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二人二声之影Ⅱ外伝 scarlet mystery   作者: LAR
2章 アフリカ軍との共同戦線
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2-2 エンカウント

夏樹と初音は、霊法の空港から、日本から南南西の位置、南アフリカ共和国へと向かった。

出発の前に黒葉が言っていたことを思い出す。


紅の屋敷/玄関

「現地の空港に着いたら受付の人に報告してあげて、日本語がわかる知り合いを付けておいたから、その人に同伴して砂漠の拠点にいる『スオウアカギ』って人を尋ねるといいよ」

黒葉は手短に、出発後の事を話した。

「そもそも、俺達は南アフリカで何をすればいいんですか?」

そういえばといった様子で夏樹は問う。

その夏樹の問いに黒葉は複雑な表情をする。

「海外戦線の一団がコンプレクシティと連携を組んで戦闘訓練をしている最中、突然未知の覚醒生物に襲われたとの情報が来た。その戦隊はコンプレクシティと共同戦線を張って戦ったのだけど圧倒的な強さに壊滅してしまった。そこでコンプレクシティの方から補充人員を寄こすから現地での戦闘に参加できる人員をこちらからも送って欲しいという事なんだ」

「それで俺とお嬢様に…擦り付けたんですね?」

夏樹が訝しげな表情をする。

「いやぁ、僕も多忙だし、どうしようかな~?と思っていたところを偶然にも夏樹君がいたものだからさ~…」

黒葉は両手を前に出し、笑ってごまかす。

「ともかく、砂漠という過酷な環境下での戦闘もいい鍛錬になると思うんだ。向こうでは銃の扱いも取り繕ってくれるしね」

黒葉の言葉に夏樹は少し驚く。

「え、まさか銃って、ライフルとかハンドガンとかの?」

「もちろんさ、といっても実銃なんかじゃあ覚醒生物は愚か、覚醒能力者に傷を付けることも適わないだろうけどね。だから現地では覚醒能力者や覚醒生物に対抗できるようなオーラウェポンを開発しているそうだよ。もし使わせて貰えたら君達は、最先端技術を真っ先に使えたことになるよ」

黒葉は銃を持っているような姿勢をしてみせた。

といっても、その辺のゲーセンから学んだのだろうか?

持ち方が幼稚なさまだった。

「繰り返すけど、現地に着いたら『スオウアカギ』って人を尋ねるんだよ」

黒葉は終始その人物の名を言っていた気がする。

余程その人がいなければ、


南アフリカ共和国/砂漠前空港

カラハリ砂漠は、南部アフリカにおいて50万k㎡に渡って広がる砂漠で標高850~1000mの浅い盆地状の地形である。

ボツワナの国土の70%を占めるほか、ナミビア、南アフリカ共和国にかかり、ジンバブエの一部はカラハリ砂漠に連なる半乾燥地帯である。

ボツワナ北部と南アフリカ共和国北西部を除き、標高は1000mを超え、ナミビアの南岸はカラハリ砂漠の一部とも考えられる面積14万k㎡のナミブ砂漠に覆われている。

周囲を含めた250万k㎡の半乾燥地帯サバナを広くカラハリ砂漠と捉える資料もあり、寒流であるベンゲラ海流の影響を受けたガボンとコンゴ共和国の沿岸部のほか、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、アンゴラ、ザンビアの一部を含めている。

なお、カラハリ砂漠の面積を57万k㎡と記述しており、ケッペンの気候区分に従うと、南西部は砂漠気候となるが、それ以外の部分はステップ気候に分類される。

この砂漠の砂は暗赤褐色で、表層水は存在せず、雨が降ると窪地につながる水無川とも呼ばれる涸れ谷が氾濫する。

ボツワナ中央州北西部に位置する塩で覆われた広大なマカディカディ・パンと、ナミビアのクネネ州からオシコト州ツメブにまたがるエトシャ塩湖にも水がたまる。

真の砂漠とは呼べず、不規則ではあるものの年間250ミリ以上の降水量を記録しており、植物に覆われている。

ただし、南西部は年間降水量が175ミリを下回るため、砂漠らしい眺めで夏季の気温は20度から40度である。

石炭、銅、ニッケルの埋蔵量が多く、北東部には世界最大級のダイヤモンド鉱山があるのだという。

絶え間無く吹き出る汗を拭いながら夏樹達は砂漠を横断していた。

黒葉の言うとおり、現地の人は確かにいた。

日本語もちゃんとわかっていたし、会話は難しくなかったのだが…

その人は、拠点のある方角と地図を夏樹に渡すと、さっさと帰っていってしまった。

それから夏樹と初音は、一面砂だらけの大地を歩んでいた。

夏樹は既に喉カラカラの状態だが、初音は辛抱強く耐えていた。

流石は紅蓮の炎の力を宿すだけに暑さに耐性を持っているだけのことはある。

数十mほど進んだところで、オアシスを見つけることが出来たため、休息を取ることにした。

この暑さの中で一体、どのような作戦が待ち受けているのだろうか?

