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二人二声之影Ⅱ外伝 scarlet mystery   作者: LAR
2章 アフリカ軍との共同戦線
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2-11 エピローグ 不を導く使者

「貴様は誰だ?」

16は赤城を見る。

その姿は明らかに先程までのぼへぇ~っとした表情が抜け落ちていた。

というより、気を引き締めた…というのだろうか?

「私はアカギ:ラブレンス。恋の神、恋愛成就、永遠なる恋心を運命付ける人生の担い手」

アカギと名乗る神からは、神気・スピリトュスが放たれていた。

更には、そのスピリトュスが具現化し、彼女の服装と髪色を変化させる。

身の丈を僅かに超える巨大なマント、動きやすさを追求し元々細い体格にぴったりと合うサイズに具喧嘩するレオタード。

髪は明瞭な赤色から、極めて目立つ明るい桃色へと変わり、神気によって発光している。

「ようやくやる気になったかい…神様さんよぉ?」

16は闘争心を現わにした。

金聖輝の相手は、ただ避けるばかりでつまらなかったが、今のアカギであれば少しは楽しめそうだと直感していたからだ。

「さっきまでの子は私の仮の姿、言わば幻想です。貴女が戦いをやめる気配がないので、私が出てきた次第です」

「冗談じゃないね!どうして、不法侵入してきた奴らに『大人しく帰れ』の警告だけ流す?嘗て人間が居た時代にだって不法侵入すれば、即役人に通報してたじゃないか!?」

16は勝手な持論を作り上げる。

時代設定が随分と古いのは何とも言えないが、確かに16の言っている事は正しかった。

だが、そもそもこの廃工場が家だというのもチャンチャラおかしい。

おまけに搬送用ベルトコンベアは現在も稼働中だ。

仮に家だとしても16の所有物ではないだろう。

「まあ、帰れって言って帰ったところで、アンタを見てしまった以上生かしての帰宅は許しゃしないけどなぁ…!」

16が右腕のエナジー・サージェスを強く握りしめる。

そして、高く飛び上がり大きく振り上げる。

「闘神を恨むあたい達にとって、全ての神は恨みの対象、それはアンタらは勿論、姉から妹までみんな一緒!!」

アカギに向かって、飛びかかってくる。

「死にな!!」

16がその腕を振りおろし、直撃する瞬間!

エナジー・サージェスの先端を中心に異音が放たれた。

キイィィィィーン!

耳を劈く様な、金属がとてつもない速さで切られていくような音を立てる。

16は当然だが金聖輝はもとよりアカギまで驚いていた。

「なに、あれ?」

金聖輝はアカギと16の様子をしっかりと見ていた。

エナジー・サージェスが、アカギの頭部から僅かに離れたところで、止まっている。

更には何もないハズなのに、無数の火花がそこから散っている。

16はさも、それを予期していたかの様に表情を崩さなかったが、アカギは驚いていた。

「能力の発動に失敗した。このままだとまずい」

だが、すぐに顔色を元に戻したかと思うと、16から距離をとる。

滑るように移動する彼女からは残像が見えた。

「速い!!」

16でさえも、その速さに驚く。

しかし、先程の能力が失敗したというのが気がかりだった。

一体アカギはどのような能力を繰り出そうとしていたのか…

そして先程のエナジー・サージェスが何かに当たっていた様な感覚は一体なんだったのだろうか?

数秒間の間にこの考えを述べる。

結果としては、近年世界各地で起こっているという怪奇現象、即ち何者かの干渉によって邪魔が入ったということなのだろう。

と、なればこの場に居合わせていては危険だ。

「お前達も、さっさと逃げた方がいい」

16はアカギを含め、金聖輝に向かってそんな言葉を飛ばす。

この廃工場を目標にして落ちてくる者がいる!?

