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二人二声之影Ⅱ外伝 scarlet mystery   作者: LAR
2章 アフリカ軍との共同戦線
25/58

2-10 16再び…!

「…!」

ところが斌はその腕を振り下ろさなかった。

いや、振り下ろすことができなかった。

「うっ!うおっ!うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!!」

突然絶叫が響き渡り気になって…否、夏樹は確信したように顔を上げた。

見れば斌は目元を押さえもがき苦しんでいる。

「うあああぁぁぁぁぁーーーっ!!目が…目がイテェーーーーーーー!!!!」

斌は目が痛むことに、必死になっていた。

「やはり、それは乗り移るタイプの痛体性生物、悪性オーラだったか…」

夏樹の右足として機能していた部分はまだ痛むが、切断されたことによって、肥大化する痛みはなくなっていた。

切断された足には斌の気、痛みを徐々に増していく悪性のプシュケーが感染していたのだった。

そこからでた血を斌の目に振りかけることによって、斌を同じ状態にさせた上に、足を切断されたことによって、その痛みはなくなっていた。

みっともない体制だが、完全なる勝利を得たようなものだった。

「眼がっ!眼があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

更に痛みが増していくのだろう、最早力尽きるのは時間の問題と夏樹は見ていた。

しかし、長くかかると予想していた斌は、夏樹がそう思ってから数十秒ほどで力を失ったように崩れ落ちた。

匍匐体制になっていてもわかる、間違いなく息を引き取っていた。

「くぅ!思いの外、被害が大きくなってしまったな…果たして、残りのオーラで基地まで帰れるか?」

夏樹は匍匐前進をしてみる。

が、地面がサラサラの砂という事もあってか、思っている以上に前に進むことは難しかった。

「ああ…やばい、これじゃあ俺も力尽きるのは時間の問題だな」

時折吹く温風の微風の揺籃と、切れた右足から流れる血が夏樹を永遠の眠りへと誘っていく。

そのまま、灼けるように照らし続ける太陽の下で夏樹は意識を失うのだった。


カラハリ砂漠/廃工場前/赤城視点

そのころ赤城と金聖輝は、カラハリ砂漠にて発見されたという廃工場を目前としていた。

「ここは…隊が発見したという廃工場で間違いなさそうですね~」

相変わらずのおっとりお姉さんを演じ続ける赤城。

しかし目は愚か、表情は全くおっとりした様子ではなかった。

余程ここがヤバイ場所なのかを顔で表現していた。

もちろん金聖輝もそれは分かっている。

だが、屠殺者や金聖輝自身と戦っている時でさえも常に見せ続けていた余裕を振舞う笑顔。

今ではその余裕の態度がまるで見て取れない。

それもそのはず、この廃工場からは強大なオーラを感じ取れたからだ。

「何かとてつもなく大きなオーラがこの工場中を漂っています…このオーラは初音さんのと同じ?」

赤城はオーラを手のひらに翳す様にして目を凝らして識別する。

赤城の言うとおりこの工場に満ちているオーラは、初音のオーラ・プネウマで間違いなかった。

すなわち、この工場には初音と同等あるいはそれ以上の能力者がいることになる。

赤城の表情が険しくなるのも無理もないことだ。

だが、初音と夏樹に後退するように言われた以上、基地へはここを通ることで遠回りになるが確実に基地に戻れるルートも確保できるはずだ。

心の中でしょうがないな…と思いつつ、赤城は工場に足を踏み入れる。

金聖輝はそれに付いて行く形で二人は調査を開始した。

廃棄されているものの工場内はまだ使える設備が多く残っており、幾つかに至っては現在では取り扱っていない機械類も多く残っていた。

「従業員がいればまだ使えるような設備がたくさん残ってる…一体ここにはどうして人がいないんですの?」

金聖輝が事も無げに呟く。

「同感です~。ここは元々は能力者用の武器類を開発していたと聞かされていますけど、どう見てもこれは…」

赤城が機械に手を触れようとした時、殺気を感じた。

ピュン!

