3-5 未知なるオーラの調査
異形の生物の討伐の任を終えてから更に数日後の事。
黒葉の名の下、与えられていた数日間の休息は終わった。
そして、予てより伝えられていた不審な動きの調査の任をを負うことになった。
調査の詳細は、霊法町にて突発的に発生するオーラ。
千博達が異形の生物の任を遂行している中、黒葉はオーラの正体を掴んでいた。
それは未だ嘗て確認されたことのないオーラ、黒葉でさえも未知の領域にあった。
セイレーン教/教祖室
「このオーラについては僕にもまだ不明な点が多い。可能な限り調査してみるように」
早朝に千博と善之を起こし、黒葉は任務の内容を伝える。
「未知のオーラ…それは果たして僕達でなんとかなるのでしょうか?」
善之がそのオーラの所有者が強大な存在であると睨んでいた。
「それは分からない、ただ一つ言えるのはその未知のオーラが発生すると、同時に必ずプネウマも確認されるそうだ…。もしかすると、どちらかは僕達の味方になるかもしれない、そこで君達は正体不明なオーラを持つ者の調査、及び友好的な態度で接してもらうように心がけて欲しい、可能であれば両者ともこちらに引き込むのが一番いいんだけど、判断は君達に任せるよ」
黒葉から伝えられたのはそれだけだった。
最もプネウマということはラー家のオーラだろう、未知のオーラがどれほどの力を生み出すものであってもラー家が相手では、太刀打ちできないはずである。
と、なれば協力することになるのは、やはり未知のオーラの所有者とされる。
黒葉はそれを踏まえて、このような命令を下したのだろう。
霊法町/市場
霊法町は交易が盛んな事で知られる貿易都市、販売されているものは食料は日用品を始めとして、様々な業者が連携している。
こんな賑やかな街中で果たして、能力者など現れるのだろうか?
そして、そんな中で今だに藍を失ってことを引きずっている千博の為に善之は、近くの出店で買ったクレープを千博に渡す。
しかし、全く口にしようとしないのはやはりまだ吹っ切ることができないということなのだろう。
善之は休息の期間中も精一杯、千博の世話をしていた。
しかしそれは全て、彼を動かすことにはならず、唯々善之が大きな疲れを負うだけ。
ストレスは溜まっていたが、怒るわけにはいかない。
善之はせめて、能力者と対峙するまでにはなんとか立ち直って欲しかった。
「千博様」
近くの公園のベンチで二人、善之は千博を慰める。
「目の前で藍様を失ったのを目の当たりにした千博様には辛い一言になりますが、藍様は必ず生きていると思われます」
その一言に、千博がピクリと動いた。
「あの時の藍様は確かに混乱状態にありました。ですが、藍様はオーラを爆発させる際、あなたにお別れの一言を口にはしなかった。それはもしかすると生きて帰るということの表れだったのではないかと思われます」
「いい加減なことを言うな!」
あるはずのない…出来事を口にすれば千博の逆鱗に触れかねない。
しかし善之は止めることなく言葉を続けた。
「藍様は必ず帰ってきます。千博様の前に」
「…!!」
バキィ!
善之の言葉に我に返った千博は、その傷一つない頬に拳をぶつける。
「っ!」
ベンチから殴り飛ばされ地面に倒れ込む善之、しかし直ぐに起き上がり頬をさすりながら千博をしっかりと見据える。
「いい加減なことを言えば俺が怒るのはお前もよく知っているはずだ。次にその言葉を発するようなら命はないと思え…」
肩で息をしながら、千博の目は怒りに善之を強く睨みつけていた。
「ですが千博様、藍様はあの程度でお亡くなりになるような肩ではないと思います。きっとどこかで…」
「善之!貴様、まだ言うか!」
千博が再び握り拳を作る。
今度はオーラを纏わせて、それを振りかざそうとした時。
ドーン!
