アハハハハ!そんなことを言っても妾にも同じことをしたんだ!今回もそれでフロンティアの人間に干渉して妾との有効関係を築くふりをして、魔導境界を乗っ取るつもりなのだろう?そんな野心も野望も全て引き裂いて恨みつらみを残したままでアウェイの荒野で朽ち果てるといい!!」

嘲笑う声を最後にオヴリバスは消えた。

今まで見えていたのは何故なのか?というところなのだが、ルシアを取り囲むメンバー達は疑問を次から次へと浮かべては消えを繰り返し、その中の一人が面倒くさくなったのか考えるのを放棄した。

「悪いが初めて会った時から小さな疑問はあったんだ。『変わったやつだな』ってな、可能なら殺したくはない、今すぐ元の世界へ帰れ!」

考えることを放棄し拳を構えたのは千博だ。

「それが当分は学がまともに扱えず帰ることはとても難しいんです」

「残念だが信用できない、ならどうして俺達に紛らわしいことをした!?」

「そ、それは…」

揚げ足を取られ口篭る。

それが千博を更に警戒させる事となる。

「帰れないというのなら今ここで始末するしかない、善之!」

千博の言葉を受け、善之は少し戸惑ったが主人の命令には絶対ということを再自覚させルシアに敵対心を向ける。

「悪いな、恨むのなら生まれたことを恨んでくれ…」

残酷な言葉を手向けとして、構え始めた時から溜め込んでおいたオーラを拳に集中させたかと思うと一気に振り向けた。

近接に不利な魔法少女は目を瞑り逃げるように顔を背けようとする。

が、それが逆に殴りやすい的を作っている事に気付くことはない。

もちろん千博も手加減などするつもりはなかった。

命中する。

確信の一撃は爽快感を味わわせる音を放ったのだった。

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