「きゃあ!」

その殺気を放つモノが赤城の手に射撃する。

「な、なんですの?」

間一髪!腕を引っ込めた為に怪我はしなかった。

「困るな…勝手に、人の『住居』に足を踏み入れるなんて」

突如、工場内のどこからか大きな声が聞こえてくる。

廃棄されているにもかかわらず工場内は頑丈な壁で密室状態であるため、その声は反響する。

「誰!?」

金聖輝がケヴィネスを集中させる。

薄暗い工場内では、素の状態ではとても肉眼では捉えれない。

ケヴィネスを通して、眼を凝らすと、2mはありそうな巨体が迫っていた。

(サイボーグ!?どうしてこんな環境で動いているの?)

金聖輝は捉えた者のその姿に、訝しげな表情をする。

「サイボーグであるあたいがここにいるのがそんなに珍しいかい?」

素の状態では赤城でも捉えられないそれは、金聖輝の心を読む。

「心を読まれた!?なんてやつなの?」

金聖輝がその姿の物がとても危険だと推測する。

「いまさら逃げようとしても無駄なことだ、もうここから出ることは許されない。お前達はあたいの領域に足を踏み入れてしまった…能力者なら、この工場中に張っているプネウマが分かるはずだろ?」

少しずつその者は接近してくる。

ようやくその姿が僅かに見えるようになった時、右腕に怪しくも美しく水色に輝く光の剣を携えたものが現れた。

「生きて帰ることは許されない。あたいの力が通らなくなるまでいたぶってやるから覚悟しな!」

完全に姿が見えるようになると、その者は一気に赤城と金聖輝のいる場所まで高速で駆けて距離を詰め、その剣を振るう。

「速い!!」

赤城の背中を突き飛ばし、剣の刃先をワザと掠めるように避けてみせる。

それだけで目の前の者…16は金聖輝をある芸者の一人として見る目を変えた。

「ほー、剣舞回避(ケンブカイヒ)の芸者か、珍しい奴に会えたものだな。だが…!!」

16は、躊躇う事なく、光剣を更に加速させて五月雨突きを繰り出す。

シュシュシュシュシュ!!

16の素早い付きが無数に飛び交う。

しかし、それを金聖輝は見事なまでに避けてみせる。

「すごい!攻撃を全部掠める事無くかわしてる!?」

その二人の動きに赤城は両手の平をあわせて傍観していた。

そんな赤城の事は全く気にかけることもなく、16は一度後ろに飛び体制を立て直す。

「なかなかやるじゃないか!異星人の実力も侮れないものさね」

光剣を一度払い、再び構える。

赤城は何かを感じ取った。

とても小さいが、確かに殺気が…?

違和感を感じた赤城に迫ってきたのは小型の突起物。

それが宙を華麗に飛び、16の前に集まった。

数はざっと18機といったところか?

「今度はこいつらと相手をしてもらおうか?」

そう言った途端、18機の突起物から16の持つ光剣よりも小さな光の刃が現れる。

「ローグビット!!果たしてお前に全てかわしきれるかな?」

恐ろしい数の近接誘導式の物体が金聖輝に襲い掛かる。

まるで金聖輝とビットが磁石の様に、金聖輝が離れても執拗に金聖輝に向かって、その刃を向けながら接近してくる。

「ちぃ!目障りな攻撃ですわね」

油断すれば、その刃は突き刺さり残りのビットも全弾命中することになる。

一発たりとも気を抜けない攻撃を、金聖輝はバックステップ、宙返り、バック転蹴り返し等、多彩に動き回って回避し続ける。

当然ながらビットには16のプネウマが宿っているため、それが尽きるまでビットは金聖輝を追い回し続けるのだろう。

しかし16はラー家の血族、並の量のプネウマでないのは一目瞭然だ。

金聖輝が必死にビットを掻い潜る様を腕を組んで眺めている。

バキンッ!

その場を壊す様に、ビットを破壊するものがいた。

「込み上げる微熱の想い(インスタントバレット)!」

赤城が熱光弾を放ち、ビットを撃ち落としていた。

「貴様、神であろうとあたいの邪魔をするなら容赦はしないよ!」

それまで、赤城には敵意を示さなかった16が右腕に光剣・エナジー・サージェスを携える。

「神といえど、その程度のスピリトュスでは、私達に傷を付けることすら不可能だ!」

正面から一気に突貫してくる。

そのスピードは赤城からすれば、勿論遅く感じた。

ひょいっとかわし、侮っていた16を見返す。

いつの間にか、赤城には先程までの余裕綽々の笑顔が全く見れなくなっていたのだった。

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