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二人二声之影Ⅱ外伝 scarlet mystery   作者: LAR
4章 霊法町(フロンティアファースト)奪還の策
38/58

4-1 風香町の美院長

魔導境界の突然の猛勢。

それによって夏樹は意識不明の重体に陥った。

地球軍は退却という手段で一時的に急を逃れた。

そして一行は…


霊法町/魔導都市

半日ほどで霊法町を自らの領土と化し、今もなおその要塞を強化しつつある魔導境界の軍勢。

ところが籠城する中で、ある事態が発覚する。

「た、大変です!」

魔導都市を最大限に活かそうとする魔導技巧学の専門士、ロッククルック:ラルロック

彼が都市を疾走している中、そこにいた縦ロールが彼を制止する。

「さわがしいぞ、一体何事じゃ?」

姫的な態度を示すが彼女、オヴリバス:イルミーズ

現当主は彼女を除いて他にいない

「そ、それがレア様が…ミリーブ:レア様がいないのです!」

ラルロックはとても焦燥に駆られていた。

何故ならミリーブ:レアという名前の者、その者はイルミーズが魔導境界で預かったトップシークレットの保護対象だった。

だが、彼女が放った言葉はラルロックを更に驚愕させた。

「ハッ!あんな御令嬢を相手にしている時間はない。さっさとフロンティアファーストを完成させろ」

その言葉にラルロックは建前の頷きをし、心の中で鬼を見せた。

(このお方にはついていけまい)

と…。

いつか来る、好機は必ず来ると。

ラルロックはそれを見つけるために今は一時の味方でいることを決意した。


風香町/風香駅前

その頃、生死不明の夏樹を連れて風香町まで後退した初音達はある診療所を尋ねる。

その診療所には琴吹という名前が書かれていた。

診療所の自動ドアが開き初音が大至急と称して夏樹を医務室に連れ込む。

この時の初音は夏樹の事で頭が一杯だった。

診療所に駆け込むやいなや、手続きはおろか順番でさえも無視し、院長の琴吹:梨雪にも「落ち着きなさい」と言われ、とりあえずは夏樹の集中治療が始まった。

梨雪の見方によると、外傷こそ見当たらないが意識不明という点については大凡の見当が付いているようだった。

そして治療が始まってから3時間後のこと…霊法町から後退した時間と合わせるとざっと5時間以上が経過していた。

集中治療の名板のランプが消え、横たわる夏樹と梨雪と何人かの助手達がついていた。

「院長、夏樹は…?」

初音は直ぐに待合のソファーを立ち上がり梨雪に問う。

結果は…

「んー、特に目立った外内傷は見当たらなかったわ。雷を受けたと言っていたけれど心臓はちゃんと動いているし息もあれば内在オーラも特に問題はないわね、ただ…」

言葉を一度区切り再度続ける。

「この子の内在オーラから、普通のオーラを持つ能力者とは違うオーラを感じ取ったわ、そこで聞きたいのだけれどこの子はどういう状況でどのような相手から雷を受けたのかしら…?」