霊法町で大きな爆発が起こる。
「ん!」
「まさかっ!」
突然の爆発音に、千博と善之がそれに驚く。
爆発の位置はちょうど霊法町の市場の辺りだ。
「善之、わかっているな?」
「はい、急ぎましょう!」
喧嘩など後回しにして、二人は市場のある方向へと急行した。
市場にて突如起こった爆発。
市民の安否が心配される中、市場では能力者二人の戦いが繰り広げられていた。
一人はプネウマを持つラー家と思われる人間、もう一人は見たことのないオーラを纏わせていた。
市民の悲鳴や退去が続く中、二人は交戦を繰り返す。
しかし目の前の者の方が一枚上手の様で、謎の能力者は苦戦の一途をたどっいた。
「くっ!こんなところで倒れるわけには…」
未知のオーラを発する謎の能力者、ルシアは地に片膝をつき目の前の強大な力の持ち主を睨みつける。
彼女は目の前の者がどういう者なのか分からない。
そんな実力を知らない状態での戦闘で大きな返り討ちを受けていた。
「ククク、その程度で私をどうにかできると思っていたのかな?ルーシアン:ローズ」
プネウマを有する長身の男性は、膝をつくルーシアン:ローズという名の女性、ルシアを見下しそう告げる。
ビンテージのチノパンに、薄いコートを羽織る彼は20代くらいの若々しい姿の者だった。
「言ったろう?その力を大人しく渡してもらえば手荒な事はしないと、さあラストチャンスだ、私にその力を頂戴してもらおうか?」
長身の男性がルシアと同じ高さになり、怪しくも近付き見つめる。
TV等でよく見る俳優などに見られる美しい顔立ちは、本性を知らぬ者ならその心を射抜かれ夢中にさせるものだっただろう。
しかしルシアは、目の前の男を敵としてしか見ていない。
「誰があなたなんかにこの力を渡すものですか!?」
強気に出て、唇が合わさりそうな程接近していた男性の顔面めがけて膝をついた状態から蹴りを浴びせて後ろに飛び、着地と共に直立の体制に戻す。
黒く長いフリルの多く付いたドレスから、弱々しい一撃をする。
しかし男性にはその膝蹴りが当たることはなく同じように後ろに飛び返していた。
「惜しかったねぇ…もう少し早ければ当たっていたかもしれない、けどハズレはハズレ」
男性はそう言うが実際には天と地程の差で早くなければ当たりはしない速さだった。
「君が私に傷をつけることは不可能だよ。たとえ君のそのチカラを用いたとしても、ね」
その言葉にルシアの中で何かがキレた。
「いいでしょう、私の力今ここでお見せしましょう!」
そういって左手を平にして前にだし、目を瞑ると何かを唱え始める。
「・・・・・・・・・・」
小さな言葉は男性には聞き取れない。
しかし、時が経つと共に周りの気候が変化する。
黒い雲が霊法町を中心に集まり、黄色い雷を纏う。
「君のチカラ、如何程のものか私に見せてもらうよ」
油断大敵なルシアを前に男は余裕の表情でその力が発揮されるのを待ち続ける。
「その言葉必ず後悔させる。我が力に答えよ!ヴォルテックストーム!!」
ルシアの言葉に答えるように集まっている雷雲から巨大な雷が放たれる。
それは男にめがけて光速で降り注ぎその身体に落ちる。
ルシアのオーラが加わった雷は自然に下ろされるものと異なり、その威力は通常の能力者であれば高圧電流に触れたも同然であっという間に感電死させてしまう。
バチバチと音を立て、雷が男に直撃した。
ピンポイントにめがけた一閃の光は、男の立っている地面だけを黒く焦がし雷雲を遠ざける。
彼女の能力、それは今までと全く違う力。
不特定少数の人間しか使えない『学』という力だった。
「うっ!」
しかし、プネウマには及ばないながらも膨大過ぎるオーラの消費によって、ルシア一時的に意識を失ってしまった。
同時にプネウマの男性は傷一つない状態で起き上がり、ルシアを再び見下す形になる。
「まあまあといったところか?しかし残念だったね。君の力は私には通用しないんだ例え、死を覚悟した一撃であってもね」
ようやく大人しくなったと、ルシアに近付こうとした時。
「待て!!」
千博と善之が現れるのだった。




