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かみさまにゅうもん!!  作者: 小池
中級編 「守り神」
3/10

箔がついた吾輩

 吾輩はタンスである。ただのタンスではないぞ。歌って踊れる“あいどる”ならぬ、収納も守り神もできちゃう、言わばタンスを超えたタンスなのである。


 吾輩が張り切って悪い気を祓っていたら、家がどんどん繁栄していき、世間様では吾輩のことを福をよぶタンスと噂しているらしい。む? おぬし、吾輩の言葉を疑っておるな。失礼な奴である。吾輩は懐が大きいので、小さなことは気にも留めんが……本当なんだぞ。嘘じゃないんだぞ。よく吾輩を見物に来る客人たちは、吾輩の姿に見とれて、手まで合わせるようになった。


 吾輩、いくらタンス業もかみさま業もこなせるとはいえ、最近働き過ぎな気がするのである。たまにはタンスだって休みたい。しかし、吾輩の中に収められている着物たちを全部取り出して、裸一貫でうたた寝するわけにもいくまいて。タンスは年中無休な、大変なお仕事なのだから。仕方がないので、かみさま業のほうを休むことにしたのだ。


 ハレの日ならば、普段悪い気をうにょうにょと飛ばしてくる何某かも、浮かれているのだろう。あんまり吾輩の出番はない。ならば、これを機に正月の三が日は実家に帰ることにしよう。せっかく自由に意識を飛ばせるようになったのだから、吾輩を生んでくれた母なる桐の木を偲ぶことにする。


 などと、うきうき気分で正月が来るのを待ち、張り切って仕事をして、来る日も来る日も指折り数えていたのだが、吾輩、気が付いた。正月は、あと季節を二つ過ぎないと来ない。しょぼんとする。








 そんなとき、吾輩の金具部分が随分錆びているので、交換しようという話になった。吾輩的には、長年苦楽を共にしてきた体の一部であるので、ぴかぴかに磨いてくれるだけでよかったのだが、吾輩は残念ながら家人に意志を伝えることはできない。


 わが身の一部が剥がされて、あいたたた、な吾輩。職人どのが気合を入れてくれたのか、なんと新しい金具は金箔張りであったのだ! だいぶ奮発したらしいな、吾輩、そこまで家人に愛されていたとは知らなんだ。照れるではないか。


 吾輩改め“にゅー吾輩”になって、新装開店、事業再開したのである。だが、最近気になっていることがあった。家にはびこる悪い気が、心なしか増えているような気がするのだ。どうしたものか。それだけ多くの人に恨みを買うようなことをしておったのか、家業が繁盛するのを妬んでのことか。人の事情など、吾輩にはさっぱり理解できんのである。


 ときたま、家の主人を“先生”と呼ぶのを聞いたことがあったが、どのような職に就いているのやら。吾輩は今やタンス界に名を残す、ちょう“えりーと”であるが、家人たちも吾輩のように偉業を成しているのだろうか。そうだったら、吾輩は鼻が高いというものである。吾輩、鼻ないけど。


 好事魔多し、とはよく言ったものだ。いくら“えりーとタンス”の吾輩であっても、未来を予期することは不可能である。頑張ればできるやもしれないが。

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