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二人二声之影Ⅱ外伝 scarlet mystery   作者: LAR
3章 地球政府代表の新任
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3-1 新たなる地球政府の新任

「それでは、今回地球政府の代表に選ばれた、ミハイル:ウィスキーンさん。新任のご挨拶をどうぞ!」

巨大なスクリーンに地球政府の代表に選ばれたという女性が映し出される。

「ええ、この度は皆様方の支持で地球政府の代表として選ばれたミハイルです」

マイクを手に取り、記者達に挨拶する。

「今回政府の代表に選ばれる事によって私が行いたいと思うことは、地球軍そしてコンプレクシティが射民国との対立的な関係を仲裁することです」

男勝りな口調、赤い短髪の姿は、女性には一見見えない姿。

チョコの様な黒と黄土色が入り交じったジャケットにズボン。

軍教官をイメージさせる姿には、マスコミ達も注目の的だった。

「現在地球圏は危険な状態です。コンプレクシティと射民国を相手にしながらも地球軍の勇士達が賢明な判断能力を持っていたために、なんとか辛勝という形で勝利を収めることができましたが我が軍の被害、そしてコンプレクシティの代表が大きなダメージとなり、今現在もコンプレクシティは活動休止状態、我が軍も数少ない人員を割いて諜報活動を行う程度です。しかし今この諜報員達が危険な状況にいます」

ミハイルの言葉に、記者達が静まり返る。

「現在地球には能力界という世界が現れつつあります。その世界は人間がいた時代、魔界という世界と似たような存在です。その住人達は地球を我がものにしようと目論み、今現在ごく僅かな数でありながら、戦力を投入し諜報員達を襲撃しています。このような現実はもう繰り返さないと、コンプレクシティの間に誓いを立てていますが降りかかる火の粉は私達で払わなければならない。今ここに再び地球軍を結成し彼等と戦わなければならない時です、私は一人でも多くの勇士を募ります!」

それからも、演説の様に新任の挨拶は流されていた。


紅の屋敷/千博の部屋

先の映像を見ていた千博。

今は初音と夏樹は海外旅行と称して任務に赴いている為不在。

黒葉美運もここ最近は、姿を現さない。

初音達がいる時は、ほぼ毎日のように部屋に上がり込んでいるというのに

「どうかなさいましたか、千博様?」

と、その横で紅茶を運んでくるのは善之だった。

初音と夏樹が不在の間は、こうして主と執事の様な日々を送っていた。

「いや、どうということはないんだが…」

高級ソファーにもたれ掛かる姿勢を戻すと、バッと立ち上がる。

「お前、この映像をどう見る?」

スクリーンに移されている地球政府代表を指差し、千博は善之の指示を仰ぐ。

「そうですね…過去今までにたくさんの代表交代がありましたが、今回は異例が重なっている気がしますね」

「と、いうと?」

「まず最初に、この世界に起こっている出来事を知っているような素振りを見せるあの態度、まるで僕達の存在も知っているかのような雰囲気です」

善之は指を一つ立て、千博に説明していく。

「もう一つは、能力界の住民を敵視している事、能力界の人達は全員が僕達の敵ではありません。能力界の愛護団体は少なくとも僕達や地球の能力者達の味方です」

人差し指と中指を立てて二つ目を意味させる。

「そして三つ目、彼は政府代表にしては何か裏が見えて仕方がないことです」

薬指も立てて三つ目を意味した。

その時千博が善之の言葉に止まった。

「裏が見える?」

「ええ、今までの地球政府代表というのは、軍事的介入をよしとしない傾向でしたが、今回はそれを覆すかのように、能力界をあからさまに敵視し、武力介入に迫ろうとまでしているみたいです」