梨雪の言葉が痛いところを突いてきた。

実は魔導境界と現在の世界に、ある特殊な現象が起こっていることを梨雪は知らないだろう。

それを知っているのは魔導境界の住人であるルシアと双子エレメンツのルアとルナ、そして初音だけしか知らない。

その事実はこの世界を混乱させるだけだと今まで黙っていたが、目の前の院長に対して下手な誤魔化しは夏樹の回復に影響を出すことになりかねない。

「実はね…」

だから初音は口を動かしてその事実を伝える。

「霊法町が乗っ取られちゃったの」

「ハァ!?」

余りにも唐突な言葉に梨雪は甲高い声を出す。

「世界の中に存在する次元を超える直前、亜空間と別次元の境目にある中継点の空間、そこに魔導境界って空間があるんだけど」

「ちょ、ちょっと待って、まさかその話は…」

途中まで聞いていた言葉を遮るように梨雪は初音を制止させる。

「もしかして、その話はこれのことかしら?」

そう言って梨雪はすぐ横に仰向けに眠っている夏樹に右手の平を差し出したかと思うと、

「…!」

初音が目を見開く。

梨雪が行ったのは夏樹の傷を治癒することができた。

みるみる内に古傷が回復していき、数秒後にはただ眠っているだけの少年になった。

「梨雪、貴女は!?」

「そう…あなたの次の言葉はわかるわ。魔力を帯びた能力者が現れ始めている」

梨雪が放った言葉は、千博と黒葉、そしてルナ、ルアを驚かせた。

「どういうことだ!?ルシアが地球に来た時から、この世界のバランスは更に崩れてしまったというのか?」

「単純な話そういうことね、あれを見て」

梨雪が指差した方向に全員の目が行く。

そこにはこの診療所の各個室を写した映像がリアルタイムで流れていた。

要するに患者の状態を把握するところだ。

その患者の一人一人が映像からでも見て取れるほど強弱の激しい学を放出していた。

「ここにいる患者の95%が未知のオーラに侵食された人達よ、このオーラは覚醒しだしてから一度でも放出、或は消費しなければ侵食を起こして身体障害を起こしてしまう。だけど能力者は普段日常生活の中で自らの能力を明かしてはならない。この法を守るが故にオーラが侵食されここに運ばれる事になってしまったのよ」

長い梨雪の説明に一同が納得の頷きをした。

そして夏樹を見て彼女はこう言う

「とりあえずこの子の結果をあげるとすれば命に別状はないわ、ただ学を持ってしまった以上一刻も早くその学を消化しなければ死のおそれは十分に考えられるわ」

梨雪の言葉から死という言葉が出てくる。

初音が知る限りこの梨雪という人物は自分が受けた患者を死なせてしまうほどのヤブなどではない。

そう考えれば梨雪は表情には出してはいないものの内心焦っているはずだ。

自らで築いてきたキャリアが今回の一件で一気に崩れるかもしれない。

そうなれば誰だって焦るはずだ。

その様子が顔に出ていたのか梨雪は初音に対してこう語りかけてきた。

「初音、私の事は気にしないで構わなくてよ」

「え?」

「あなた今、私の地位が崩れるとか思ってたでしょう。でも気にしないでいいわ、そもそも地位なんてものは自然に出来上がっていくものだから作りたいと思ってできるものは反対派の数だけ」

「でも、あなたならきっとできるって…」

初音にそれ以上言わせないように梨雪はどこから取り出したのかメスを向けてその次の言葉を制止させる。

「いい事?あなたの言葉で立候補したわけじゃないわ、それにこの診療所もある今思えばこれで正解だったのよ!」

梨雪の言葉を聞いた一同は理解した。

琴吹:梨雪は地球軍代表として一度は立候補するほどの人物なのだと。


それからしばらくの間、狭いものの古くなって使われなくなった個室を拠点として一同は、乗っ取られた霊法町をどう奪還するかについての作戦を考えていた。

いま、この場にいるのは初音、千博、善之、そして黒葉にルシア、双子エレメンツに意識を失っている夏樹の8人だった。

赤城と白黒の子は一度霊法町の空港で神界に行くと告げて別れていた。

「さて霊法町を奪還するにはこれからどうするか、ね」

初音の言葉に千博が挙手する。

「そうだな、あの魔導境界の軍勢。あの数を一度に相手をするのは危険すぎる、とくにあのオヴリバスという女あいつの強さは本物だ夏樹でさえ一撃で意識を失ってしまった、ヘタをすれば命を落としていたかもしれない。おそらく奴があの軍勢の頭だと考えていいだろう」

それに続き、ルシアが案を上げる。

「部隊を二つに分けて、魔導境界の軍勢を一軍ずつ切り離して交戦するというのはどうでしょう?うまくいけば少しずつですが領土を奪っていけるはずです」

「そうです、それがいいのです~」

「です~」

ルシアの提案にルナ、ルアが賛成する。

「そうですね、現状その戦法が最もと言えます。今なら街も亜空間騒ぎは起こっていないようですし、今の内に奪還しておくのが得策です」

善之も賛成した。

千博も無言で頷き、傷の回復に努めた。

残るは黒葉と初音。

「私もそれに賛成するわ、うまくいけばそこで粘れる戦闘もできそうだし」

これであとは黒葉だけだったが、

「いや、それは残念ながら承諾できないね!」

最後にして拒否の意見が入ってしまうのだった。

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