そんなことを考える夏樹と、オアシスの水を水筒に含める初音。

「お嬢様、一体今度はどんな敵がいるのでしょうか?」

事も無げに聞いてみる。

「そうね、黒葉は覚醒生物だと言っていたし、何か一般的戦法では立ち向かえないような生物かもしれないわね」

通常覚醒生物というのは、人間も含めた能力者が強い欲望によって変異してしまう一種の暴走で、一度暴走してしまった生物は自らの欲求を拒否することはできず、一度全てを襲う厄介な存在となり果てる。

ラー家はこうした生物の存在を誕生の恐れがある時期を正確に捉えた機械技術よりも早くから知っており、対抗する手段を持ち得ている。

そして現在はその対処法を地球軍の兵士やコンプレクシティにも知られ、対覚醒生物戦は地球軍の勝利を収めるケースが多くなっていった。

ところが戦法が通じない種も時折現れることがあるようで、その種に至っては大型なものであったり強大なオーラを放っていたりする物が殆どである為、今回もそんなものであるのだろうと初音は予想していた。

「大型の種になるとラー家でも、太刀打ちする事が難しい生物も数多くいるわ。そもそも覚醒生物は変異した時点でその殆どが同一の種であるという事は滅多に無いの。だから今回の覚醒生物も私は初めて見るものだと思うわ」

「ほほぉ~、なら一度拝んでみる価値はありそうだな!」

初音の言葉が終わると夏樹のいる方向とは思えない方角から、聞覚えのない声が聞こえてくる。

すぐさま、声のする方に振り向き、それを見た初音は驚いた。

「誰だ!?」

夏樹も同じように振り向いて叫ぶが、初音の方からは反応がない。

見ると初音はまるでなぜここにいるのか?というような驚きで、目の前の人物…と言えるかわからない人を見ていた。

「16(シックスティーン)!?」

初音はその人物を知っていたようだった。

「久しぶりだな?妹よ」

16と呼ばれた者も初音を知っているようだった。

「ええと、お前は23番目だったな?」

問いてくる16という人物とは裏腹に、初音は構えていた。

それも全力で、

「う、うわ!」

強大なプネウマが満ちるが故に夏樹はその衝撃に吹き飛んだ。

地面が砂漠ということもあって、プネウマの波動と振動で砂嵐が起こっていた。

「おいおい、もうやる気か!?喧嘩っぱやい奴だな」

16も構える。

砂地に埋もれ、顔を上げた夏樹が見たものは、驚くものだった。

「え?」

16の張る気、それもプネウマなのだった。

それに驚いていると、初音が夏樹を見ずに声をかけてくる。

「夏樹、あなたは何もしないほうがいいわ、16。あいつは私と同じ、ラー家だから!」

「え?そうなのですか?」

めずらしく、夏樹は驚きを見せた。

今までの驚き方とは違い、この驚きは本当の驚きを示したものだった。

「こんなところでめぐり合うとはな…あたい達は、やはり殺し合う運命にあるんじゃねえか?」

16という人物の喋り方は、まるで男女を共同させたような口調だった。

その喋り方に夏樹は違和感を感じる。

「あなたはいつになったら死ぬの?一度は死んでおきながら、蘇った…もう十分なんじゃないの?」

「ハッ!あんな程度でこの身体を焼かれてたまるかよ!?あたいは生き抜いてみせる。お前を含むラー家全員を殺してな!」

言葉の終わりと共に16が、駆けてくる。

初音よりも速い!

「7つ歳下のお前にあたいが捉えられるかい!?」

すぐさま間合いを詰め、左腕の拳を振り上げる。

咄嗟に見切った初音はその拳を押さえる。

しかし、それが16にとっての狙いだった。

「かかったな!」

そう言うと、16は無防備になっている初音の腹部に右拳を入れる。

「くらえ!!」

避けることも叶わず直撃を喰らう

「うっ、きゃあっ!!」

衝撃とプネウマの加わった一撃に大きく吹き飛んでいく。

「すぐにおわらせてやる…!」

そういうと、16の右腕から気光の剣が現れる。

「エナジー・サージェス!」

照り付ける太陽の光と、妬けた砂漠の中に幻光する16の剣。

初音に絶体絶命の危機が訪れた。

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