「時間がない、あたいは先に行かせてもらうよ!」

そういって、何時建てられたのかもわからない場所に積もった砂を払うように飛び上がりながら、後退していく。

この後退の仕方は初音と夏樹が戦闘していた時と同じものだった。

やがては、薄暗い暗闇の淵の奥へと消えて行き、その姿が見えなくなる。

16はここまで潔く身を引くというのは余程の事態だという事を示しているのだろう。

「一体どういうことなのでしょうね、あの者の言葉が正しければ…!」

呟く金聖輝に、突如のこの廃工場に向かって降ってくるもののオーラを感じ取った。

「まずい、伏せて!!」

呆然と立つアカギを押し倒し、二人は地面に突っ伏した。

同時に強固に覆われた廃工場の天井を突き破り、ソレは地面に叩きつけるように落ちる。

着地と同時に生まれていた衝撃が地に伝わり、巨大な波動を放つ。

砂漠ほどではないものの、積もっている砂が波となり、廃工場全体に着地したものを中心にして吹き飛んでいく。

勢いの良さと、その者のオーラの強さによって、廃工場の内部は砂まみれになる。

常時稼働していた搬送用ベルトコンベアも砂にまみれガリガリと異音を立ててエマージェンシーの警告音を出す。

その音に、砂にまみれた金聖輝とアカギ、そして降ってきた人が鉢合わせる。

「え?」

アカギは気を失っていたが金聖輝がその者を見て驚く。

彼女か…彼でも言い難い。

ボロ切れの服とは言えないほどに破れた布を纏い、オーラによって生み出された浮力によって、腰までありそうな長い髪がひらひらと靡く。

三角座りで殻に閉じこもるような姿勢のまま、彼女か、彼かは、顔を上げる。

今まで眠っていたようで、同時にその瞳も開いていた。

隠すところは隠されているものの、ボロ切れの服から露出した皮膚は輝くように白いのに、その素顔はとても男性っぽく大きい、なのに吸い込まれそうな黒く綺麗な瞳は女性の様に大きい。

人間が生きていた時代に、男性なのか女性なのか分からない人種もいたと言うが、正に目の前の白黒の子はそれを思わせる程に性別の特定が難しいものだった。

金聖輝はアカギに付いている砂を払って立ち上がり、その子に近づく。

「貴方は…誰?」

そんな言葉とは裏腹に手を差し伸べていた。

言葉と手を差し伸べられた金聖輝を、その子は見つめた。

差し伸べた手を金聖輝は、なぜ差し伸べているのがわからずに、白黒の子を見ていた。

(頭の中では喋るだけなのに、身体がこの子に手を差し伸べさせている!?)

金聖輝は戸惑いを覚えた。

操られているような感覚でさえ、心地よく思い今もこうして、白黒の子が金聖輝のその手を取るまで、引っ込ませることができず、ずっと差し伸べていたのだから。

やがて白黒の子がその手をつかみ、繋ぎあった手同士で起き上がらせる。

三角座りをしていた時から分かっていたが、その身体はとても小さくて柔らかく、繋ぎあった手からその感触が伝わる。

今握っている手でさえ、もう少し強く握れば骨さえも砕けてしまいそうな程。

金聖輝が男なら、そんな感情を抱いただけで世間から痛い目で見られかねないことだろう。

保護されるには十分な子、そんな特徴を持つのだった。


カラハリ砂漠中心部/作戦拠点本部

その後、赤城が意識を取り戻し二人は白黒の子を連れて廃工場をあとにした。

作戦拠点に戻る途中、砂にまみれて気を失っている夏樹を発見し、拠点まで運ぶ。

夏樹を探していた初音とも合流でき、4人だけが生還できたのだった。

兵隊を失ってしまったことは大きいが、今回の作戦はマンティス・シャフラワースの退治であったため、当初とは随分と目的が違う方向に回ってしまったものの、作戦は完了という形で終わった。

日本の霊法町に連絡をとる夏樹。


ところが屋敷にもセイレーン教にも、連絡を入れても音信不通なのだった…。

同時に胸騒ぎがする、と宣告した初音の言葉を受けて、夏樹と初音、そして赤城は大急ぎで日本に帰ることになった。

金聖輝は星に戻ることになり、そのまま砂漠に残ることになる。

こうして、南アフリカ共和国を舞台としたカラハリ砂漠の作戦は終了したのだった。


天界

一方その頃、華楼美母はある秘蔵図書館にある古文書を開いていた。

嘗て、影融が犯したという大罪。

これを知りうるものは実を言えば一人もいない。

というよりも、影融という人物が、あの羅刹封門線の檻にいるのかもわからなかった。

羅刹封門線の檻は、檻に入れた者のオーラを吸う事によって、その頑丈度を幾重も増し、吸収するオーラの量をも、強力にしていく代物だった。

それを打ち破り、そして逃げ出している。

ところが警備が厳重であり、監視用の使徒を2体、1時間毎に交代させる形にて厳重に見守っている中を簡単に通り抜けていくのだろうか?

もしかすると、影融というのは人の姿をしているのではないのかもしれない。

そこで手掛かりとなるものを探すため、図書館を訪れ念入りに調べていたのだった。

ところが大罪を起こしたという記録は愚か、影融という名前ですら、まるで載っていなかった。

仕方なく、秘蔵書が収められているという図書館で再び調べてみるものの、結果は同じだった。

やはり影融というのは人では無いのだろうか?

そもそも歴史の出来事を事細かに綴ってきた書庫にすら、名前が記載すらされていなかったのだ。

ますます謎は深まり、万策尽きる他なかった。

果たして影融とはなんなのか…

華楼美母は更なる謎の解明を求めるべく、巨大な翼の中に綺麗に生える羽を一気に羽ばたき、地上に降りていくのだった。

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