千博がスクリーンの前に立っている間に、映像は反対派が乱入しているところにあった。


「納得できねぇ!アンタみたいな力で人を動かそうとする奴はいずれ厄介な禍を起こしかねない」

「よって我々は今現在より反対派として、アナタを始末させてもらう!」

報道の中で暴動が起ころうとしている真っ只中、アナウンサーは事の重大さをテレビの前に伝えようとしていた。

カメラは反対派の者達に向いているのに、アナウンサーからは何も伝えられてこない場面が写っていた。

「おい、今は会見中だぞ?静まれ!」

反対派がミハイルに接近していく中、警備員が目の前に仁王立ちになる。

「邪魔だ!」

バシッ

しかし、大勢のマスコミや記者達がいる中で覚醒能力は使えなく反対派の腕払いの一撃で吹き飛ばされる。

「さあ、代表殿、今すぐ代表を降りると宣言してくだされば我々は身を引きますが、もし抵抗するようでしたら…」

反対派の集団が一斉に武器を構え、能力を発動しようとしていた。

それをみたミハイルは、

「わかりました」

と、呆気なく辞退を宣言した…かに見えた。

「貴方達は罪も無い人々を兵器で傷つける。そんな貴方達に、私が裁きを下しましょう」

そう言った途端、ミハイルの全身から只ならぬオーラが満ちてくる。

そして、

「ぐああぁぁぁぁ!!」

反対派の者達が次々と、明度のない鼠色に変色していく。

同時に、その意識でさえも奪っていった。

しかしマスコミや警備員、記者達は何も起こらなかった。

「私の力は、罪有る者達にだけ差し向けられる。フリージングノーパス」

ミハイルはいつのまにか、右手の平を反対派の集団達に向けていた。

「この力は、悪しき心を宿すものを捉え、必要とあれば生命でさえも捉えてしまう力。警備員の方々に傷を付けたことに対して審議をしたいのですが…どうでしょうか?」

先程反対派を止めようとして仁王立ちした警備員に問いかける。

「いえ、確かに怒りは覚えましたが、殺すほどではないかと…」

もちろん警備員は、生命まで取る必要はないと言った。

「そうですか優しい方々です、ではこの者達を連行してください。今回の件は現行犯ですが判断は検察側に任せます、が…私個人としては死刑にしても良いかと思います」

固まっている反対派の集団一人一人に手錠をかけると、ミハイルはフリージングノーパスを解く、そして警備員たちが反対派の者達を次々と車に乗せ、連行していった。

「ええ、話が脱線してしまいましたが、私はできればこんなことをしたくはないのです。皆様方の理解がいただければ先程の様な事は致しません。能力界には私の力などよりも、もっと強力な能力者が無数にいます。いまこそ、その者達を死滅させるべきなのです」

ミハイルの言葉に、一同が歓声を上げる。

それはミハイルの力によって起こされたのか、それとも地球を守れるという期待によって起こっているものなのか…


紅の屋敷/千博の部屋

「フリージングノーパス…聞いたことがないな」

千博は顎に手を当てて考え込む。

「確かに初めて見る力です。それにあのオーラは…」

善之は、ミハイルが発したフリージングノーパスよりも別の所に釘付になっていた。

もちろんそれは千博もだった。

「間違い無い、黒葉美運と同じオーラ・スピリトュスだ!」

千博は映像に写っていたミハイルのオーラを見てそう直感した。

「そういえば最近は、神気をよく見ますね。あんなに神が地球にいていいのでしょうか?」

「さあな、神は必要な時にだけ来る存在、まさか地球に何かが…」

千博が言葉を言い終える前に、気配を感じた。

振り返るとそこには黒葉美運がいた。

「ごめんね、驚かせてしまって」

黒葉が面と向かって謝る。

「盗み聞きとは趣味が悪いな」

千博が再びソファーに腰を落とす。

「それに関しては返す言葉はないよ。ただ君達が面白そうな話をしているからね」

換気の為に開けておいた扉の脇で腕を組んでいた黒葉は千博の部屋に入ってくる。

「ミハイル:ウィスキーン、彼女は制御の神だねぇ。特殊な波動を発して、それを聞きとったものは動きを止められる」

「なに?」

黒葉のそんな言葉に千博が驚く

「あいつはそんな危険な力を使っていたのか?」

突然の驚声に黒葉は首をかしげる。

「ん?なんのことかな?」

「あのミハイルという方は、反対派の人達だけを止めていましたよ!?波動を聞き取った者の動きを止めるのでは、マスコミや警備員の人達にまで動きが止められてしまうのでは?」

千博と善之が必死に抗議する。

「へぇ~じゃあ進化したのかもね」

その二人の問いに黒葉はそう答えた。

「進化だと?」

「うん、能力は覚えたては使いにくいものだけど、慣れてくると次第にその能力の特徴や有効範囲、威力などがわかってくる。そして能力を極めると、その能力は進化という形でより使いやすくなるんだ」

黒葉の説明に二人は納得していた。

「といっても、かなり高位な部類までならないと進化は愚か、慣れる事も難しいらしいけどね」

そういって黒葉は、右腕に隠してある本来の姿の一部、触手を出して見せた。

この口論の中、テレビの中では地球政府代表のミハイル:ウィスキーンが各国にも挨拶に行く事を映像の中で伝えたのだった。

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