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二人二声之影Ⅱ外伝 scarlet mystery   作者: LAR
3章 地球政府代表の新任
34/58

3-7 天国と地獄

霊法町/市場

「ぐあぁぁーっ!」

善之達がルシアとの友好関係を築いている中、千博はルシアを襲った男にコテンパンにやられていた。

どうしてかこの男には触れることさえできない。

まるで何かがこの男の周りを守っているかの様に。

「こんなものかい?君の力とやらにはガッカリだな。もう少し楽しませてもらえれると思っていたのだけれど」

今までのラー家の人間とは全く違う何かが、この男にはあった。

千博はそんな事を思いながら、別の対抗手段をあれこれ練っていた。

しかし、もうラー家に対抗する手段を用いた戦法は試し尽くしていた。

この男には隙と呼べる部分が全然見つからない。

「君はラー家の乙女美女少女達が私と同じだと勘違いをしている。私は彼女達を統率せし者つまり彼女達の頂点の座にいるのだよ」

男はゆっくりと歩み寄る。

ゆったりとした歩みに千博は身震いし始めた。

この男に接触を図ろうとすれば、すぐさま衝撃が走りその身が枯れ葉の様に吹き飛ばされる。

その男が自ら近付いて来る。

壁に追い込まれればハメ殺される。

アクションゲームの様に抵抗することを許されない状態になってもなんら不思議ではない。

千博の頭にはそれがあった。

既に身体の幾つかの部分は出血が絶え間無く流れている。

そんな状態で追い詰められれば、最早助かる余地はない。

(ここまで…か)

千博は諦めることにする。

仮に善之達が来たとしても、この男を打ち負かすことは不可能だ。

こんな反則的な能力は、生まれ着いてから持ち得ている力。

人がどうこう出来るような甘い代物等ではない。

「さようなら、地球の誇り高き戦士」

男は、そっと千博にトドメを刺そうとした。

その時!

「!」

男を狙ってくる鋭く尖ったものが一直線に飛んでくる。

オーラを纏ったそれは明らかに当たることを想定して飛ばしたものではないと男は判断する。

だから男はいとも容易くではなく、ギリギリで避けるようにしてみせた。

だが、その判断は非常に正しいものだった。

「剣羽?」

一瞬見えた、飛んできたものを目視確認した。

そして的の外れた羽は建物の壁を簡単に貫通し二件、三件、と次々に壁を貫いたのだった。

もしあの羽を掴みでもしていれば、男は致命傷となっていたかもしれない。

しかし動じた様子は見せず男は、羽の飛んできた方向を見る。

「小細工は抜きにしないか?お互い反則的な力を持っているんだ、公平に事は進めた方がフェアだろう?」

誰もいないと思われる方向に男は、言葉を投げかける。

するとルシアの雷雲の影響で僅かに発生していた霧の奥から黒い服装の好青年が現れる。

いつの間にあんなに背が伸びたのか戸惑う千博だったが、どう見てもそれは黒葉だった。

「初めまして、君に会いたかったのだよ」

男は黒羽を見るなり、今までになかった接し方をする。

「自己紹介がまだだったね、私の名前は…そうだね。ベロニカ:ルーツとでも呼ばせて頂こうか」

ここでようやく男が自らを名乗った。

そんな態度を黒羽は強い瞳で見ていた。

その状態を崩さずに、フッと姿が消える様に千博は見えた。

「…!」

しかしベロニカには、黒羽の姿が辛うじて見えていた。

(踏み込んでくる、早い!!)

初めて目を見開き黒羽の接近とは逆にベロニカは倒れる様に後ろに流れる。

黒羽にはベロニカに対して殺気だけがつのっていた。

神に近し者と闘神に近し者がぶつかり合う。

力の見せ所、黒羽が先手を打つ。

黒羽の翼の一つを落としそれを右腕に掴む。

巨大な翼から抜け落ちた羽は、スピリトゥスを通して鉄をも切り裂く刃を持たせる。

すぐさまその刃を向け、ベロニカに突く!

(やはり、早い!簡単にはよけれそうにないか…)

心で思うこととは裏腹にベロニカは余裕の表情は崩さず、黒羽の攻撃をギリギリで避ける。

スススススッ!

一瞬の間に五回も突いている。

そのどれもが、掠りでもすれば行動に支障をきたす一撃を意味していた。

力が弱まり既に大したオーラも扱えない千博には、この二人が何をしているのかさえ見ることはできなかった。

黒羽は千博も何度も聞かされてきた神だ、その動きは神速の如き業をなしているのだろう。

一方でその相手であるベロニカという男。

ラー家の力を持てるはずがないのにも関わらず、ラーの力の象徴であるプネウマをを豊富に用いて、黒羽にも劣らない強さと速さを引き出している。

「やるじゃないか、俺のスピードについてくる者は久しぶりに見た」

二人して互いに攻撃と回避を繰り返す中で黒羽が語りかける。

「伊達に君に王位を譲っていたふりをしていたわけじゃないよ、あくまで見合う人間を探すつもりはなかったのだけれど、よりによって君が受継いでしまったものだからね」

ベロニカも同じように言葉を投げかける。

その途端、黒羽の動きが変化した。

「やはり貴様が・・・か!」

途中で途切れた言葉は、黒羽が自らを次元に一時的に溶け込ませ間合いを瞬時に詰める為だった。

「だとしたら君はどうする?私をしとめてみるかい?」

しかし、後一歩という所で掠ることなくよけられてしまう。

(なんて奴だ…あのベロニカという男、黒葉でさえも手に負えないのか?)

ようやくオーラが収束してきた千博はチラチラとだが、黒羽とベロニカの動きが見え始めていた。

途切れとぎれの映画のシーンの様なコマ送りで判断は難しい、だがベロニカには全く傷一つないのが何よりの証拠だった。

「そろそろきめようか…力の差が歴然なのは見えてきた」

ベロニカがプネウマを集中し始める。

今まで受け流すような回避だったが、瞬間的な反射神経が素早く身体を剣羽からよけさせる。

華麗を動きとその身に纏う金色のオーラから、闘神化に近い傾向が見られる。

(速い、このままだとやられる!)

危機を予感し、黒羽のスピリトゥスにも力を込め始めるが、

「遅いよ、それでは動かない的同然だ」

ベロニカの右腕が光り輝く!

「酸手、君はもうジ・エンドだ」

オーラでコーティングした腕に強酸を纏った手刀が繰り出される。

ドスッ!

と、音がしたようにも思えた戦慄。

一瞬の間に何が起こったのか、千博には見当もつかなかった。

黒羽そしてベロニカは両名とも健在だ。

違う点があるとすれば先程の状況と位置が相対していること。

黒羽の背中が千博の目に見えていたのに対し、今はベロニカの背中が見えていた。

「やはり、よけられたか…」

ふと、黒羽からそんな言葉が漏れた。

よけられた、一体何を?

「言ったはずだよ、私はラー家を統べる者。自分で編み出した能力の抜け穴くらい心得ているよ」

ベロニカの余裕の表情は全く崩れることはなかった。

黒羽が行ったのは自意幻覚。

己の受けるはずの被害を攻撃した者が受けるという…

理に反する能力のはずだった。

しかし、ベロニカにはまるで傷一つない綺麗な身体を保っていた。

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